Mother's Day がやってくる｜リアクション

Mother's Day がやってくる

☆姉と買い物に

　母の日を控えた旧市街。
　黒髪のセミロング、長いスカートの姉と並んで、ピンクの髪の透明は母の日の買い物に出かけた。
　父の日のは先日のイベントセールで用意したので、母だけ無しにする訳にはいかない。
「あんたお金ないでしょ、花束にすれば3,000円くらいでも結構見栄えするのよ。花にしましょ」
　大学生の姉は言う。
　でも透は反論した。
「そんなの普通すぎる。なんかアッと驚くもの無いかな」
「何かって？」
「体験型ギフトとか……」
　エステとかクルージングとかものづくりとか。最近は様々な体験ができるギフトがあるらしい。
「はあ？こないだの紳士服店であんたに言われた言葉、そっくり返すわよ！　予算いくらか分かってる？」
「冗談だよ。食べ物なんかどう？」
「例えば？」
「ケーキとか……」
　甘いものが好きな母にぴったりじゃないか。
「お母さんダイエット中よ」
　ダイエットと言ってもしょっちゅう失敗しては再開しているのは知っているが、母の日のプレゼントで嘆かせるわけにもいかないだろう。
「じゃ、お酒……」
「好きな銘柄知ってるの？」
　だめか。それにお酒は食欲が進んでやっぱりダイエットには向かないかもしれない。
「食べ物やめてエプロンとか」
「去年と同じ？　あ、ハンカチもダメよ。一昨年あげた」
　ハンカチなんて、たくさんあってもいいじゃないか。
　そんなやり取りに業を煮やして、透は声を荒げた。
「人の意見ばかり否定してないで、姉ちゃんも考えろよ！」
　と言ったら透以上に姉もブチ切れた。
「だから花にしようって言ってるでしょ！　分かんねー奴だな！！」

　今思うと、なぜ出かける前に決めなかったのか。
（こんな姉弟の姿を見たら母はどう思うだろうか）
　母だって姉弟が仲良く選ぶプレゼントのほうが嬉しいに違いない。
　一呼吸置き、冷静になって透は姉に聞いた。
「女の人って、どんなのが一番喜ぶ？」
「人にもよるけどやっぱり……」

　と言うわけで姉弟は、花屋へ予約しに向かうのだった。
（大事なのはもらう人の気持ちだよな）
「ところでカーネーションは普通すぎると思うんだけど」
「こういうのは定番がいいでしょ。普通じゃないならどんなのがいいのよ？」
　まだひとしきりもめそうな二人だった。
　