放課後何する？｜リアクション

放課後何する？

　訪れた猫カフェで、八神修は偶然にも七夜あおいの姿を見かけた。
「あ、修君！」
　自分に気付いたあおいが声を上げるのに、修は笑顔で「やあ」と応える。
　あおいの膝の上には、真っ白猫が既にしてちょこんと座っていた。
「可愛いね、その子」
「だよね。でも、飲み物を狙ってるみたいなの。……ふふ、駄目だよ、これは私の」
　ちょっかいをかけてくる白猫と戯れるあおい。その様子に目元を和らげる修へと、
「修君は、今日は形から入らないの？」
　と、あおいが悪戯っぽい笑みを向ける。
　その意を察して、修は少し慌てた。
　形から猫の仲間にならんと猫耳ヘアバンドを付けているところを、あおいに目撃されたことのある修である。
「いやいや、今日は猫耳はつけないぞ」
「あ、ちょっと赤くなってる？」
「あおい、その話は頼むからもうこの辺で……」
　照れ臭さから何とか話題を逸らそうと試みる修だが、一方で、
（……あのあと送ってくれた写真は、宝物なんだけどな）
　と、心中に密かに呟き、胸の内をあたためた。
　修のスマートフォンの中には今も、猫耳事件（？）の折にあおいが撮影した写真が残っている。
「それにしても、その子以外にも可愛い猫が沢山だな」
「だよね。ほっこりしちゃう」
「俺も、今同じこと考えてたところだよ。隣、座ってもいいかな？」
「うん、大丈夫」
　ドリンクを持っていない方の手で、ぽんぽんとソファ席を叩いてみせるあおい。
　ありがとう、と、修はそこに腰を落ち着けた。
　修の元にもドリンクが運ばれてくれば、興味津々の猫達が集まってくる。
「よしよし、ほら、怖くないぞ」
　身体をそっと擦り寄せてきた甘えん坊な黒白猫を、優しく撫でる修。
　２人の周りに集まる子達あり、離れたところでのんびりしてる子達あり……。
「これは、まったりしちゃうねぇ」
「だな。部活は楽しくて時間忘れちゃうけど、ここも時間泥棒って点では同じ……いや、部活以上かも」
　笑って、「おやつはどうする？」と尋ねれば、「あげたい！」とあおいの瞳がきらと輝く。
　早速購入したおやつを袋から取り出せば、今度は猫達の目がぴかーん！　と光った。
「わ、わ、そんなに焦らなくっても大丈夫だよ！」
「俺のところにも登ってきた……って、わあ、どんどん増えてく……！」
　最終兵器おやつの威力を前に猫まみれになりながら、顔を見合わせて笑い合う２人。
　猫との時間を存分に満喫したあとで、修はあおいへと微笑みかけた。
「うちのミルクにも、また、会いに来てやってくれ」
　一番歓迎するのは猫より俺かもだけど、と付け足された言葉に、あおいがくすりとする。
　店を出る際には、修はブラシで、あおいと自分の制服に付いた猫の毛をさっと払った。
　順番は、勿論あおいからだ。
「今日も楽しかった。癒しの時間、だな」
「うん、私も楽しかったし癒されたなぁ。ありがとう、修君」
　また学校で、と別れる時も、２人のかんばせには、笑顔の花が咲いていた。

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