【星幽塔】第七階層眠れる獅子｜リアクション

【星幽塔】第七階層眠れる獅子

【王妃の間(1)】

　ピラミッドの最深部にある、棺を安置する玄室へのルートは二つある。
　そこで彼らは二つのチームに別れ、同時に奥を目指すことにした。
　かたやレオーネ＆ラサラスとともに王の間を経由するチーム、かたや王妃の間を通りぬけ、奥を目指すチームだ。
　王妃の間を経由することを決めたのは、アリス・ミーティア、恵御納夏朝、鎌八まもる、龍目豪、旅鴉月詠、御剣刀、水上桜の七人だった。
「みんな、足下には気をつけろよー」
　鎌八まもるは、星のカンテラで暗い通路を照らしながら、注意を呼びかけた。
（……相手はどこから出てくるか、わからない。曲がり角には充分注意しなくちゃ）
　水上桜は、特殊部隊さながらの動きで曲がり角から奥の様子を覗いつつ、通路を進んでいく。
「……」
　恵御納夏朝は、墓に土足で踏み入るような行為をすることにやはり沈痛な面持ちを浮かべていた。
「あまり気にする必要はないよ。私達は墓荒らしではないのだから」
　と、そんな夏朝に声をかけたのは旅鴉月詠だ。
「もしも私達を呪う相手がいるとしたら、相手は王だ。仮にも王が相手ならば、多少は話し合いも通じよう。私に考えがある」
　月詠が頼もしげに言ってくれるので、夏朝もいくばくか心が晴れやかになるのを感じた。
（……通路は狭いな。挟撃に合うと面倒だ。いつでも動けるようにしておかないと）
　御剣刀は、余計なことは考えず、一行の一番後ろをいつでも動けるように体勢を整えながら歩いていた。たかだかチンピラ相手なら、一人で加速して片づける自信が彼にはある。
　そうして、ついに王妃の間へと続くと思しき入口のようなものが見えた。
　耳を澄ませば、がやがやと下品な笑い声や話し声が聞こえる。
　どうやら侵入者の存在など微塵も気づいていないらしい。
　冒険者達は目配せをしあうと、呼吸を合わせて一気呵成で王妃の間へ突っ込んだ。

「動かないで！　動くと撃つわ！」

　最初に突入したのは桜だ。機動隊さながらの動きで、ならず者達の制圧を試みる。
「……！？　なんや、このガキ！　お前ら、いてもうたれ！」
　ならず者達は、ほとんど考える素振りも見せず、応戦の構えを見せた。あるものは曲刀に魔火をまとわせ、ある者は狩人の光を宿らせたスリングショットのゴムを強く引く。
「えー？　なんか思ってたのと違ーう。こういう人達って、ジンギきるんじゃないのー？」
　アリス・ミーティアが、どこで仕入れたのかわからない知識を披露しながら、即座に銃を構える。
　スリングショットを持つ者達に狙いを定め、射撃。
「わああああ！　俺のパ・チンコがああ！」
「次郎八！　しっかりせぇ、次郎八ぃぃぃ！」
「え？　いや、武器を壊しただけなんだけど……」
　スリングショットを壊されたならず者が何故か股間を抑えながら叫ぶので、アリスはなんだか居た堪れない気持ちになる。これではまるで自分が急所を狙ったみたいではないか。
「……やれやれ随分と愉快なならず者だね」
　と、月詠は呆れ顔で呟きながら緋色大鍋で敵の放つ魔火を防ぎ、
「……本当の金的とはこうやってやるのだよ、えいっ」
「ぎゃああああああああああああああ！？」
　と、容赦のない金的で目の前のならず者を悶絶させる。それを見て、男達は（月詠姐さんまじパねぇす……！）と心の中で戦慄していたとか、そうでないとか。
　そんな感じで、騒がしく、慌ただしく王妃の間での戦いは始まった。

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