【三寮祭】猫鳴館、アロハ・オエ♪｜リアクション

【三寮祭】猫鳴館、アロハ・オエ♪

●プロローグ：はじめてのろっこん発動→猫鳴館へ！

　ゴールデンウィーク。
　家族とお出かけしたり、恋人とデートしたり、おうちでダラダラしたり。
　それぞれの過ごし方をする春の黄金週間。
　ところが今年の寝子島は、ふだんよりそわそわ、祭り気分が漂っている。
　それというのも寝子島唯一の高校、寝子島高校の学生たちが住む三つの寮が合同で、三日連続で寮祭を開くことになったからだ。地域の人や、なんだったら異世界の住人たちも参加できるとあって、島全体がウキウキしている。
　三寮祭のトップバッター猫鳴館は、島民にとっては、碌でもない噂ばかりの謎の場所。
　怖いもの見たさも相俟って、行ってみようかという人もいるようだ。

　さて。
　猫鳴館に行く前に、寝子小近くの風の原公園を覗いてみよう。
　空は快晴。ベンチのそばでは、小学５年生の源竜世が流行りのカプセルギアで遊んでいる。
　彼のギアは、赤と黒ベースの体に黄色いほのおのマークがついた、ドラゴンを模した超攻撃型だ。
　休日の早朝なのでほかに人影はない。
　竜世はギアを手に、人目を気にすることなく、その名を呼んだ。

「いっけぇ、スターライトナイト！」

　不思議なことが起こったのはその刹那のこと。
　竜世のギア、スターライトナイトが形を変え、人間の男性に変化したのである！
　髪は、ドラゴン形態のときの面影を残す黒をベースに、赤と黄色のメッシュが入っている。
　顔立ちは整っているが目つきは悪い。
　その擬人化スターライトナイトは、竜世を見てニヤッと笑う。
『よう、マスター』
　竜世は目をぱちくりさせた。
「スターライトナイト……？」
『そうだ。よろしくな』
「ホントに？　しゃべれるのか！」
　すごい！　飛び上がるくらい嬉しい出来事だ！
　竜世はこのときはじめて、自身のろっこん＜オレとキミのナイショの話＞を知ることになった。
　スターライトナイトに抱きつくと、わしわしと頭を撫でられて夢じゃないって実感する。
「いっぱい話したいけど、仲良くなるなら裸の付き合いだって聞いたことある！」
　そこまで言って、竜世はポケットの中でくしゃくしゃになっていた三寮祭のチラシのことを思い出した。
　
　　三寮祭１日目：『アロハ・オエ♪　猫鳴館ハワイニャンズ』　温泉もあるよ♪

　そこに現れたのが竜世の永遠のライバル、タイラ・トラントゥールである。
（ん？　トリ頭が大人の男と居るなんて珍しいな）
　タイラは不審に思った。
　近づくと、竜世はタイラに向かって、大きく手を振ってくる。
「あれ、タイラじゃん。これから猫鳴館に行くんだ！　温泉があるんだぜ。タイラも一緒に行かねえ？」
「断る！　何でボクが一緒に行かなければならないんだ。あんなお化け屋敷のような場所へ行くなんて、ボクには理解できないな」
　彼らのやりとりからだけでも、猫鳴館の噂が如何にひどいか推して知るべし。
　もっとも、竜世はすっかり、「猫鳴館のヤバい噂　＜＜＜　スターライトナイトと温泉」という気持ちになっていたので、拒否したタイラをさらりと逆撫でする。
「そうか？　あ、もしかしてタイラ怖えの？　なら仕方ないよな」
「誰が怖いなどと言った！　そんなバカな事があるわけないだろうが！」
「じゃあ一緒に行こうぜ！」
「だから行かないと言っているだろうに」
　頑として拒否しながらも、こいつ何者なんだよ、とチラチラと派手な男の方を見る。
　それに気づいた竜世は、人目を気にするそぶりを見せたのち、タイラにそっと耳打ちした。
「あっそうだ、内緒だけどタイラには教えてやるよ。コイツはスターライトナイト」
　にわかには信じがたい告白に、タイラは竜世を冷たく見遣る。
「はぁ！？　ただでさえトリ頭だったのが更にネジでも緩んだか？」
「嘘じゃねえよ人になったんだって！」
　一生懸命言ってもさっぱり信じないタイラに、とうとうスターライトナイトが口を開いた。
『おい、マスター。頭でっかちに説明しても無駄だぜ』
「おい、頭でっかちとはボクの事を言っているのか！？」
　タイラは声を荒げ、胡散臭げにスターライトナイトを睨みつける。
　そしてのち、竜世のことが心底、心配になった。
（……あいつ、この男に騙されているんじゃないだろうな……？　このまま放っておいてバカが犯罪に巻き込まれたなどと聞いても目覚めが悪い）
　仕方がない、少し様子を見るか、と、タイラは渋々と猫鳴館行きに同意する。
「よーし、決まり！」
　スターライトナイトとタイラの間に流れる微妙な空気など気にせずに、竜世は高々と拳を突き上げた。
「ほら早くいこうぜ！」

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