大江戸大活劇　ネコジマ町の乱｜リアクション

大江戸大活劇　ネコジマ町の乱

■時代は流れゆく川のごとし
「そんなワケで、近江屋さんは立て直すことになったんだそうです。悪巧みした幕府の人や商人さんも見つかって、色んなことが明るみに出て、今頃偉い人は大忙しなのですよ」
　こちら飯処、椿屋。椿美咲紀は得意げに町の噂話を披露していた。
「けど、一体だれが立て替えのお金を出してくれたんでしょう。討ち入りで手に入れようとしたお金もどこかに消えていたそうですし」
「さあ、なぜだろうね」
　その話を聞いていた八神修。彼は焦げて真っ黒になった鍵を懐に入れ、意味ありげに笑った。
「たとえばこんな話はどうかな。ある幕府の要人が、その事件を事前に聞きつけていた。しかし立場上手を出すことが出来ないから、比較的善良な攘夷志士や侍を巧みに集め、大老の動きを裏からこっそり操作して、企みを潰した。その要人はどこかへ消えたお金を最大の被害者である近江屋の修復にあてた……とか」
「はははぁ、まっさかあ」
　手をぱたぱたとやる美咲紀。
　修はそれを笑って返した。
「ところで、美咲紀。今日じつは、君にお別れを言いに来たんだ」
　すっくと立ち上がり、懐から一冊の書物を取り出す。
　それを美咲紀に手渡した。
「俺はこれから、西洋へ旅立つつもりだ。海向こうの学問を修め、この国に持ち帰る。少しでも日々を良くしようと戦った彼らのためにも、ね」
「シューくん……？　えっと」
　美咲紀はちょっとだけ考えてから、奥にしまっていたお団子を修に手渡した。
「とっておきのオヤツだけど、シューくんにあげるのです」
　にっこりと笑って、手を握る。
「私はムツカシイこと分からないですけど、遠くに行っても元気で、そしてちゃんと帰ってきてくださいね」
「ああ……約束だ」
　修は約束のゆびきりをした。

　かくして一つの時代は流れていった。
　数十年の月日の中で、人々は変わってゆくだろう。
　修は海外で医術を学び、日本の外科医として無限の命を救うこととなる。
　美咲紀は長く港の看板娘として働き、彼の帰りを待った。
　源三と新は衰退した攘夷志士を畳み、維新の道へと進んだ。
　その際に商売によって多くの富と人脈を築いた庚や、その裏で悪人たちを闇に葬ってきた闇たちが合流し、新たな時代を作っていった。
　焔は亮を引っ張り回して世界を旅して回り、今はアメリカ大陸で銃を乱射して遊んでいるという。
　徹之進は幕府の重鎮となり、流れゆく時代を見守った。
　かくしてそんな世に、新たな旅人がひとり。
「ここが、あのネコジマ町……」
　白真白は荷物を背負い直し、新築された近江屋へと歩いて行った。
　時代はまた、動き出す。

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あとがき

担当マスター：青空綿飴
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　大河浪漫の世界はいかがだったでしょうか。
　皆さんどれも、とっても素敵なキャラクターに仕上がっていて、一人一人を主人公にした時代小説が一本書けてしまいそうでした。
　これもきっと、ベースとなったキャラクターの皆さんが魅力的だったからですね。

　そんなわけで、アドリブ満載の群像劇と相成りました。
　このお話は明治維新編へと続くわけですが、それがシナリオになるかはお楽しみにということで、今回はこれにて……ごきげんよう！

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