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【星幽塔】第三階層 竜の肚には精霊の仔と竜の仔と
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「リア、ビールの差し入れ持ってきたよー!」
透き通るような湖水色した長い髪を揺らし、
アリス・ミーティア
は農場の真ん中にあるトト家の通用扉を開けた。玄関扉が上階層への入り口となってからというもの、邸への出入りは主に通用扉が使われている。
「ん? あれ?」
両腕に抱え込んだビール瓶をカタカタ鳴らし、髪と同じ色した瞳を瞬かせるアリスの足元、ふわりと温かなナニカが触れた。そこにはいつもリアと一緒にいることの多い黒猫。脛に纏わりついてにゃあにゃあと鳴く黒猫の前、アリスはしゃがみこむ。
「もちろん、ここの蜂蜜酒も美味しくて好きだよ」
大真面目に言うアリスに、黒猫は違う違うと猫耳頭を横に振る。にゃうにゃうにゃごにゃご、何事か喋りながら、壁に掛けられた農場の地図目がけてジャンプする。最初にトト邸、次に農場南方の小屋の絵に肉球跡をつける。
「リアはここに居るのね。え、何か大変な事件が起きてるの? ……あ、そうそう、ステラが来てるって外で聞いたんだけど」
黒猫は通用扉から近い厨房を見遣った。つられて見れば、厨房内には蜂蜜酒の空瓶がいくつも転がっている。幼女の姿をしていながらお酒の類にも目がないステラを思い、アリスは思わず噴き出した。存分に蜂蜜酒を飲んだステラは、どうやら邸内でぐっすり熟睡中らしい。
「じゃあ、起きるまでに解決したいね」
「んー、何かあったー?」
通用扉からひょこりと顔を覗かせた
壬生 由貴奈
に、アリスは状況を説明する。
「ありゃー……」
紅茶色の髪を掻き、由貴奈は邸の外に広がる農場へと視線を伸ばした。
「塔そのものが平和になっても、別の問題が出てくるのはまた別のお話だろうしねぇ」
足元に寄って来た黒猫の頭を撫でる。本当は、洞窟で育てている焦熱小麦や鷹の胡椒などの作物の様子を見に来ただけだった。
(最近畑仕事も妖精さん任せになっちゃってたからねぇ)
たまには働かないと、と思っていたのだけれど、畑仕事は後回しにした方が良いかもしれない。
「んー……」
待っててねぇ、と黒猫を邸に残し、由貴奈とアリスはリアが居るという農場南方にある小屋を目指す。
「うーん、リアくん、リアさん、リアちゃん……いやぁ、ちゃんは無いかなぁ」
いつも通りの眠たそうな顔つきでのんびり指折り呟きながら、脳内ではポシェットに詰めてきたアストラル・クッキーの数を確かめている。
(メテオ・フロウもクラップ・アローも持って来てて良かった)
背に負ったコンパウンドボウのかたちに似た弓と矢筒内の茨の形状持つ矢をちらりと見遣る。
「うん、めんどくさいからいつも通りリアくんでいいや」
軽やかに定め、地平線まで続く畑を黒い瞳に映す。
畑と畑を分ける背の高い樹が一列に生えるあぜ道、銀色の髪を揺らして立つ細身の少年を見つけ、由貴奈はひらりと手を振った。身の丈ほどもある巨大な剣を背に負った銀髪の少年など、星幽塔であってもきっと彼以外には居まい。
「さっきー、やっほー」
由貴奈の声に、
サキリ・デイジーカッター
は深紅の瞳を巡らせる。
「今日は、壬生先輩」
涼やかな声で会釈するサキリの隣に並んで、
「……ああ……」
「ひどい」
由貴奈が不穏に瞳を細め、アリスが怒りを隠さず呻く。
畦に植えられた樹々を境として、そこより先の畑には巨大な芋虫が這いずったような跡が縦横に刻まれていた。食い荒らされ踏み潰され、粘液に塗れた作物は端から枯れて腐っている。
