寝子ヶ海浜公園喧嘩奇譚｜リアクション

寝子ヶ海浜公園喧嘩奇譚

　人生の新たな道

「そもそもですよ」
　梢は人差し指をぴんと立てる。
「カツアゲする側が８人もいたら、カップルが１万持ってても一人1250円ですよね。そんな利率の悪い犯罪やめて、バイトでもしたらどーですかね！」
「し、知るか！」
「あ、わかりました。計算できなかったんですねー可哀想に」
「くそっバカにしやがって！」
　凪がすっと梢を制した。
　凪は大人だった。そして、国を守る自衛官だった。
　休めのポーズでまっすぐ立つと、海を背に並ぶ不良たちに言って聞かせる。
「お金が欲しいなら真面目に働きなさいな」
　けっ、とこの期に及んでも不良たちは唾を吐く。凪は無言で、一円玉で彼らの鼻っ柱を順に撃った。
「喧嘩で力使うより、人の為や国の為に役立つように扱いなさい」
　腕組みをする凪に向かって、不良たちが今、口にできる言葉は、負け犬的遠吠えしかない。
「くそっ！　覚えてろよっ！！」
　あちこち青あざやら切り傷やらで負傷した不良男子たちは、ふらつくアゲルに肩を貸し、逃げるように砂浜を去って行った。梢は「もう来るな！」とあっかんべーをして、庚や由貴奈と笑いあった。

　修は取り残された不良女子たちを解放する。
「手荒な真似して悪かったね。ケガはなかった？」
　にこ、と微笑めば、紳士耐性がないのか、女子たちはぽっと頬を染めた。
　テトラポッドの影からひ弱すぎる大学生、世和スギルと、彼女の守手星衣が出てきて深々と頭を下げる。
「あの……みなさんありがとうございます」
「お陰で助かりました」
「ケガはないか」
　修がふたりを検める。幸い無傷のようだ。
　ほっと息をつき、修はやや厳しい表情でスギルを見た。
「男なら、自分の彼女は守れ」
　尤もだ。刀もうんうんと頷いている。スギルは申し訳なさそうに唇をかんだ。
「そうだよね」
「スギルくん……」
　星衣が甘ったるい声でスギルの腕にしがみつく。
「ごめん、星衣ちゃん。僕に君を守る力がなくて」
「２人で逃げるのも立派な方法だよ」
　修は、先ほどより声をやわらげて言った。
　凪がスギルの肩をぽんと叩く。
「いろんな意味で強くなりたいのなら自衛隊に来なさいな。みっちり鍛えて差し上げますわ」
「じ、自衛隊？　ちょっとそこまでは……」
　しどろもどろになるスギルとは反対に、星衣は目を輝かせて凪の手を握る。
「お姉さま！　守ってくださってありがとうございます！　お姉さまは私の憧れです！　お姉さま大好き！」
「え、星衣ちゃん、僕は？」
「お姉さまは女性ですから、浮気にはなりませんよね？　ね？」
　すると、不良女子ふたりも凪を取り囲む。
「ウチら、心入れ替えようと思うッス」
「突然目の前にイケメンが現れても恥ずかしくないように、自分を鍛えるッス。目指せ、自衛官！」

　砂浜に笑い声が響き渡る。
　さゆるの姿はいつの間にか消えていた。
「久々に良い汗かかせてもらったよ」
　紘之助はかかか、と笑い、刀の背中をぽんと叩いた。
「お前さん鍛えてるな。帰る先は旧市街か。俺と古武術談義でもしながら帰らねぇか」
「はい、喜んで」

　紘之助と刀が去るのを見て、新は源三を軽く小突く。
「俺らも行くか」
「うす。……ててて」
「なんだ、結構喰らったのかよ」
「いやなに。喧嘩の怪我はすぐ治りやすから」
　源三の言う通り、ろっこん『DIEハード』のお陰で、彼の怪我はすぐに良くなるだろう。
「心配しねぇでくだせぇ、アニキ」
「だから、アニキって呼ぶな！」

　一人、また一人と帰路につき、やがて寝子ヶ海浜公園は静けさを取り戻した。
　寝子島の平和は今日も守られたのだ。

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あとがき

担当マスター：網透介
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網です。僕のはじめてのリアクションをお届けします。
それぞれのキャラクターさんの設定も、
いただいたアクションも個性的で、僕も楽しく書くことができました。

お陰様で喧嘩騒ぎは穏便に（？）収束。
不良女子さんたちが早めに制圧されてしまったため、
不良男子さんたちがややダーティになりました。
今後、女子不良二人は不良から足を洗って、自衛官を目指すことでしょう。

世和スギル君と守手星衣さんのカップルは無傷でしたが、
若干、関係に変化もあった様子。
また別のシナリオでお目にかかることがあれば仲良くしてやってください。

それではこの度はご参加ありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。

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シナリオ

シナリオデータ

シナリオスケジュール

参加キャラクター一覧