携帯戦記カプセルギア　外伝『おじさん達のカプセルギア！』｜リアクション

携帯戦記カプセルギア　外伝『おじさん達のカプセルギア！』

【戦車とメカドッグ】

　さて、またまたところは戻って、善場模型店前。
　その日、星山真遠さんは、お客さんに仕事上の書類を届けた帰り道に、善場模型店の前を通りがかりました。
「へぇ……これが最近流行りのカプセルギア、ねえ」
　店先で、老若男女を問わない幅広い年齢層のお客さんがギアを戦わせる姿に、真遠さんも思わず立ち止まってその動きに見入ります。
　カプセルギアの存在は、真遠さんもおぼろげながら知っていました。
　というのも、彼は本業の司法書士業務の傍ら、ＰＢＷのマスターも務めており、その仕事柄、カプギアについても知識としては知っていたのです。
「よければ、一回遊んでみませんか？」
　店長にそう言われ、
（……まあ１０分くらいなら寄り道もありかな……）
　と、真遠さんはガチャガチャを何度かまわして、適当にパーツを組み合わせてみます。初っ端から何回もまわせるのは大人の特権。適当に、と言いつつ、それなりに自分の好みを反映させて出来上がったのは、戦車型のカプセルギア――Kugelblitz。
（これで俺が美少女なら言う事ないんだがな……）
　と、いかにもＰＢＷのマスターらしいことを考えつつ、真遠さんはせっかく作ったギアで戦ってくれそうな人を探します。

　そこに、ちょうどよくお店の前を通りがかったのが、澪乃湊弥さんでした。
「へえ、機器無しでこんな派手に戦うのか？」
　湊弥さんは、様々な派手なエフェクトを発生させながら、さながらロボットアニメの主人公のように戦う子供達の様子に感心したように見入ってしまいます。
（……ゲーセンのはやったことあるけど、こっちもいいなぁ）
　湊弥さんは大学院一年生。ゲーセンで遊ぶにはごく自然な年齢でしたが、カプセルトイに興じるにはちょっと抵抗があってもおかしくない年齢。
　ですが、
「よければ、一回遊んでみませんか？」
　店長にそう言われ、
「では、ちょっとだけ」
　と、湊弥さんは躊躇なく財布を取り出してガチャをまわしました。
「よっと。お、犬のロボ。メカメカしくて格好いい」
　出できたのはメカメカしい犬のカプセルギア。それはそれで格好いいのですが、
「いやでも、俺は二足の方がいいな……1回100円だもんなあ」
　どうせならもっとこだわろうと湊弥さんはさらに数回ガチャをまわします。
　そして組み上がったのが、ブラックドッグ。
「……うん、なんか犬っぽくないけどまあいいか」
　ひとまず納得ができたところに、
「君、よかったら俺と一勝負しないか？」
　と真遠さんが声をかけてきました。
「ええ、もちろんいいですよ」
　せっかく作ったのですから、湊弥さんもバトルをさせたいと思っていたところでした。
　かくして、Kugelblitzとブラックドッグのガチンコバトルが始まります。
　湊弥さんは、ゲーセンの筐体は経験済みですが、スマホによる操作は初めてです。
（おお、わかりやすいユーザーインターフェイスにド派手なエフェクト！）
　眼鏡の奥の瞳を少年のように輝かせて、湊弥さんはもっと色々なエフェクトが見たいと泥沼に嵌っていく自分を感じます。
　ブラックドッグは火力を抑え目の支援機向き。
　脚部パーツで音もなく地面を滑りつつ、電磁力を帯びたアームで格闘戦を仕掛けます。
「……む、やるな。だが、俺のKugelblitzは戦車だ。堅さが取り柄だ、まだいける！」
　真遠さんもやられっぱなしではありません。自分なりに組み立てた戦術で、速度を犠牲にして上げた火力で狙いを研ぎ澄ませた８８mmキャノンを発射！
「うわ……やられた！」
　その一撃は、見事にブラックドッグにヒットし、一撃で戦闘不能に追いやりました。
「……負けました。お上手ですね」
「いや、機体の相性と時の運だよ」
　湊弥さんは笑って手を差し出し、真遠さんも笑顔で応じて、それからしばらくカプセルギア談義に花を咲かせます。
「次は君とチームを組んで、ブラックドッグの支援を受けて戦いたいな」
「面白そうですね。ブラックドッグは支援機ですし、役に立てると思いますよ」
　二人ともなかなかに素質があるのか、次なる戦いに向けての話題はしばらくの間尽きることはありませんでした。

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