「第三階層には初めて来たが、……なんとも惨憺たる有様だ」
枯れた茎から落ち、赤黒く腐り始める果実を見下ろし、これは酷い、とサキリは呟く。一帯の畑はほぼ壊滅といっていい。
「こんな平和そうな場所にも怪物は現れるんだな」
伸ばした視線が見据えるのは、枯れ果てた畑のちょうど真ん中にある石造りの小屋。農機具置き場らしいその小屋を半ば取り込み、巨大な白い繭が出来上がっている。
正体不明ではあるけれど、羽化すれば作物への被害は甚大なものとなるのは間違いない。
(被害を拡大させない為に倒そう)
「あっ、リア!」
「あんな近くに……」
繭の前にへたりこむ農場主の姿を見つけ、アリスと由貴奈が駆けて行く。ふたりを追って畑に踏み込み、サキリは眉を顰めた。繭を作り上げる際にまき散らしたのか、繭糸らしきものか地面を這っている。
「……硬い」
何気なく触れた指先を切り裂いてしまうような糸の硬さに、蛹を護る繭の防御力の高さを考える。
(幼虫と言っても結構手強そうだ)
そう思う少年の口元は淡く笑んでいる。硬い糸に包まれた繭はなまなかな刃では通用しなかろうが、
(……なまなかでない刃を、僕は持っている)
背に負った鉄塊じみた巨剣『竜殺し』の柄に手をやる。愛しいものを撫でるかのように優しく触れる。対人を一切考慮せぬ、対大型怪物用のその剣をまさか害虫駆除に使うことになるとは思ってもいなかった。
通常であれば持ち歩くことさえ苦労する巨剣には、素材としたドラゴントレインの力が僅かながら宿っているが故に所有者の筋力をある程度増強する。その上、今は闘士の光を身に宿らせている。超重量の剣を操るに苦はない。加えて、サキリには瞬間移動を可能とするろっこんもある。
「またまた遊びに来たよぉリアくーん」
殊更に明るい調子でリアに近付くなり、由貴奈は傍らにしゃがみこんだ。丸まったリアの背中をぱたぱたと叩く。
「大変なことになってるけど、何とかするから! これが終わったら飲もうね! ビールいっぱい持ってきてるからね!」
しょんぼりとした目を上げるリアを慰め、アリスは両手を拳にする。落ち込んでいるリアの為にも、この繭を何とかしなくては。
「任せて!」
「そうそう、今回は任せてよぉ」
地面に這う繭糸で切ったのか、リアの手のあちこちが血にまみれている。食い荒らされた畑を駆けずり回ったのか、ひとりで繭をどうにかしようとしたのか。
「終わったら畑の野菜食べよう」
ポシェットから取り出した布でリアの手を包み、由貴奈はいつも通りのふわりとした笑みを浮かべた。
「皆で料理して食べればきっと楽しいよぉ」
「畑は生活の糧だ」
青空の下にあって一種異様な雰囲気を纏う巨大繭を仰ぎ、
八神 修
は眉を決する。遠目に一帯の畑の異常を見、確かめに来たところでこの繭を見つけた。
「生存の戦いなのだから殺処分に躊躇はないよ」
力強く請け負いつつ、修は戦力を確かめる。
星幽塔の住人らしい少女と由貴奈、サキリ、それからこの場所に共に訪れた
椿 美咲紀
。
「やれやれ、虫は苦手なのだがな……」
ぼやきながらも近づいてくる
新田 亮
の姿も見止め、修は頬を緩める。
「酷い事になっちゃったのです」
結い上げた黒髪を揺らし、腐臭にも似た臭いが漂う周囲を見回し、美咲紀は悲し気に唇を噛んだ。
「何が羽化するんだ?」
俯く美咲紀の肩を叩き、修は農場主に問う。
「大毒蛾だ。もう数日もすれば繭から這い出して来る」
見落としていた、とリアは肩を落とす。
「……でも、羽化する前に見つけられたのはまだ良かった。成体になってしまえば、あちこちを飛び回って毒の鱗粉を撒き散らす。数日で死ぬけれど、……死ぬまでに今の被害の数十倍は作物をだめにしてしまうんだ」
「っ……」
