Mother's Day がやってくる｜リアクション

Mother's Day がやってくる

☆カーネーションを母に

「せっかくの母の日なんだから、お母さんにお花を贈りたいわ」
　旧市街に住む中学二年生の時高クレオは、貯金箱からお金を取り出した。
　クレオの母はアメリカ人で、プラチナブロンドの綺麗な髪をした美人だ。
　クレオは父親似のため、母親と顔は似ていない。
　日本語はペラペラで感情表現も豊か、母はクレオが目指す「クールな大人の女性」の理想像である。
「でも、何がいいのかしら。私、お母さんの好きな花ってよく知らないし……花屋さんと相談して決めてみようかしら」
　クレオは花屋に出かけた。

「いらっしゃいませ。贈り物ですか」
　フラワーショップ花咲里では、ウェーブのかかった金髪のお姉さんが迎えてくれた。
　綺麗さに見惚れながら、クレオが言う。
「母の日のプレゼントが欲しいんですが、何にしようか迷ってます」
「よく知られているように、赤のカーネーションは一般的です。最近はこちらのピンクが売れ筋、ですね」
　月桂はピンクのカーネーションを示す。
「他にもチューリップやマーガレット、この時期のお花で赤を基調にしたものであれば特に決まりはありませんよ」
「うーん、迷ったらカーネーションにしようと思っていたけれど。カーネーションにもいろんな色があるのね。色それぞれに花言葉も違うのかしら？」
「花言葉でしたらおまかせくださいね。赤いカーネーションは『母への愛』、ピンクは『女性の愛』『熱愛』『美しいしぐさ』、黄色は『軽蔑』」
「黄色のカーネーションは避けたほうがいいのかな。紫のは？」
「『誇り』と『気品』です」
「お母さんにぴったりだわ。クレオ、これ買います！」
　普段は私と言っているが、テンションが高くなるとクレオは自分のことを名前で呼ぶ。
「すぐ手渡しをする形なら花束が適していますし、お部屋に飾ってもらいたい場合であればこちらのバスケットに入れた形でお渡しいただけます」
「うーん、それじゃ……バスケットで」
（お母さん喜んでくれるといいなあ）　
　喜ぶ顔を想像すると、嬉しくなってしまう。

「ただいま！　お母さん、どこ？」
　家に帰ったクレオは、真っ先に母を探した。
「どうしたの？　……あら、綺麗なカーネーション」
「お母さん、いつもありがとう。大好きよ」
　クレオは飛びつくようにカーネーションのバスケットを渡した。
　一瞬驚いた母の顔に、満面の笑みが広がった。