魔女的、呪文メーカー｜リアクション

魔女的、呪文メーカー

　夕暮れの街でスピカ・フォーツが出会ったのは魔女を名乗る女の子だった。
　魔女の世界からこちらへ来た時に魔法を使える呪文を忘れてしまったらしい。
　自分では新しい呪文と魔法は作れないとのことで、スピカは代わりに考えてあげることにした。
「助かります！　杖には魔法を使う力も宿ってますし、魔法の知識の集合体である『魔術書』も組み込まれているので簡単に作れると思います……！　よろしくお願いします」
　レンカと名乗った魔女の女の子が泣きながら頭を下げる。
「任せて」
　彼女が持っていた身の丈ほどもある杖を手にしたスピカは先端を見上げた。
「魔法……てことは色々出きるはずだけど」
　スピカは少し考えて、人差し指を立てた。
「自己バフと補助魔法なんてどう？」
「ふえ？　自己バフ？」
「能力を上げる……魔法」
「あ、うん、お願いします！」
　スピカは頷いて、すうっと息を吸い込んだ。
　それから呟くように、
「Code：Assault」
　そう紡ぐいだスピカは杖で空中に十字を切る。体に魔法の力が満たされて行くのがわかった。
「これが魔法」
　その直後、杖の先端に光が灯り、光の粒子が噴き出した。それから周囲に銀色半透明の結晶で構成された剣が生成される。
「す、凄いです。二段階魔法ですね！」
「二段階？」
「あ、こっちの世界ではそう呼んでます。補助魔法から攻撃系の魔法に派生させる。スピカさん、才能がありますよ」
「才能……」
　ゲームのコンボなんだけど。とは言わないでおいた。
　と、スピカの表情がひきつったのがわかった。
「どうかした？」
　レンカが震える指で示したのは空中だった。
　そこには黒い靄がぐにゃぐにゃと形を変え、浮かんでいたのだ。
「『悪魂』……！　私達の天敵ですっ、こんなところにもいるなんて、危ないですっ」
　『悪魂』が鋭い針を伸ばして来たのだ。
　とっさに後ろへ飛んでそれを回避する。レンカも避けられたようだ。
「どうすれば？」
「まだ人間には憑依してませんから、攻撃して倒せば大丈夫だと思います」
「わかった」
　スピカは杖に集中する。
「グリモアクセス……魔導書への接続を開始。認証完了、実行、Code：CW！」
　杖を両手で持ち、額に当て、高く掲げる。足が地面から離れると、浮遊感に襲われた。それから先ほどの補助魔法を具現化させる。
「マテリアライズ」
　周囲の剣が再び光の粒子へと変化し、杖へと吸い込まれて行く。そして、杖が片手剣へと姿を変えた。
　スピカは杖から変化した剣を振り抜いて、ポーズを決めると、『悪魂』に向かって弾丸のように飛び出した。
　『悪魂』の攻撃を避けながら、剣を振り上げ、
「たぁっ！」
　一刀両断。それから着地しショーの終わりのように一礼。
　見事『悪魂』を倒したのだった。
「凄いです！　ありがとうございますっ」
　レンカに物凄く感謝され、彼女と別れたのだった。
　と、前方から歩いてきて、レンカとすれ違ったのは薄柿色のロングヘアの女の子、橘明里だった。
　スピカの横も通り過ぎる。
「もしかしてブルーナの？」
　その呟きが何を意味しているのか、よくわからなかった。

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