開店！写真館 Recollection｜リアクション

開店！写真館 Recollection

■集いしアルバイター
　５月。
　夏に向かって一日ずつ空気の暖かみが増すこの季節。
　寝子島高校の程近く、写真館と貸衣装屋を兼務した店舗『写真館 Recollection（リコレクション）』がオープンした。
　そのお店を切り盛りするのは女店主、小田切理子。
　オープン間もないながらも、寝子島の人々の力によって無事にオープン後の毎日を忙しくも充実して過ごしている。
「……有難い。と、同時に想像以上の忙しさなわけよ」
「そりゃ良かったっすねー」
　紗雪幽が赤みがかった灰色の瞳を細めた。だがそれは喜びの同調と言うよりも、女店主の計画性の無さに苦笑していると言った方が正しいだろう。
　バイトに誘われ了承したものの、流石に幽と理子の二人三脚で乗り切るには厳しい状況というのが高校一年生の幽ですらわかる。
「しかし、安心して頂戴、幽さんや。更なる助っ人をお呼びしたのよ！」
「お、マジっスか！」
　途端に幽の表情に輝きが戻る。

「可愛い子か美人さんがいいっス！」
「ふふ、そこは完璧にクリアしてるわ！そろそろ来てくれる頃合いだし、盛大に迎えるわよ！」
「はーい！」
　店から飛び出す理子と幽。すると丁度、待ち人来たり。
「理子さん、開店おめでとうございます……」
　柔らかな笑みを見せ、理子や幽に頭を下げるその少女は
「時子先輩じゃないっすか！」
「また来てくれてありがとーう！」
　現れた御巫時子の姿に理子が感激の表情を見せるのは勿論、幽も笑みを浮かべた。
　お互いに、前回チラシ配りのアルバイトを経験した同士である時子と幽。
「理子さんが大変だから、って誘っていただきまして……。あ、でも。お客さんでもあるのですが……」
　時子の手に大きなケージが抱えられている。
「なんすか？これ」
　と幽が腰をかがめてケージを覗けば。即座に鋭い眼差しが幽へ向かい、そして
「コケーッコッコ！　コケーー！！」
　激しくその声を轟かせ、羽根を動かす……凛々しい鶏。
「雷鶏さん、驚いてしまいましたか……？」
　時子の愛鶏である雷鶏さんに時子が柔らかく話しかければ、雷鶏さんも少しは落ち着いた模様。
「時子ちゃんもまた働いてくれて嬉しいわぁ。よっし、今日も一日頑張るわよー！」
　店先で理子がえいえいおう！とばりに腕を動かせば
「あ、あのー……」
　３人に声がかかった。
　見れば、サラサラの白色ショートカットに、淡い水色の瞳を伊達眼鏡で縁取った少女が、不安気な瞳で理子たちに声をかけていた。
「どうしたのー？」
　理子が屈託なく明るい笑顔で少女――環的子へと声をかける。的子は手に持つチラシをググッと理子へと見せ。
「あの、チラシを見て。バイト募集してるのかーって……。私でも、大丈夫ですか？」
「えっ、お手伝いしてくれるの！？」
　理子が目を丸くした。確かに年齢制限は設けてないし、叶うことなら猫の手だって借りたい程。
　ふむむ、と思案する理子に、更に的子は
「お母さんに話して今回の許可はもらってます！お願いします……！」
　頭を深く深く下げる的子。

「へー、ちゃんと手順踏んで偉いっすねー」
　幽がニカッと笑みを見せ、時子も的子のしっかり者っぷりに笑みを見せ
「お名前を、教えてくれますか……？」
「はい、環　的子って言います」
「よぉし、有難う的子ちゃん！ぜひ一緒にお仕事いてくれるかしらっ」
「はいっ！」
　的子の水色の瞳がキラキラと光り。
　４人は開店準備中の店内へと戻っていくのだった。

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