第七階層の街は、今日も情熱に満ちていた。
「さあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 第七階層名物、情熱サソリの唐揚げだよ! 今なら情熱カムバックキャンペーンで、最初の一匹はいつもの半額で食べられちゃうよ!」
(……サ、サソリの唐揚げ?)
若い露天商の青年の言葉に、思わず足をとめたのは、その熱気に寄せられるようにこの階層を訪れていた
シーナ・キュクノスだった。
ちらりと瞳を店先に向ければ、そこにはじゅっと音を立ててこんがりと揚がる漆黒のサソリ。
(……サ、サソリって食べられるものだったんだ)
虫が苦手なシーナにとっては、おおよそ正視に耐えがたい光景であったが不思議と好奇心をそそる香りもする。
と、そのときだった。
「おいおい、あんちゃん! 何が情熱サソリじゃ! これ、ゴキブリの唐揚げちゃうんけ!」
「え、ええっ!?」
突然店先に響いた、いきりたった男の怒鳴り声に、店主の青年が驚いた声をあげる。
「おどれ、こんなもん食わせよってからに、ワシが腹下してもうたらどうしてくれるつもりじゃああ!!」
「そうじゃ! 兄貴の脳みそは繊細じゃけん、ゴキブリなんか食うたらよう消化できんわ!」
見るからに柄の悪そうな男達は、聞くからに頭の悪そうな言葉を並べ立てて、青年に因縁をつけている。
「ひ、ひいいっ! す、すみません! でも、そんなはずは……」
しかし、青年はその迫力に気圧されている。だが、怯えつつも、そんなものを客に出すはずはないと懸命に主張する。
シーナには、その青年が嘘を言っているとは思えず、そっと近づいて幻視の光を使ってみることにした。
刹那、全てのからくりは見えた。
「なるほど。最初から揚げたゴキブリを用意して、店で出されたと因縁つけてお金を騙し取るつもりだったんですね」
「……!」
ぽつりと呟いたシーナの言葉に、店主の青年が目を見開いた。
シーナはそれだけ言うと、そそくさとその場を立ち去ろうとした。
正直、虫は苦手なので、さっさとそこから離れたいと思っていた。
だが、
「……な、なんじゃと!? お、おどれ、さてはこいつとグルじゃな!?」
「そ、そうじゃ! それで善良な領民である兄貴から金をだまし取ろうと……」
「え、ええっ……?」
次の瞬間、開き直った男達に、シーナは胸倉をぐっと掴まれる。
「見下げた野郎じゃ! その性根を叩き直したる」
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ……!?」
あまりの喧嘩っ早さに、シーナは慌てる。
殴られる、と思って彼が目を閉じたまさにそのとき、ひゅっと空を裂く音とともに凛とした若い女の声が響いた。
「私の街でくだらない茶番を演じるのはそこまでにしてもらおう」
「なっ……て、てめぇは……」
男の喉元に剣を突きつけるのは第七階層のアステリズム――
レオーネ・ナジュムだった。
「……や、やべぇ。領主だ。おい、ずらかるぞ……!」
「あ、ま、待ってくださいよ、兄貴!」
レオーネの顔を見るや否や、男二人は分が悪いと判断したのかさっさと逃げてしまった。
「……レ、レオーネさま。ありがとうございます……!」
なんとかトラブルを免れた店主がレオーネに頭を下げる。
「領主さま、助かりました」
と、シーナも言えばレオーネはふるふると頭を振り、
「いや、礼を言うのは私の方だ。本来ならば、街の治安を守らなければいけないのは私の方なのだからな。民を輩から救ってくれて感謝しているぞ、冒険者よ」
と、頭を下げた。ふと見れば背後にいた老執事のシェルタンと、相棒のライオン、ラサラスもぺこりと頭を下げている。
「そんな……。僕は何もしてませんよ」
「謙虚だな。だが、そんなお前達にだからこそ頼みたいことがある」
「え……?」
はっと気づいてシーナが振りかえれば、そこにはやはり偶然その場に居合わせた冒険者達の姿が。彼らもまたシーナと同様に、困った人を見てみぬふりできなかった冒険者達なのであろう。
そして、そんな冒険者達の目を真っ直ぐに見つめて、
レオーネ・ナジュムは静かな、だが情熱に満ちた口調で言った。
「昨今、先のような狼藉を働く賊の横行が目立っている。どうにも逃げ足が速く、先刻、ようやくシェルタンにアジトを突きとめさせたのだが、少々厄介な場所なために、私とラサラスだけではやや心もとない。どうか、私とともに、この階層の平和を乱す悪党を退治してくれないだろうか?」
というわけで、ごきげんよう。MSの水月 鏡花です。
そんなこんなで、またまたシナリオをお届けに参りました。
今回はシーナ・キュクノスさんにガイドに登場頂きました。ご出演、ありがとうございます。もしも本ガイドに参加して頂ける際は、ガイドにとらわれずご自由にアクションをおかけください。
目的
ピラミッドに入り、中にいる『ならず者』達をこらしめて、可能であればピラミッドに隠された財宝を回収してください。
ピラミッド
230m×230m×139mのピラミッド。
石造りの巨大な古代建造物。
恐れを知らない、ならず者達がアジトがわりに使っているようです。
・順路
┌ 王の間 ─┐
入口┤ ├大回廊─玄室
└王妃の間─┘ │
└─????──┘
・内部
○入口
二つの通路に別れ、それぞれ王の間、王妃の間に繋がっています。
どちらがどちらに繋がっているかはレオーネさんが知っています。
○王の間
謎の空間。壁一面に大きな壁画が描かれている。
宝箱が三つ並んでいて、うちの二つは鍵が壊され、中身も奪われているが、一つは無事のようです。
壁画には、紅い宝玉を掲げるイヌビス像とそれにひざまづく奴隷たちの姿が描かれています。
盗賊達がいるので、適当にこらしめてあげてください。
アニキシーフもこちらにいます。
奥へ進むと大回廊に辿り着きます。
レオーネさんとラサラスくんはこちらに同行します。
○王妃の間
謎の空間。王の部屋と同様に壁には大きな壁画があり、三つの宝箱がある。
宝箱は、やはりうちの二つは鍵が壊され、中身も奪われているが、一つは無事のようです。
壁画には、青い宝玉を掲げるイヌビス像とそれにひざまづく奴隷たちの姿が描かれています。
盗賊達がいるので、適当にこらしめてあげてください。
奥に進むと大回廊に辿り着きます。
○大回廊
奥には玄室へと続く堅く閉ざされた扉があり、その扉の両側には二体のイヌビス像が立っている。
扉には『右手に炎、左手に水』と古代ほしびと文字で書かれている。
○????
