自分の影を踏んで、気が付いた。
「……え、……」
唇から零れた声に戸惑う。唇を抑える指先に目を瞬く。見開いた瞳に周囲を映す。
穏やかな風に流されたツツジの甘い匂いがどこからか届いてくる。見上げる青空には羊雲がふかふかと飛んでいる。どこか遠いところから踏切と電車の音がする。優しい波の音と鳥の声が聞こえる。
「……あれ?」
周りの空気はのんびりとしているのに、胸に焦燥感が渦を巻く。息が詰まる。眩暈さえ覚えてよろける。どきどきとうるさく轟く胸を掻き毟る。ずきずきと痛むこめかみを抑える。
「嘘、……何? 何なに、なんで?」
ここはどこだろう。
自分は誰なのだろう。
歩いていたのは分かる、数歩足を踏み出したのも覚えている。けれどそれより前が思い出せない。何も覚えていない。
自分の名前も、自分が何であるのかも。どうしてここにいるのかも、どうやってここに来たのかも。
誰かに会おうとしていた? 帰ろうとしていた? 帰るとしても、何処へ? 家はどこだろう、家族はいる? いたとしてどんな顔をしていた? それよりも自分はどんな顔をしている?
疑問符の嵐が頭と胸で吹き荒れる。一歩も進めず立ち尽くす。どうしよう、どうしたらいい? 何もかも、自分のことすらも忘れたときは、どうしたらいい?
こんにちは。阿瀬 春と申します。
そういうわけで、あなたはあなたが誰であるのか忘れてしまいました。
どうしましょう。
神魂の影響ですが、神魂のことを覚えていてもいなくても構いません。考えた末に神魂のことを思い出しても大丈夫です。ゆるっとナニカ重要なことを思い出してそれを頼りにどこかに向かってみたり、誰かに会おうとしてみたりとかも問題ありません。
時間や場所はどこでも。朝でも昼でも夜でも、学校の通学路でも、自分の部屋でも町中でも。
なんかこうふと自分のことを忘れちゃった、どうしよう、な感じなアクションをください。それでわたしにその一幕を描かせてください。ゴールドシナリオでじっくりたっぷり、これでもかと!
影響を受けるのは24時間程度ではありますが、自分を知る誰かに会って自分のことを聞いたりそのひととの関係を聞いたり、あるいは自分が大切にしていたひとやものの手がかりを得たり、手がかりを辿ってうろうろしているうちに自分のことを思い出したりとかもできるようです。
『大切な誰か』がシナリオに参加している場合はGAをお組みください。シナリオにその方がご参加いただけていない場合は、『大切な誰か』の名前をお出しすることはできませんのでご注意ください。
GAを組めるのであれば、「記憶を失ったAさん(記憶ナシ)」と「Aさんのことを知るBさん(記憶アリ)」といった参加の仕方もできます。
ひとりで一日寝子島を逍遥してみても、記憶を失っていない友達や知り合いと出会って自分が誰なのか混乱気味に聞いてみたり、いっそのこと出会った全員が記憶喪失でみんなでわあわあしているうちにいろんなことを少しずつ思い出したりとかも楽しそう(?)ですー。
五月の風の中、ぼんやり立ち尽くしつつ、ご参加をお待ちしております。