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寝子島高校
三歩進んで
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黄昏の金に染まり始めた道を、自分の影が長く伸びている。
背後からの夕陽に縁取られた影を追ったその先には、点滅する歩行者信号と小さな橋があった。
急かすように点滅する青い光を見つめ、瞬く。
橋の向こうに視線を投げる。見覚えのない住宅地、目立つのは他よりも高くそびえる病院らしい建物。反対側に頭を巡らせれば、丘の上の動物園が緑の間に見えた。
振り返る。
西日に照らし出されているのは、ふたつ並んだ学校らしい建物。小学校と中学校だろうか。少し離れた反対側には数十本もの鉄塔が乱立する変電所がある。
橋の下を流れる川から、微かに海のにおいがした。川下には海があるのだと、頬に触れる湿った夕風に悟る。
ふと、息が詰まる。
(……ここはどこだ?)
そのことに思い至る。途端、見えない影に足首を掴まれたかの如く一歩も動けなくなった。
信号が赤に変わる。
(いや、それよりも)
自分は、誰だ?
「ッ……?!」
鈍器に殴られた気がした。そうだ、自分は誰だ? 見知らぬ場所に突如として立ち尽くしていたこの自分は、一体誰だ?
胸に黒い不安が襲い掛かる。息が奪われる。思考が奪われる。心臓の動きが奪われる。
足をつけて立っているはずの地面が歪んだ、気がした。膝から力がぬける。よろめきその場にへたり込みかけて、咄嗟に拳で腿を殴りつける。奥歯を噛みしめ眉間に力を籠める。瞼を硬く閉ざす。
(落ち着け)
うっかりと震えてしまう息を一度強引に呑みこみ、出来る限りそっと吐き出す。大きくゆっくり、深呼吸をする。
強張る瞼を開く。大きく跳ねたせいで痛む心臓を片手に抑え、気づけば立っていた見知らぬ町をもう一度見回す。どれだけ瞳に映しても、目前の景色に見覚えがないことを確認する。
(……呆然としていても変わらないな)
もう一度だけ、深呼吸をひとつ。
肩に掛けた鞄の取っ手を握りしめる。大丈夫、と胸の内に繰り返す。
ひどく冷たい指先を拳に隠しつつ、学校施設の裏手に見えた小さな公園に足を運ぶ。夕暮れ時のせいか、人気の絶えた公園のベンチに腰を下ろす。
ともかくも、手持ちの物を確かめてみよう。
自分に関する記憶が全て飛ぶ前から持っていたはずの鞄を探れば、何かしらの手がかりは得られるはず。
膝に鞄を乗せ、開く。中に入っていたのは、高校生のものらしい教科書やノートに筆記用具、スマートフォンに生徒手帳、
(なんだこれ)
マル秘と書かれた深い緑色の手帳に、
(……なんだこれ)
防水バッグに納められた黒のブーメラン水着。
(なんでこんなもの入ってるんだ?)
思い当たる節があるような、ないような。自分の手がかりになるものであるような気がするけれど、頭にはどこか靄がかかったようにはっきりとしない。
いわゆる競泳用の水着を片手につまみ上げて首を傾げたところで、視界の端に引っかかる眼鏡の蔓に気が付いた。眼鏡の鏡面に映り込む夕日の色がひどく視界の邪魔になっている。
(この眼鏡)
片手で外してみて、気が付いた。眼鏡がなくとも、視界ははっきりとしている。
黒縁の伊達眼鏡は、けれど掛けていることに気づくのが遅れるほど顔に馴染んでいた。もしかすると自分は、普段からずっと伊達眼鏡を掛けているのかもしれない。
(でもなんで)
眼鏡のない自分の顔を掌でごしごしと擦ってみても、原因はさっぱり思い浮かばない。
眼鏡を外したまま、寝子島高校の生徒手帳を開く。中から出て来た写真つきの学生証には、『
志波 武道
』の文字。眼鏡を掛けて笑う寸前のような顔で映り込んでいる黒髪茶眼の少年、これが自分なのだろうか。
次いでスマホ画面を開く。メールの着発信画面や通話の着送信画面を辿り、学生証に見たものと同じ名前と、
(……これは、誰だろう)
自分の名前らしいものよりも多く散見する別の名前を確かめる。メール送信や通話発信の記録は、愛称らしい名で記された彼に対するものが極めて多い。
寝子高の制服を着込んだ自分の胸元を見下ろす。
(志波武道、寝子島高校三年、体育科)
たぶん、水泳部。
ここまで分かれば、次に向かう場所は決まっている。
今の自分にとって然程意味を持たない伊達眼鏡は鞄に見つけた眼鏡ケースに仕舞い、他の荷物と一緒に放り込む。スマホを片手に立ち上がる。
(寝子島高校……)
地図アプリで通学している高校の場所を検索する。学校に行けば、また何か別の情報を得られるかもしれない。
「よし」
スマホをポケットに入れ、両手で軽く頬を叩く。
「……ん?」
そうしてから、首を捻る。今の動作は、自分のものではない気がした。誰か、――大切な誰かの仕草を真似てしまったような、そんな気がする。
「あ、ブドーセンパイ!」
傾げた視界に、公園の出入り口からこちらに向けて手を振る誰かが見えた。同じ制服を纏った彼は、親し気な笑みを浮かべて迷うことなくこちらに足を向けてくる。
顔を知る誰かのはずなのに、少なくとも相手は自分をよく知っているはずなのに、自分にとって彼は全くの未知の人物だった。
記憶を失っている、という現状に改めて恐怖する。それと同時、
(変に心配かける訳にはいかない)
確信に近く思う。自分を知る誰にも、この異常を知られてはならない。何があっても、決して、自分のせいで誰かのフツウを壊してはならない。
