Mother's Day がやってくる｜リアクション

Mother's Day がやってくる

☆九夜山にピクニック

　バスケ一筋で男勝りの輝楽皐月は、両親の離婚を機に父方の祖母の家に妹と父と共に引越してきた。
　旧市街にある祖母の家は定食屋さん『かがやき亭』を営んでいる。
（寝子島に引っ越してきてからはおばあちゃんが私と妹の母親の代わりをしてくれている。母の日になにか感謝の気持ちを伝えたいけど……）
「ねえおばあちゃん、何かしたいことない？」
　『かがやき亭』で料理を作るのに忙しい祖母に尋ねた。
「気持ちのいい季節だし、九夜山にピクニックに行きたいねえ」
「おばあちゃんピクニック好きやもんね」
　それでプレゼントは決まった。
　若々しくてはつらつとした元気なおばあちゃんと、ピクニックに行こう。

　母の日。皐月は早起きしてピクニックに持っていくお弁当作りを始めた。
　とはいえ、皐月は女子力が低く料理が苦手である。
「えーと、こう？」
　おばあちゃんに料理を教えて貰いながら作るけど不器用で、妹のようには上手く出来ない。
「ああ、そこはほら、こう」
「……あたしなんでこう料理が下手なんやろ」
「数をこなせば大丈夫、やらなきゃうまくならないよ」
　基本は標準語を話す皐月だが、ボロが出ると時々関西弁が出てくる。
　苦戦はしたけどおばあちゃんに丁寧に教えて貰い、何とか作ることが出来た。
　今日だけは『かがやき亭』は父と料理の得意な妹に任せて、祖母と一緒にピクニックだ。
　
　まずはロープウェイで展望台前まで登る。
「いい景色だねえ」
「ええね」
　妹が喜びそう、と言うと、おばあちゃんは目を細めた。
「こないだお弁当持ってスケッチしてきたようだよ」
「そうなんだ」
　美的感性はない皐月だが、自分にはない芸術的な感性を持つ妹を誇りに思っている。　
「あの建物、何かな」
「あれは寝子温泉だね」
　景色を見ながらおばあちゃんは、九夜山のことをいろいろ話してくれた。
　展望台前駅に着き、皐月はおばあちゃんと展望台を目指して歩き始めた。
　日頃バスケで鍛えていて山登りも平気な皐月だが、おばあちゃんも負けていない。
　危なそうなら手を引こうかと考えていたけれど、汗一つかかずにしゃんしゃんと歩いていく。
（さすが、おばあちゃんもまだまだ山登りをする元気があるようね）
　皐月の心を読んだように、祖母はニヤリと笑ってみせた。

　やがて展望台に着いた。
「いい景色！　お腹空いた。お弁当にしましょう」
　運動よりお弁当作りで疲れたような気がする。
　レジャーシートを広げ、持ってきたお弁当を食べる。
　皐月の作った玉子焼きはお世辞にも綺麗とは言えなかったけど。
「美味しいね」
　と、祖母は満足そうに食べてくれた。
「おばあちゃん、いつもありがとう……」
　いつまでもずっと元気でいてね。
　そう思う皐月だった。

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