星幽塔第三階層の青空の下、今日もさまざまのかたちした妖精たちが農作業に励んでいる。
モグラ妖精たちが土を耕し、コボルトたちが鍬で畝を立て、三角帽子の小人たちが一粒ずつ種をまく。田畑の間の水路を流れる透明な水を霧状にして操り、種に優しく振りまくのは透明翅の水の妖精たち。
「なべて今日も平和哉」
歌うように呟き、
旅鴉 月詠は畑の脇に敷布を広げて腰を下ろした。手動のミルでゆっくりのんびり、珈琲豆を挽く。
「なになに?」
「なにしてるの?」
興味津々で周りにたむろし始める妖精たちに、珈琲だよと説明していて、
「……うん?」
わらわらと群がる妖精たちの中、この辺りでは見かけぬかたちの妖精を見た。
「おや、君は」
蒼空の鱗と蒼い瞳を好奇心に輝かせ、珈琲ミルを覗き込む小さな竜は、けれど、
以前見た時よりも随分と大きくなっていた。
子どもの掌に納まるほどに小さかった体は、座り込んだ月詠と同じほどの丈にまで伸びている。小鳥ほどしかなかった翼はその身よりも大きく、空を翔けることも可能となっているらしかった。
「精霊の仔はどうした」
みずがめ座のアステリズムである
リア・トトを農場主とする大農場より遥か遠く、住人たちに『最果ての砂漠』と呼ばれる黄金色の砂漠に横たわる巨大な土の竜の遺骸のその肚の中、竜の仔は太古からこの地に息づいていた古き土の精霊の仔とふたりきりで過ごしているはずだった。
土の竜の肚に於ける冒険は、星幽塔で様々な冒険の日々を経た月詠にとっても未だ記憶に新しい。
月詠の緋色のまなざしを受け、竜の仔は蒼い瞳をくるりと丸める。ひょいと差し出した前脚に手紙を詰めた銀の管を見つけ、月詠は瞬いた。手紙を抜き出し、広げる。
読めぬ文字に首を捻り、通りがかった妖精に声を掛けて農場主を呼ぶ。
竜の仔が訪れたと聞き、翼ある老馬に跨り文字通り飛んできた農場主は、月詠が広げた手紙に難しい顔で首を傾げた。
「……古代文字だ」
リアは手紙を翼持つ老馬に見せる。トト家に長年仕える老馬は、故事や古き時代の文字にも詳しいらしかった。
『これはまた古い』
ひとつ唸って古代文字で書かれた手紙に眼を通し、老馬はその場の全員の頭に直接響く不可思議な声で告げる。
『竜の肚の奥より摩訶不思議な声がするだの、奥にはまだ見ぬ宝があるやも知れぬだの、土の都に舞う光蟲が群舞するだの、精霊に殉じ死した民と王を弔う儀を未だ終えて居らぬ故に土の竜のもとを離れられぬだの、……』
要は、と笑う。
『寂しいから遊びに来てくれということであろう』
「……成程」
くすり、月詠は笑み返す。ならば――
こんにちは。阿瀬 春と申します。
今回は、星幽塔第三階層での一幕をお届けにあがりました。
ガイドには旅鴉 月詠さんにご登場いただきました。ありがとうございました!
もしもご参加頂けますときは、ガイドに関わらずご自由にアクションをお書きください。
さて。
ご用意いたしました舞台はふたつ。前回の『竜の肚には土の都』の舞台だった巨大な土の竜の肚内の土の都に関するあれこれと、第三階層にある大農場に関するあれこれです。
農場内に土地や家やお店をお持ちなみなさまは第三階層での日常生活などでももちろん大丈夫です!
のんびり日常をお過ごしいただきましても、冒険に出て頂きましても。
ということで、星幽塔第三階層でのみなさまの生活を描かせてください!
リア・トト農場
農場内では、みなさまの日常や、農場内に発生しましたモンスター退治の一幕を描かせて頂けましたらと思っております。
A■農場での日常
妖精たちと畑の世話に勤しんだり、収穫物を使ったアイテム作成をしたり、忙しい日常を離れて寛いでみたり。
のんびりとした農場生活をお楽しみください。
B■リア・トト農場大毒蛾発生事件
農場の一角にある小屋を半ば取り込み、巨大な幼虫が繭を作りました。小屋の周辺一帯の畑は幼虫が繭となるための餌として喰われ、ほとんどが壊滅状態。
皆さんがお世話をしていた畑ももしかしたら一部食い散らかされてしまっているかもしれませんが(事件現場の小屋から離れている畑は無事です)、そこは妖精たちががんばってすぐに復活させるとのことなのでご安心をー!
