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黄昏の混ざり始めた光が等間隔に落ちている。金色がかり始めた光を窓の外に追う。部活動に励む生徒の掛け声がどこからか聞こえてくる。
足が向いている正面に頭を戻す。並ぶ窓と、長く続く廊下があった。窓から廊下に落ちる長方形光の内に今しも踏み入ろうとしていた上靴の先があった。
視界の端、柔らかく傾き始めた日差しの色に透ける黒い髪がある。腕を持ち上げ髪をつまんで、引っ張る。頭皮の痛みと指先に感じる髪の感覚に、これが己の身であることを思い知る。
額に触れる。頬に触れる。触れたところで、己がどんな顔をしているのかさえも思い出せない。
息が零れて落ちた。
見下ろす足元は確かに自分のものであるはずなのに、ひどく不安定なものに思えた。
踏み出してしまえば、爪先から奈落の底に落ちてしまうような。
どんでん返しの向こう、全く知らない書き割りの前に突き出されてしまうような、――否、今の己は突き出されたその先に立っているのだろう。
見知らぬ長い廊下を見回す。右手には黄昏が始まる午後の光に満たされたたくさんの窓、左手には学年とクラスの書かれたプレートが掛けられ順番に続いていく教室。
(学校、ですよね……?)
顔から滑り落ちた手が胸元を掴む。ネクタイとジャケットが指先に触れた。どきどきとうるさいほどに跳ねる心臓に今更気づいた。
胸を掴む己の指に息を奪われた気がした。強張る指を解き、震える息を繰り返す。瞬きを繰り返す。どれだけ繰り返しても、
(思い出せない)
歩こうとしていたここはどこなのだろう。
自分はここからどこへ行こうとしていたのだろう。
(私、は……)
自分は誰なのだろう。
少し先の開いた窓から風が流れ込んでくる。緑の香含んだ温かな風に頬をどれだけ優しく撫でられても、心はざわめいたまま一向に凪ぐ気配を見せてくれない。
五月の風を胸に満たす。そっと吐き出し、また満たす。
(まいったな、)
ほんの少し、芝居じみて肩をすくめてみせる。どうしてかは思い出せないのに、そうすれば心が落ち着く気がした。
(私は一体誰なんでしょう)
片手に提げていた鞄を脇に抱きしめる。もう一度、周囲を見回す。
人気の少ない学校の廊下を、己と同じ制服を着た誰かが足早に過ぎていく。
見知らぬ誰かにどう声を掛けていいのか、声を掛けたところで己のことを問うていいのか迷う間に、その誰かは教室のひとつに姿を消した。
制服から鑑みても、自分が学生だということはわかる。同じ制服を着た人達がいることからも、この学校の生徒なのだろうということもわかる。
わかるけれど、実感がない。己の立つこの場所にも、誰にも彼にも見覚えがない。それでも、
(どうにか思い出さないと……)
踏み出す。己のことを思い出せないまま歩き出したところで、きっとこの世界はこれ以上引っ繰り返ったりしない。ここから別の世界に放り出されたりはしない。
(……はずです)
廊下の並びにトイレを見つけ、手洗い場の鏡を覗き込む。黒髪黒目に中肉中背、
――お前には華がない
たいした特徴を見いだせない己の顔に困ると同時、低い声がふと耳朶に蘇った。途端、心臓が今までになく萎縮する。鏡に映る己のものらしい顔が怯えに近く強張る。
心を畏怖させるものの正体を探る余裕もなく、鏡から目を逸らす。鞄の持ち手をきつく掴んで廊下へ逃げ出す。行く先も分からずただひたすらに黄昏の廊下を足早に歩く。
胸を脅かす誰かの声をこの身体から追い出したかった。
(今は、)
己が誰なのかも声の主が誰なのかも分からない今は、考えたくなかった。それを突き詰めたくはなかった。
僅かに息が弾むまで歩いて、足を止める。初夏の淡い熱が身体を包んだ。額に滲む汗を掌に拭い、細く長く、息を吐き出す。俯いた視線に映ったのは、今の今まで後生大事に抱え込んできた学生鞄。
思わず苦い笑みが溢れた。中身には自分の縁となる何かがあるに決まっているのに。
とは言え、廊下で荷物を広げるわけにはいかない。
校内をうろついた先に見つけた案内板を頼りに図書室へ赴く。カウンターの図書委員に頭を下げる。本の閲覧や勉強に勤しむ学生の邪魔にならぬ位置を探し、なるべく人目につかない書架の影に位置する机に着く。
鉛筆が紙を滑る音、本の頁を捲る音、書架の間を歩く音。耳を澄ませば閲覧者の息遣いさえ聞こえてきそうな静けさの中、思わず息をひそめる。
(あまり長居は出来なさそう、でしょうか……)
音を立てぬよう鞄を開き、中身を確かめる。筆記用具に教科書とノート、学生証。先ほど鏡で見た己の顔写真が貼りつけられている。
(こうがみ、あきひろ)
鴻上 彰尋
。
(……で、いいのでしょうか?)
