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白い天井を薄い紗が遮っている。
星の消えた朝の空を覆う雲みたいだと思った。
身体を包む軽くて暖かい羽根布団を押しのけ起き上がる。半身を起こし、足を包むふかふかとした上質な布団を掌で叩く。布団に触れているのが自分の指であることを確かめる。
布団の下にある足を確かめる。柔らかなベッドに投げ出された、手触りの良い寝間着に包まれた細い足。これが自分の足らしい。
手足が自分の意志で動く自分のものであることを確かめて、ぐるり、穏やかな光に照らし出された周囲を見回してみる。
天井から垂れた翅のように薄い布が自分の横たわるベッドを隠している。少女めいて柔らかな色で囲まれたベッドの真ん中、途方に暮れる。
天蓋付きのベッドも、柔らかな日差しが差し込む大きな窓も、その外の白い大理石の柱に囲まれた広いバルコニーも、何もかもが自分には不似合いに思えて仕方がなかった。
(どうしてこんな所にいるんだろ?)
首を傾げる。視界に自分のものらしい白い髪が入って、咄嗟に指先に掴んだ。髪が自分のものであることを確かめる。見知らぬベッドに横たわっていたこの身体は、間違いなく自分のものであるらしい。
(私、……)
けれど、そもそもこの身体の持ち主である『私』は誰なのだろう。
寝起きの瞳を擦る。自分が誰か思い出せないことを明確に意識した途端、ざわめく不安に胸を掴まれた。
不安は容易く恐怖に変わる。
布団を跳ね除けようとして、傍らに横たわる玩具の人形が目に入った。
「……なに」
周囲にある女の子然とした部屋にただ一点、SF映画にでも出てきそうな無機質で無骨なフォルムの人形を見つけても、自分自身を思い出せぬ彼女にはそれが何なのかさえも分からなかった。
人形に触れようとして伸ばした手を自分の胸に引き寄せる。纏った服も、無闇に広い部屋も、部屋を飾る瀟洒なデザインの机も椅子もキャビネットも、何もかもに見覚えがなかった。自分には不釣り合いなものに見えた。ここにいてはいけないと目にする何もかもに告げられている気がした。
覚えのない天蓋つきベッドから飛び降りる。ベッドの脇にお行儀よく並べられたスリッパにも足を通さず、毛足の長い絨毯の感覚に戸惑いながら部屋を歩き回る。
(私、は)
自分に関することを何もかも思い出せないのならば、
「……確かめなきゃ」
ここがどこであるのか。
自分が誰であるのか。
外に出れば思い出せる気がする。少なくとも、ここは自分の居場所ではない。ここにいても、きっと何も思い出せない。
壁に並ぶクローゼットをあてずっぽうに開き、見つけた衣服を適当に着替える。ウォークインクローゼットの中に並んでいた靴を適当に片手に掴む。
花を象る木製の縁の姿見には、見知らぬ女の子が映り込んでいる。
手早く着替えながら鏡を覗き込む。
細いうなじを半ばまで覆うほどの短い髪は雪の色、髪と同じ色した睫毛は長い下睫毛が目立つ。睫毛に縁取られた瞳は、陽の色を透かせるような薄い水色。
「……」
口元の艶ほくろに指先で触れる。鏡の中、瞬きを繰り返すきつめの三白眼が何となく気に入らなかった。これが自分の顔なのだと唇をちらりと尖らせ、鏡の傍の棚にいくつか置かれていた眼鏡のひとつを取って掛けてみる。こうすれば、眼差しの強さは少し和らぐ。
度の入っていない伊達眼鏡の蔓を指先で持ち上げる。記憶を失う前の自分も、もしかしたらこの眼のきつさを気にしていたのかもしれない。
どれもこれも真新しくて可愛らしい靴のひとつを手に取ってみる。こんなにたくさんの靴は、本当に自分のために用意されたものなのだろうか。だとすれば、誰が与えてくれたものなのだろう。
考えれば考えるほど胸を不安が満たした。自分はここに居るべきではないと改めて思った。居ても立っても居られなくなってクローゼットから飛び出す。
廊下に出るらしい扉に耳をあて、外に誰もいないことを確認する。