農場主は星幽塔最上階のあれこれに忙殺され、これを見逃してしまいました。幼虫に食い散らかされた畑の前でへたりこんで落ち込んでいます。
農場主が言うには、幼虫は繭の中で蛹となり、やがては外に這い出して来るとのこと。大毒蛾に変身した幼虫は水も食べ物も口に出来ないその身のつくりにより数日で死にますが、その数日の間に毒の鱗粉を撒き散らし辺り一帯を枯れ野にします。
そうなる前にどうにかしなくてはならないのですが、蛹を護る繭糸は鋼じみて強く、なまなかな刃は通しそうにもありません。また、攻撃を仕掛けてくる者には反射的に鋼のような繭糸を細剣や矢のように操り反撃もしてきます。
土の竜の肚内
土の竜の肚内には、ふたつ、ルートをご用意いたしました。
どちらかひとつをお選び頂きましてアクションをお書きください。ちなみに今回は、リア・トトは諸事情(大毒蛾対策)にかかりきりのためお供できません。
C■土の都
竜の仔の案内により、以前とは違うルートで土の都に入ります。
竜の肚にあって透んだ水と枯れぬ純白の花が流れ続ける『枯れぬ花の水路』や、透明でありながら虹を宿して輝く大小様々の珠が転がる洞窟『金剛珠回廊』を通れば、新しいアイテムの製作に役立つものが手に入ったりするかもしれません。
土の都では、精霊の仔が大喜びで駆け寄ってきます。望むと滅んだ土の都のあちこちを案内してもらえます。辛うじて残った城や宝物庫を巡れば、何かしらの古びた宝物も見つかるかもしれません。
都を巡る間にも、精霊の仔はそこここで祈る仕草を見せます。都の空をゆらゆらと漂う幻の光のような『光蟲』たちは引き寄せられるように精霊の仔のもとに集まり固まり、小さな小さな珠となります。
精霊の仔は、それをこの地に散った民の命の欠片なのだと笑います。
D■土の都より奥
精霊の仔は、土の都より奥に広がる『晩鐘岩の森』から何者かの泣き声のようなものが聞こえてくると怯えています。
真っ暗なはずの竜の肚にあって黄昏の色に染まる大岩の聳え立つ草原を進めば、どこからか集まって来た『光蟲』(実体のない蛍のようなナニカ)の群れが死者を象ります。それは過去、土の都に死した精霊の女かもしれませんし、PCさんの知る死者かもしれません。懐かしい誰かを象ったナニカは、PCさんが望む言葉を懐かしい誰かの姿と声で告げます。
死した土の精霊の女であれば、精霊の仔に逢いたいと、遺してしまったことを詫びたいと嘆くでしょう。出来得るならば、共にゆきたいと。
登場NPC
■リア・トト
麦藁色の髪を持つみずがめ座のアステリズム。
基本的にのんびりお人よしな体格のいい四十路です。
■竜の仔
蒼い鱗と瞳を持つ身の丈一メートルにも満たない仔竜。被膜の翼で飛ぶことはできるようになったものの、誰かを乗せたりするとぺたりと潰れます。モグラダイヤが好物。
■精霊の仔
獣皮を頭から被った土の都の精霊の生き残り。今は滅んだ土の都で『弔いの儀』をひとりで執り行っている様子。儀式を終えれば土の竜の肚から外に出ると言ってはいますが……。
■ステラ
リア・トトの屋敷の一室でお昼寝中。特産の蜂蜜酒をたくさん飲んだためか、しばらくは起きそうにありません。
星の力
星幽塔にいると、星の力 と呼ばれる光が宿ります。
★ 基本的な説明は、こちらの 星の力とは をご確認ください。
星の力やその形状は、変化したりしなかったりいろいろなケースがあるようですが、
このシナリオの中では変化しませんので、このシナリオではひとつだけ選んでください。
ひとともれいびにはひとつだけですが、
ほしびとには、第二の星の力(虹)もあります。
★ 虹についての説明は、こちらの 第二の星の力 をご確認ください。
アクションでは、どの星の光をまとい、その光がどのような形になったかを
キャラクターの行動欄の冒頭に【○○の光/宿っている場所や武器の形状】のように書いてください。
衣装などにこだわりがあれば、それもあわせてご記入ください。
衣装とアイテムの持ち込みについて
塔に召喚されると、衣装もファンタジー風に変わります(まれに変わってないこともあります)
もちものは、そのPCが持っていて自然なものであれば、ある程度持ちこめます。
※【星幽塔】シナリオのアクション投稿時、作物・装備品アイテムを所持し、
【アイテム名】、【URL】を記載することで、
シナリオの中で作物(及びその加工品、料理など)・装備品を使用することができます。
※URLをお忘れなく!!!
ご参加、農場の隅っこあたりをうろうろしながらお待ちしておりますー!