Mother's Day がやってくる｜リアクション

Mother's Day がやってくる

☆ココロは、いつも共に

　夢宮瑠奈は、一年前と同じように寝子電に乗って、島外へお墓参りに来ていた。
　関東のとある丘の上にある小さなお墓。
　テレビの向こう側のアーティストだったママはそこに眠っているのだと、パパはそう言ったのだ。
　
　左耳後ろでひとつ結びにした瑠奈の亜麻色の髪は、去年より少しだけ高い位置にあるだろうか。
　歌が好きなのも、ママが好きなのも、去年と変わらない。
（ただ、一年前とは決定的に違うところがあるの）
「ねえママ、あたし、ママの後ろを、頑張って追いかけているよ」
　のんびりと、けれど静かな決意を込めて、瑠奈はママのお墓に語りかける。
「今はまだ、本当に入り口の入り口だけれど。世界で大人気だったママを追いかけて、あたしもいつかは同じ場所へ。
　皆に愛される、皆を愛する。それが今の、あたしの目標」
　
（ママが本当にここに眠っているのかどうか、パパは教えてくれなかったけれど。
　少し前に、ふしぎな手紙が届いたけれど。
　もしかすると、今のこの不思議な奇跡のある世界なら、またあうことも叶うのかもしれないと、思ったりもするのだけれど）
　普段はポヤポヤとして、不思議現象を疑問に思わない瑠奈だ。
　あたしのママ。もういなくなったかもしれないし、まだ、ここにいるのかもしれない。
「それでも、寂しいよ」
（でも、あたしはかわりたい）
「きっと今のままじゃ、中途半端だから」
　もっともっと近づいて、並んで歩けるくらいになったなら。
（だから、だからね）
「いつか、そんなあたしを見に来てほしいんだ」

　頑張るから。そうしたら、きっと胸を張って、笑顔を届けることができるだろうなって、思うから。
　もっと輝いて、みんなを幸せにするんだ。

「だから今は、まだそっと見守っていてね、ママ。あたしがそこまで駆け上がってみせるから」
　この気持を動かすものは、愛。
　今はまだ掴みきれない大きなものだけれど、いつかきっと、この手で掴んでみせるから。
（だから……だけど）
　寂しさと愛は、背中合わせ。
　ずっと追いかけていけば、いつか答えがわかるかもしれない。
　輝きが、寂しさを抱える人たちをも、幸せにすることができたなら。
（きっとその時、あたしは寂しくないと思うから）

　

このページにイラストを設定する