農場主の言葉に、野菜を多く育てている美咲紀が息を呑む。そんなことになれば、土壌が毒で汚染されてしまう。今季の収穫を諦めるだけでは済まない、ゆゆしき事態に陥る。
「それは避けなければ!」
力強く宣言し、美咲紀は鋼糸で作り上げたかのような繭を見上げる。うう、と頬が歪んだ。こんなに大きな繭から出て来る虫はどんなにか大きいだろう。
想像しただけで全身が総毛だった。
(だって、蝶は受粉的に嬉しい虫だけど蛾はそーでもないもん)
しかもでっかい。人間の大きさなんて比ではないくらいにでっかい。
「絶対に避けなければ!」
繭から出てくるところなんて、もう絶対の絶対に見たくない。
「俺達でなんとかする、待っててくれ」
「羽化する前に処理するか」
その前に、と修はまだ呆然自失の態のリアを立ち上がらせ、小屋から離れさせる。
「すぐ戻る。必要なものがあれば揃えて来よう」
「あ、私も手伝います」
小屋の前で繭を見張る仲間たちに告げ、修と美咲紀はリアを邸に帰らせるついで、農場内にも最近開店させた武器屋兼よろず屋の『ねこよろず』に立ち寄る。必要と考えたものや仲間に頼まれたものを手早く用意しよう。
お待たせ、と帰って来た修と美咲紀からそれぞれの手に行き渡されたのは、簡易的ではあるもののきちんと防塵防毒処置を施したマスクゴーグル。
「退治中に万一毒の鱗粉が飛んでも厄介だろう」
念には念を重ねる修に従い、大毒蛾退治の面々はそれを装備する。
「えっ、これどうやるの? なんかきついよ?」
「こうだよぉ、アリスちゃん」
面喰うアリスの後ろに回り、由貴奈は調整ゴムを緩める。ついでに持って来たアストラル・クッキーを皆に分ける。手作りのクッキーは、この農場で育てた作物を使っている。
「わ、ピリッてする! ビールのおつまみにいいかも」
「鷹の胡椒と焦熱小麦と足軽小麦を使ってるよぉ。各種能力の上乗せしておこうねぇ」
「あ、俺も持って来た」
由貴奈に倣い、亮もトマオレクッキーを配る。
「んんっ、こっちは爽やかに甘いね!」
「攻撃力と防御力、脚力、主に身体能力があがる。戦闘前にいいんだ」
貰ったクッキーをかじりつつ、美咲紀は繭を見上げて思案する。
「シュー君」
「どうした?」
「私、ゴキブリを始末する時は熱湯をぶっかけてクリーンな処理を心がけてるのね」
「……それは立派な心がけだ」
「この繭にもそれは応用できないかな?」
中で変態しようとしているでっかい虫は怖いけれど、白い繭は丈夫で美しい。糸が取れるのであれば、修や仲間たちと営む『ねこよろず』の仕入れにだってしてみたい。
(切り刻むと繊維痛むし、燃やすとモッタイナイから)
まずはお湯をたくさん作ってかけてみようと美咲紀は提案する。
大事な商品だと思えば、怖さは半減する、ような気もした。
(疵は少ない方が良いのです)
とはいえ、普通に繭の上からお湯を掛けると自分たちの生命まで危険に陥る。何といっても、この繭がどんな動きをするのかさえ分からない。
「まずは観察、対策はその後だ」
修の言葉に頷き、美咲紀は魔風の光が変化した片手杖を握りしめる。白い翼を象った先端部、蔓のかたちして巻き付く星の光が、持ち主の意志を得て緑色の光を煌かせた。
「ちょびっとちょっかいかけてみます。反撃の様子を探ってみましょう」
美咲紀の周囲にふわり、魔風の光によって操られた小石が数個浮かび上がる。
「風の力で幼虫の糸を解きたいけど、固そうだね」
同じ魔風の力を身に宿すアリスが青い髪を揺らして小さく首を傾げた。繭のまま荷車でどこか遠く、羽化しても毒の鱗粉の被害が及ばないような場所にまで運んでしまえたらいいのだけれど、
(大きすぎるよね)
折角生まれようとしている生き物を殺めてしまうのはやっぱり可哀想だけれど、落ち込んでいるリアのためにも何とかしなくては!