入口の見つからない部屋。王妃の間のどこかから繋がっているようですが。
どこかから大回廊へ抜けられるようです。
○玄室
棺を納める部屋。
中央には一段高い台座と大きな黒い棺があります。
噂によると、この棺の中に古代の王とイヌビスの杖が入っているとか。
アクションについて
アクションには、王の間、王妃の間のどちらを経由して、玄室(最深部)に向かうかをお書きのうえ、それぞれの場所で必要そうな行動をお書きください。
ENEMY
◆チンピラシーフ(刀)
日本で言うところのチンピラヤ○ザです。
いかにもアラビアンな曲刀を持っていますが、顔がヤ○ザなのでどう見てもドスにしか見えません。不思議!
剣士の光、魔火の光、盗賊の光を持った者達などがいます。
◆チンピラシーフ(スリングショット)
日本で言うところの以下略。
拳銃ではなく、ゴムで石や鉄の玉などを飛ばすスリングショットで攻撃してきます。
魔水の光、狩人の光、騎士の光(サバク・ト・ゲトーゲ)を持った者達がいます。
◆アニキシーフ(双刀)
日本で言うところの以下略。
一応兄貴分のようで、身体は屈強。
二振りの曲刀と剣士の光の組み合わせにより、そこそこ強いです。
◆イヌビス(杖)
第七階層に伝わる神話の神――イヌビスを思わせるピラミッドの守護者です。
玄室の棺に安置され、目を覚ますと空を飛び、魔法を使って攻撃してきます。
黒い犬のような頭を持つ人のような姿をしています。
財宝を狙う賊を排除するのが目的のようで、悪用するつもりがないこと、かつ、それを扱うに足る実力を持っていることを示せば、どこかに還っていきます。
・イヌビスの杖……杖術による物理攻撃です。
神話に伝わる宝具で、その価値は値段がつけられないほどだと言われています。
・レイ……対象の足下に無数のビームを発射する魔法陣を発生させます。
・ロックフォール……対象の頭上に岩を振らせます。
・エクスプロージョン……超高温の爆炎を発生させて、広範囲にダメージを与えます。
・ゼロシフト……瞬間移動魔法。
ある程度のダメージを与えると、本気を出したイヌビスが使ってくるようになります。
緊急回避をしたり、瞬時に背後を取ってきたりと手に負えない強さ。
ピラミッドのどこかにある、ある道具を使うと封じることができるようになります。
◆マミー(包帯)
ピラミッドのどこかの棺に安置されている包帯で包まれたミイラ。
目を覚ますと、身体に巻きつけた包帯を自在に操って攻撃してきます。
鉄のように硬くした包帯で斬り裂いてきたり、鞭のようにしならせた包帯で締めつけ攻撃をしてきたりします。
倒すと、砂になって崩れ落ちます。砂の中には核と思しき、黒い宝玉が入っています。
NPC
◆レオーネ・ナジュム
ピラミッドにたむろするならず者達を排除し、可能であれば彼らがたむろする原因でもあるピラミッドの財宝――『イヌビスの杖』を第七階層の共有財産として管理したいと考えています。
今回、冒険者達に同行を依頼したのは、財宝を回収にするにあたり、かなりの危険がともなうと第六感が告げているからのようです。
もしかすると、今回のシナリオでレオーネさんの星の力が判明するかもしれません。
◆ラサラス
レオーネに付き従うライオンです。
よく訓練されており、一緒にならず者達等と戦ってくれます。
◆シェルタン
レオーネが厚い信頼を寄せる老執事。
今回は、ピラミッドに赴くレオーネの留守を預かってくれるようです。
星の力
星幽塔にいると、星の力 と呼ばれる光が宿ります。
★ 基本的な説明は、こちらの 星の力とは をご確認ください。
星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようですが、
このシナリオの中では変化しませんので、このシナリオではひとつだけ選んでください。
ひとともれいびにはひとつだけですが、
ほしびとには、第二の星の力(虹)もあります。
★ 虹についての説明は、こちらの 第二の星の力 をご確認ください。
アクションでは、どの星の光をまとい、その光がどのような形になったかを
キャラクターの行動欄の冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のように書いてください。
衣装などにこだわりがあれば、それもあわせてご記入ください。
衣装とアイテムの持ち込みについて
塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
※【星幽塔】シナリオのアクション投稿時、作物・装備品アイテムを所持し、
【アイテム名】、【URL】を記載することで、
シナリオの中で作物(及びその加工品、料理など)・装備品を使用することができます。
※URLをお忘れなく!!!
それでは、皆様のご参加をお待ちしております。