日差しの当たる明るい廊下に出る。広くて長い廊下にも、廊下の壁を飾る花や綺麗な絵にも、何もかもに戸惑いながら足早に過ぎる。どう考えても、自分の居場所はこんな立派なお屋敷にはない。
(だって、私は、……)
けれど、その先が思い出せない。
いつまでたってもロード中の場面ばかりが流れるスマートフォンの画面を見つめているときのようにお腹がもやもやとする。その気持ちを抱えたまま、見つけた階段を駆け下りる。降りた先にあった窓を開く。
流れ込む爽やかな五月の風を頬に受けながら白いサンダルを履き、窓枠に足を掛けて外に飛び降りる。
濃紺のスカートにフリルつきのパフスリーブブラウスというお嬢様然とした格好はどう考えても自分の感覚にしっくりと来なかったのに、窓から飛び出した瞬間は妙に自分が自分らしくいられているように思えた。首を傾げながら整えられた芝生の上に着地し、素早く周囲を見回す。
初夏の柔らかな風が満ちる庭は、鮮やかな青のネモフィラや白に黄に赤、様々な色のポピー、桃色の月見草や紫の釣鐘草で一面の花畑に設えられていた。
優しく揺れる花々は、大地に広がる星々のよう。
(星)
花々を映す瞳を空へと上げる。
(そうだ、星)
春の香を残す薄水色した朝の空に星は見えなかったけれど、いつか見た星空の記憶がぼんやりと頭に蘇った。あれはどこで見た星空だったのだろう。
同じ空を見られれば、もしかすると何か思い出せるかもしれない。
(でも、まだ午前だし)
花を踏まぬようにそっと歩く。突き当たった煉瓦塀に沿って進んだ先に見つけた背丈よりも高い立派な門扉を潜り抜け、屋敷の外へ出る。
屋敷の外には、見知らぬ町が広がっていた。
ごみひとつ落ちていない石畳や煉瓦の道路を、なんとなく足音を殺し息を潜めて進む。道沿いには自分の居た屋敷にも勝るとも劣らぬ瀟洒な屋敷がずらり。咲き零れる蔓薔薇の生垣の脇を足早に過ぎながら、空を仰ぐ。星を見られる場所はあるだろうか。
(プラネタリウムか、……なければ図書館で星の本を見よう)
贅沢は言っていられない。
そう考えた途端、ふわり、花の香が降ってくるように思い出した。
(そうだ)
いつも、こんな風に我慢をしていた。
プラネタリウムは大好きだったけれど、ほとんど行けなかった。行けたのは、本当に特別の特別の日。いつも見ていたのは、
(窓の外の星空)
記憶の中にあるのは、あのお屋敷のような大きな窓ではない。もっと小さな、風が吹く度にガタガタと揺れて隙間風の流れ込む古いアパートの窓。
眼に映していたのも満天の煌く星空なんかではなかった。夜でも煩い車の排気ガスやネオンの光に汚されて赤紫に濁った夜空とくすんだ星々。
(そう、……そうだ)
こんな可愛い服なんて着たことがなかった。膝の擦り切れたズボンに襟の伸びたトレーナー、男の子みたいな格好をしていたはず。母とふたりきりで暮らしていたのはこんな明るい町ではなかったはず。
(こんな服でこんな所に居るはず、……ない)
そのはずだった。
町を歩けば柄の悪い大人が朝から飲んだくれていた。油断すれば怖い言葉を掛けられるから、いつだって陽の当たらない道を足早に俯いて歩いていた。
母以外に、優しい大人は居なかった。
その母も、生活のために働き詰めだった。だからいつだって、遊びたい気持ちをじっと我慢して家事を手伝った。母に心配を掛けたくなくて大人しく学校に通った。甘えたい気持ちを堪えて宿題をした。
勉強と家事に追われて忙しい日々の中、ただひとつ楽しかったのは、学校の図書館だった。ここではないどこか、今ではないいつかの物語を描いたSFジャンルの作品を借りては、くすんだ星空の見えるアパートの窓辺に座り込んで没頭した。
文字を追うことに疲れた瞳をもたげては夜空を仰いだ。
(……何処かへ行きたい憧れがあったのかも)
爽やかな朝の陽ざしに掌を翳す。あの頃、洗濯物や食器洗いの家事で荒れていた手は、今は白く滑らかになっている。
あの頃には思いもよらなかった場所を、今の自分は歩いている。
知らない町を歩いたその先、足が知っていたかのように丘の上にある小さなプラネタリウムに辿りついた。小型の天体望遠鏡を備えた屋号さえない赤煉瓦の建物の前に立つ。重厚な木の扉の脇には、小さな窓があるだけの料金所が備え付けられていた。