「反撃が来たときは任せて!」
エプロンドレスのスカートの下に隠した愛用の銃を取り出し、アリスは背の翼を羽ばたかせた。魔風の力も使い、宙に浮かび上がる。
「幼虫と繭を潰せばいいんだよねぇ?」
アストラルクッキーにトマオレクッキー、それからいつも持っている手作りクッキーを三枚まとめて口に放り込み、由貴奈は黒い瞳をのんびりと瞬かせる。
クッキーをもぐもぐしながら、矢筒を下ろす。地面にクラップ・アローをあるだけ並べる。茨の形した取り扱い注意な矢の鏃に巻き付けるのは、先ほど修に頼んで用意してもらった油に浸した獣皮。
「なるほど、火矢か」
巨剣竜殺しを鞘走らせ、サキリがどこか楽し気に深紅の瞳を細める。
「どんなに硬い繭でも、生物由来の糸なら火には弱いんじゃないかな?」
いつでもどこかしらに刃を呑んでいる後輩とくすくすと笑い合いつつ、由貴奈は危なげのない手つきで危い形状した矢に細工を施してゆく。ろっこんの進化能力を使えば、その形状故に命中率が甚だしく低いクラップ・アローであっても確実に的を射貫く。己がろっこんを上手く使いさえすれば、動く的の追尾も可能なはず。
「ん、こんなもんかな」
細工を終えたクラップ・アローを矢筒に戻す由貴奈に、修がここに戻る道程の間に連れてきた炎の翅持つ妖精を紹介する。大事に育てた作物を台無しにされて極めてお冠な妖精は、由貴奈の傍をぶんぶんと飛び回りながら協力させてと繰り返した。
「うん、お願いできるかなぁ」
由貴奈が頷けば、ひとまずの準備は完了。
「前哨戦と行くか」
巨大な繭の周りを歩き、繭と小屋を合わせた幅を測っていたらしい亮の言葉を受け、アリスが上空へと飛びあがる。由貴奈がメテオ・フロウにクラップ・アローを番え、竜殺しを手にサキリが踏み出す。美咲紀が片手杖を高く掲げる。
「いっきまーすっ!」
美咲紀が小石を放つと同時、由貴奈が矢を放つ。風を切る鏃に、炎翅の妖精が火花を爆ぜさせる。焔の尾を引く矢を、美咲紀の魔風と由貴奈のろっこん『ヘンドリック・モーメント』が後押しする。
恐ろしい勢いで加速する矢と小石が、聳え立つ繭を撃つよりも一瞬先、
「っ……!」
手にした刃で空間を切り裂き渡るろっこん『斬空赤刃』を使ったサキリが繭に向けて竜殺しを振り上げる。風を断つ鉄塊の如き刃が赤光を帯びる。それは『斬空赤刃』直後でなくては使えぬ進化能力。
振り下ろす遠心力に巨剣の重量が、赤い刃による超常的な破壊力が加わる。
金属と金属を打ち合わせたような、火花が散るような音が響き渡る。腕を痺れさせるような感覚に深紅の瞳を歪め、サキリは返す刃で空間を裂いた。
空間を渡るその直前、繭を次々に撃つ小石と火矢を視界の端に捕える。攻撃を受けた繭がぎしりと軋むように蠢く異様な光景を目に映しつつ、一瞬のうちに由貴奈と美咲紀の前に己が身を転移させる。
本能的に盾じみて構えた竜殺しの幅広な刃は、瞬きのうちに吐き出された白銀の繭糸を高い音たてて弾いた。
「わ、危ないよー!」
上空のアリスが驚いた声をあげる。繭から続けざまに吐き出される白銀の矢を魔風によってあらぬ方向へと吹き飛ばす。風を逃れた矢は凄まじく精確な射撃の腕で撃ち落とす。
空にも敵がいると見なしたか、繭の丈夫から投げ縄にも似て数本の糸が放たれた。
「わ、わわっ?!」
賑やかな悲鳴をあげながらも、アリスは燕のように空を翔ける。くるりくるりと方向を変え、回転し、糸を絡ませ機動性を奪う。
「反撃が執拗だ」
「まあ、必死にもなるよねぇ」
呟くサキリが構える剣の盾の後ろ、由貴奈はメテオ・フロウを構える。
数本まとめて矢筒から抜き出されたフラップ・アローを見止め、炎翅の妖精が華やいだ笑い声をあげた。くすくすと妖精が笑う度、鏃に火が爆ぜる。
赤い炎の宿る矢を繭の矢に向け続けざまに射る。ろっこんの力を得た矢は的確に繭の矢を撃った。炎を弾き散らし、繭の矢が枯れた大地に落ちる。
「新田、頼む」
「おう」