自身の名前や住所、生年月日を見ても、これが己であるとはいまひとつ確信が持てなかった。何一つ思い出せなかった。
学生証と同じところに仕舞われていた生徒手帳を広げようとしたところで、偶然通りがかった見知らぬ学生の視線が気になった。不思議そうな顔をしているツインテールの彼女は、もしかしたら自分を知っているのかもしれない。
(私は、)
同学年らしい少女と目が合った。夏空色して澄む瞳に知らず見惚れて、見惚れたことに気づいて視線を逸らす。立ち上がって荷物をまとめ、少女に向けて頭を下げる。足早に図書室を後にする。
(私は、……)
胸が弾むのは何故だろう。
心臓の音は不安に駆られた先ほどよりもうるさいくらいなのに、それが不快でないのはどうしてだろう。
夏の気配が漂う廊下を過ぎ、黄昏の光に満ちた中庭に飛び出す。日中の温もりを残す煉瓦敷きの道を踏みつつ周囲を見回す。茜の色を透かせる鮮やかな新緑の下にベンチを見つけ、腰を下ろす。
心臓の轟きの意味も分からぬまま、慌てて掴んできた生徒手帳を開く。几帳面に書き込まれた時間割、住所録には僅かばかりの苗字と連絡先。
見慣れぬ人名を指先になぞる。これは友達の名なのだろうか。
自分が書いたらしい文字を見ても、自分が書き込んだらしい誰かの名を見ても、それでもまだ何も思い出せない。
生徒手帳の残り少ない頁をほとんど期待せずに捲って、
「……これ、は……」
最後の頁に写真を見つけた。ツインテールに夏空色した瞳の少女が、薔薇を象ったお菓子を両手に持って笑っている。
(この子は、さっきの)
格好からして三月の頃だろうか。写真の映り方からして、カメラで撮って現像したものでもなさそうだ。おそらくは、ニャインか何かの連絡用スマートフォンアプリで送られてきた画像を印刷したものだろう。
写真の少女が誰なのかは思い出せない。それでも、これはきっと他の誰にも知られてはならない類のものなのだろうということは容易に想像がついた。そっと生徒手帳を閉ざし、鞄にしまい込む。熱を持つ頬を手で擦り、鞄の中身を再度改める。
学生鞄の中身として特徴的なものは、台本と扇子と空の弁当箱。
昼に自分が空にしただろう弁当の内容にも、それを作った誰かにも全く心当たりがないことに重ねて困惑しつつ、台本と扇子を取り出す。
(演劇部かな?)
古びた台本は、何十年と前のものに見えた。ほぼ全頁に渡って仔細に書き込まれた文字も、自分のものではなさそうだ。同じほどに古びた扇子も、きっと自分のものではない。この手にはまだ馴染んでいない、そんな気がする。
(それに)
どうしてだろう、台本の中身と古びた扇子はどこか相反するもののようにも思えた。
(……でも)
それと同時、背中を向け合いながらも並び立っているもののようにも思えた。
胸に渦巻く、記憶にないながらも不可解な感情に、
(たぶん『私』にも、これはまだ分かり得ていない、ということなのでしょうか)
そう理解する。
台本と扇子も鞄に仕舞う。最後に取り出したのは、携帯電話。ここにはきっと、さっきの彼女との会話の記録も残っている。
画面を立ち上げようとして、ロック画面に阻まれた。思わず呻く。眉を寄せ、学生証に見た自分の誕生日を入力するも、
(……違いますね)
しまい込んだ生徒手帳を取り出す。自分が書き込んだらしい文字の羅列や、住所録にあった見知らぬ苗字の友達の誕生日を目につくものから入力するも、ロックは解除されない。
住所録の文字を指先になぞって、
(なんとなくだけど、きっと多分……)
行きついたのは、住所録の一番最初。漢字で書きこまれた姓が並ぶ中、唯一ひらがなで書き込まれた柔らかな印象の少女の名前。その隣に書き込まれた少女の誕生日。
(この、番号でしょうね)
少女の名を呟き、少女の生まれた日を携帯電話に入力する。
ロック画面が解除された、その瞬間。
「――彰尋くん!」
ぜんぶ、思い出した。
思い出すと同時、中庭への出入り口に立ち自分の名を呼ぶ少女の姿を見た。
咄嗟に携帯をポケットに突っ込む。膝に開いていた生徒手帳を両手でパンと閉ざし、鞄の中に押し込む。
「あ、……」
何気ない仕草を装おうとして失敗した。顔が熱い。心臓がうるさい。
様子がおかしかったから、と息を切らして探してくれた夏空色の瞳の少女に、
(俺は、)
何を言えばいいのか分からなくなる。
記憶を失くしていた間の行動が、生徒手帳に挟んだ写真や書き込んだ名前が脳裏を巡る。
(これは)
バレバレだ。
思った途端、思わず恥ずかしさに両手で顔を覆う。
(もうちょっと、いやもっと、)
顔から火が出そうな気がした。今までの己を他人の眼から顧みてみれば、学生手帳や携帯電話のロック云々がなくとも、もしかしなくても悟られてしまいかねない、かもしれない。
(……上手く隠せ)
「彰尋くん?」
傍に歩み寄って来て、少女が名前を呼んでくれる。覗き込んでくるような気配を感じながら、彰尋は顔を覆う両手を外すことが出来なかった。どうしたの、と心配気な声を耳にしながら彰尋は小さく小さく、囁いた。
「ごめん。ありがとう……」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年01月12日
参加申し込みの期限
2018年01月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年01月19日 11時00分
参加キャラクター一覧
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