「おや、いらっしゃい。的子ちゃん」
小窓の向こう、老いて嗄れた男の声がした。自分をよく知るらしい老人から名を呼ばれた途端、思い至る。
環 的子
――それが、今の自分の姓名。
皺深い手に示されるままに入場料金を支払い、扉をくぐる。緋絨毯の廊下を過ぎ、ドーム型スクリーンのあるそう広くない部屋に入る。朝いちばんであるせいか、自分以外の客は居なかった。
濃紺の椅子に深く腰掛けた途端、プラネタリウム上映が始まった。町の光にくすむ夜空が、ゆっくりと澄んだ満天の星空へと変わって行く。
(……星、きれいだなぁ)
夜空が澄んで行くと同時、失せていた記憶が煌く星のように次々に浮かび上がり始める。
(お母さん)
薄暗がりにうずくまって痛みを堪えるような日々の果て、母が倒れた。
学校に呼び出しがあったとき以上の衝撃を、病床の母を見たとき以上の絶望を、的子はまだ知らない。
幸運なことに、母の手術は成功した。日を重ねぬうちに退院することも出来た。そしてその退院の日、『お父さん』を紹介された。
事情があって別れて、けれど劇的な再会を果たしたお母さんの元『夫』。
自分の『本当の父』。
(『お父さん』……)
母と父は再婚し、裕福な父は寝子島に新しい家を建てた。
『お父さん』とお母さんは愛しあっている。
『お父さん』は自分を愛してくれている。
それはよくわかった。
優しくしてくれる、今までできなかったからと色々なものを買い与えてくれる。衣服も装飾品も、本も玩具もスマートフォンも。
(だから、いいんだ)
そう思うはずなのに、心の奥に消えない気持ちがある。冷たくて重たい、どれだけお父さんから愛されても消えない気持ち。
(私、……)
星が輝く。
(まだ、大切な、)
きらきらと、漆黒の夜空に煌き瞬く。
(……大切な……)
寝子島に来てからは、ずっと一人でいた。だって父と母の邪魔をしたくなかった。広いお屋敷の何処にも居づらかった。
ある日、父が贈り物をくれた。新しい玩具だという『カプセルギア』。その中に一体、光に照らされて見えた、どのギアよりも綺麗だった――
「N.E.O.M.U……」
知らず唇が紡いだ言葉に、的子はチェアから跳ね起きる。
「ネオム」
その名を思い出した瞬間、もう我慢が出来なくなった。
館長の老人に詫び、プラネタリウムを飛び出す。眩しい朝の光の中を駆けだす。
(ネオム、ネオム!)
心に叫ぶのは、瞼を開けたときに見た人形の名。カプセルギア、『ネオム』。今の的子が心を寄せる、大切な大切な『友達』。
(どうしてこんな大切な事を忘れてたんだろう)
――……なに
ネオムを見たときの自分の戸惑った声を、しかめた目を思い出して胸が痛む。
(あんな目で、ネオムを見ちゃいけなかったのに!)
息が切れても走る。帰ったら部屋に飛び込もう、一番にネオムに謝ろう。抱きしめて、一緒にベッドに丸まろう。隣に置いて、記憶を失くしていたことや町を歩いたこと、プラネタリウムで星を見たこと、全部ぜんぶ話そう。
そうするうちに眠たくなってしまえば、ネオムと一緒にもう一度眠ろう。
「ネオム」
次に目を覚ましたときは、きっと笑いかけながらその名を呼ぼう。
「ネオム――」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
阿瀬春
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
定員
10人
参加キャラクター数
10人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2018年01月12日
参加申し込みの期限
2018年01月19日 11時00分
アクション投稿の期限
2018年01月19日 11時00分
参加キャラクター一覧
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