見る間に戦場と化したその場に在っても冷静さを微塵も失わぬ声を修が放った。瞬時に応じ、亮が地面に両手をつける。身に宿る魔土の光を放てば、白銀の針にも似た繭の糸切れが散乱する大地に土塊の大盾が立ち上がった。
「……ついでだ」
地に掌をつけたまま亮が呟いた途端、ずしん、と重い地響きがその場の全員の足に伝わる。
「繭が小屋ごと地面の穴に落ちたよー」
空でくるりとアリスが宙返りする。白い翼で自在に飛ぶアリスの動きに翻弄され絡まり合った繭糸が土の壁に激突した。動けぬ糸の塊に見切りをつけ、繭の本体が糸を切り離す。
「今の、亮?」
「ああ」
アリスに頷き、亮は短く笑った。
「一休憩かな」
繭の矢も通さぬ分厚い盾の下、サキリが息を吐く。地面に突き立てた竜殺しの前面には弾かれた十数本もの繭の矢が落ちている。
「やっぱり荒事につよいねぇ、亮ちん」
「お疲れ、壬生先輩」
周囲でくるくると舞ってはしゃぐ炎翅の妖精の頭を撫でて労う由貴奈に、亮は持って来ていた星の滴を一粒渡した。サキリや美咲紀、アリスにも星の力を回復させる甘い薬を配る。
「さて、と」
仲間たちが攻撃をしているその間、繭の動きや繭から放たれる矢や糸を観察し集めた情報を脳内で整理しつつ、修はその場に座り込む。
(反撃の速度は反射に近く速い)
炎翅の妖精の火とフラップ・アローの威力を以てしても、繭の矢を破壊するには至らなかった。一矢でそうであるのなら、幾重にも巻いた繭は尋常ではなく燃え難いだろう。とは言え、高温を遠距離から当てるのは例え魔火の光であっても至難の業。加えて、今この場に魔火の光を宿す者は居ない。
(ともあれ、焼却は決定打にはならない)
頭を巡らせるまま、修は『ねこよろず』で用意してきた道具を広げた。丈夫な縄に油壷、赤黒い液体の入った小瓶に注射器、紙の束。何かの役に立てばと、頼まれたものの他にも片端から持って来たもの。
「これ、使ってもいいかい?」
声を掛け油壷と紙の束を手にするサキリに了承を示しつつ、細工に取り掛かる。
「シュー君」
「ん」
「いい作戦、思いつきましたか?」
昔からの友人の、己を疑わぬ言葉に修は淡く微笑んだ。
「……矢として飛ばした分だけ、繭糸は減る」
攻撃を仲間に任せ、観察に徹していて気づいた。糸を武器にして射出すればするほど、僅かずつではあるものの繭の厚さは減る。
「繭糸の量には吐くとしても限度がある」
反射であるが故に、その動きは単純でもある。
話す合間、地面に散らばる繭糸を拾う。槍ほどの長さと手に掴めるほどの太さがある糸は鋼にも似て固い。投げるには適した形状の繭の矢に、特製の注入器をきつく結わえ付ける。これで『特製の長槍』の出来上がり。
「それは……?」
「元々は昆虫採集用の市販の注射器だよ」
その何の変哲もない注射器に、目標物に刺されば先端部のストッパーが後方に押され針側面から薬液が出る仕掛けを施した。
「これ、何の薬です?」
注射器に仕込んだ赤黒い液体を覗き込み首を傾げる美咲紀に、修は極めて爽やかに微笑む。
「秘密だ」
身軽に立ち上がり、その場の面々に次の作戦を伝える。成功に至らせるには、手にした注入器を硬い繭に刺さなくてはならない。そのためにも、
「皆、協力してくれ」
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阿瀬春
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シルバーシナリオ(150)
グループ参加
3人まで
シナリオジャンル
日常
冒険
SF・ファンタジー
定員
15人
参加キャラクター数
15人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2017年11月23日
参加申し込みの期限
2017年11月30日 11時00分
アクション投稿の期限
2017年11月30日 11時00分
参加キャラクター一覧
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