「すみません、急いでいるんで!」
早口に言い、地面を蹴る。足早に彼の傍を過ぎ、追いかけてこられないよう、それ以上の声を掛けられないよう、駆ける。
黄昏の町を走る。
途中に見つけた周辺地図を確かめ、スマホの地図アプリも使用し、『寝子島高校』を目指す。
(大分近づいたと思うんだけど)
目的の場所を探して見知らぬ町を迷ううち、随分と日が暮れてきている。初夏のこの時期、日が完全に落ちてしまうまでにはまだ時間はあるけれど、陽が落ちてから学生が町をうろつくのはきっとよくない。
高校で手がかりが見つけられなかったら、とりあえずは生徒手帳に書いてあった下宿先の住所に向かわなくてはなるまい。
町の向こう、もうほとんど沈んだ夕陽を目に追って、道の先に目立つ施設を見つけた。高いフェンスと樹木に囲まれた広い校庭、正門から続く今は葉桜の並木道。見覚えはやはり全くないものの、正門には生徒手帳にあった校名と同じ『私立寝子島高等学校』の銘板が掛けられている。
自分が所属している場所のひとつの前に立ち、武道は小さく息を吐いた。ここでなら、もっと手がかりを得られるはず。
(……そういえば)
安堵を覚えて、思い出した。生徒手帳やスマホは見たけれど、もう一冊のマル秘と書かれた手帳はまだ確かめていなかった。
思った途端、今すぐ見なくてはという思いに駆られ、鞄からマル秘手帳を引っ張り出す。夕闇に手帳を開きかけて、正門脇の街灯の下へ移動する。
紙やしおりで膨らんだバインダー式の手帳を開いてみる。何処かの店や場所の名前や住所、『最近のお気に入り?』と書き込まれた店名、『NEW!』とはしゃいだ文字の次には男子のものらしい身長体重、『仲良し!』な友人たちのものらしい名に、ハートマークで囲まれた女子の名前。
目につくのは、
(この愛称)
スマホでも一番よく見た少年の名。
(なんだこれ……)
ただ一人に関することばかりが記されている手帳の中身に、おそらくは自分が書いたはずの内容に若干心の中で後退りしつつ、頁を捲る。
頁を進めるにつれ、ストーカーじみた内容は消えた。島の地図や路線図、カレンダー、
(……神魂?)
ろっこん、ののこ、クローネ。フツウとは思えない様々な事件に関するメモや顛末が書きこまれている。それは、ただの空想だと片付けてしまうにはあまりにも肉迫した、実際に体験したとしか思えない内容だった。
紙に落ちる光の色が変わる。
何気なく顔を上げて、見た。
太陽が姿を消し、名残の光のみが世界を彩っている。すべてのものから影が消える。すべてのものの境界線がぼやけて交わる、誰そ彼の逢魔ヶ時。
尋常にはあり得ぬほどの黄金に彩られる校舎があった。
それは、瞬きのうちに『フツウ』が一変する幻想的な光景。
今にも校舎の裏からナニカが湧き出て来そうな。
今にも空が降ってきそうな。
マジックアワーとも呼ばれる夕の光の只中で、知らず背筋が凍る。世界が切り離されてしまうようなこの感覚に、覚えがあった。
(そうだ、自分は、……)
思い出す。
(俺は……)
思い出した。忘れていたものを全て。
思い出した途端、口元に笑みが込み上げた。隠し切れない笑みを手にした弟マル秘手帳で抑える。
(いやぁコレで思い出すって)
それはそれで自分らしいのかもしれない。
フツウを壊す存在を何より警戒する自分に思わず苦い笑みさえ漏れる。だって、できるなら楽しいことで思い出したかった。
(テヘ)
ひとりおちゃらけてコツリと自分で自分の頭を叩いてみる。その次の瞬間、ほんの瞬きの間だけ、怖いほど真剣なまなざしを黄昏の校舎へと向けてから、武道は跳ねるような足取りで踵を返した。
「さぁ、早く帰るぜぃ!」
明日からもまた、楽しい学校生活とフツウを守る一日が始まるのだから。
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あとがき
担当マスター:
阿瀬春
ファンレターはマスターページから!
お待たせいたしました。
三歩進んでぜんぶ忘れた、な記憶喪失シナリオ、お届けにあがりました。
ふわっと急に記憶喪失になれるのも、寝子島ならではですねえ。
記憶喪失なみなさま、とてもとても! 楽しく書かせていただきました!
……わたしはこのシナリオ、とりあたまシナリオとこっそり呼んでおりました。
さておき、ご参加くださいまして、お読みくださいまして、ありがとうございました!
初めてのゴールドシナリオで色々どきどきでしたが、お陰さまでとても楽しく描かせていただきました。とりあたまシナリオ、そのうちもう一度くらい出させていただくかもしれません。それくらい書かせて頂けるのが楽しかったのです、記憶喪失。
わたしが楽しませていただきました分、みなさまにも少しでもお楽しみ頂けましたら嬉しいです。
ではでは、またいつか、お会いできますことを願っておりますー!
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年01月12日
参加申し込みの期限
2018年01月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年01月19日 11時00分
参加キャラクター一覧
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