【三寮祭】猫鳴館、アロハ・オエ♪｜リアクション

【三寮祭】猫鳴館、アロハ・オエ♪

●ここは秘境。何があっても驚かない

　八神修は落ち着いていた。
「何度も来た事があるから今更驚いたりはしないつもりだよ。そう……何があってもね……」
　防水デジカメをちらり確認。
　それから、赤銅色の湯の中になんかわらわらいる魚っぽい銀色の群れをちらり。
　ここに来る途中で会った骨削瓢が高笑いしていたのを思い出す。

　――地下帝国で開発したメカナマズに人工波を作らせりゃ人の負担も減ろうよ。

　普通の人に見られても猫鳴館（略　とか言ってた。
　銀色はアルミ素材かなにかだろうか。なんかバシャバシャしているそれらがメカナマズなのだろうか。
　波と言うか、水しぶきがめちゃくちゃ顔にかかって、その正体ははっきり見えない。
「撮るべきか、撮らざるべきか、それが問題だ」
「なにしてるですー、シュー君？」
　相棒の椿美咲紀は用意してきた水着を着ていた。
「うん、アレさ、」
　と指さしたとき、大きな波にメカナマズさんたち（？）が南国風のパネルの裏に流されてゆくのが見えた。
　裏からわあわあいう声が聞こえる。
「人力波係の人たち、大丈夫か……？」
　なんて思っているうち、波が普通に戻る。パネルの向こうから、結城永遠の声がした。
「今見たものは忘れてくれ」
「いや、うん。猫鳴館だから何があっても驚かないよ」
「そうか。波加減はどうだ？　強くとか弱くとかあれば言ってくれ」
「ありがとう。強い波をお願いしてもいいか？」
「お安い御用だ」
　ざんぶっと大きな波が来る。
　修は強波に乗っかって仰向けに流されてみる。
「どんぶらこー」
「シュー君楽しそうですね」
「こうやってみると洞窟風呂のようだなと思ってな。美咲紀は楽しんでるか？」
「モチのロンですよ。お肌スベスベになるかもなのです。乙女としては、温泉の効用が気になる所！」
「お肌にはいいみたいだぞ」
「そうですか！　そういえば……ほえ、シュー君お肌白いですね。羨ましいなのです」
　自分の腕と修の腕を並べてみれば、やっぱり自分の方がやや黒いのだ。
「色白なのは母親に似たせいだと思うが、俺としてはもうちょっと……」
「なーに贅沢なこと言ってるんですか！　私なんか、連日の庭と畑仕事で日焼けが……紫外線が意地悪するのです。うう」
「そう言うなよ。ちゃんと頑張ってる証拠じゃないか。名誉の傷ならぬ名誉の日焼けだろ？」
「うん、そうですよねっ！」
　美咲紀はとぷんっと顎まで湯の中に身を浸す。
「はぅん、癒される……」

　お風呂上り、ほこほこ体が温まったところでムームーに着替えて、美咲紀はとってもご機嫌だ。
「ムームーか。長い黒髪が映えてて似合ってるぞ」
　そう言って修は、無意識に美咲紀を褒めてしまったことに気づき、なんとなく照れくさくなる。
　褒められて嬉しくなった美咲紀は、その場でくるりんと廻って、修へカワイイアピールをする。
「この浅黄色のムームー気に入ったのです！」
「馬子にも衣装だ」
　つれない言葉は、照れ隠しというやつだ。
　修はアロハシャツである。
「わー、チョイ悪っぽい感じですねー。チャラチャラしてますー」
「チョイ悪？　チャラ修？　うーん嬉しくない！」
　てしっとチョップを入れる。美咲紀は笑って、ぐい、と修の腕を引っ張った。
「さ、上に行ってハワイアン屋台でご飯にしましょう！」