悠久のアクアマリン｜リアクション

悠久のアクアマリン

「いやぁ〜、カワイコちゃんと旅行なんておじさん嬉しいなぁ〜。
メリィちゃんにリリエルちゃん、他にも美男も美女も勢揃いときた。
こりゃあ腕が鳴るなぁ〜。ひっく」
　機嫌良さそうに一同の顔を覗き込んで回っているのは、
外国人旅行客に扮したゲース・アイルンアルムだ。

回らない呂律と覚束ない足取り、極めつけはつんと漂うアルコールの匂い。
間違いない、酔っている。
それに加えて女の子たちを品定めするように見つめる目は、まさに下衆の極みともいえよう。
「ゲースさん大丈夫！？　べろんべろんだねえ……？」
　そう言って、メリィ・ランページがきろきろと光る黄色の目で
心配そうにゲースを見上げた。

メリィの言葉にも、らいじょぶらいじょぶと笑って取り合わないゲース。
その横で、リリエル・エーテライトと白真白は洞窟の奥に眠る
悠久のアクアマリンに思いを馳せていた。
「悠久のアクアマリンかあ……気になりますね」

「私も楽しみ！　どんなのかなぁ。
持てないくらい大きいとか、アクセサリーにできそうなくらいとか、
寝かせるとマナが、とか……おっと違った」

　残念ながらここは沼ではないので青いマナは発生しないが、
代わりにアクアマリンの話題に惹かれて骨削瓢が二人の間に顔を出した。
「洞窟ならあっしに任せなぁ。御宝探しなんて楽勝さぁ」

　自信たっぷりな瓢の背に、
あたりの足場をチェックしながら歩いていた新田樹が言葉をかける。
「私もアクアマリンはまあ気にはなるけど、
それよりは単純に洞窟探検を楽しみたいかな」　

　洞窟得意なら案内してよね、という樹の言葉に、
瓢はまたにたりと笑みを返した。
「シュー君、気を付けてね！　何かあったら私が守ってあげますから」

「……まて、俺は守られる側なのか？」

　椿美咲紀と八神修も、手にしたライトで
辺りを油断なく照らしながら言葉を交わす。
一方、和気藹々とした一同の様子を不安そうに見ている少女がいた。
椎井莉鳥だ。
「このメンツ……大丈夫なのかしら。
怪我や事故がないと良いんだけど」

　地図がないとはいえ、明かりのない夜に未知の洞窟に向かうにしては、
あまりに緊張感がなさすぎるのではないかと、莉鳥は一抹の不安を覚える。
そんな莉鳥に、御剣刀が声をかけた。
「そんなにキリキリしなくてもいいんじゃないか。
せっかくの冒険だし、気を付けつつ楽しもう」
　危ない役は俺がやるからさ、と手にした刃引き刀を掲げて見せた刀に、
莉鳥は頷いて一同の後を追った。

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