晩ご飯をつくろうか｜リアクション

晩ご飯をつくろうか

■チャーハンつくるよ！（莉鳥バージョン）
　今運動部に入っている皆さん、ないしは入っていた皆さん、そしてそんなお子さんを持つ諸親戚のみなさまにはたいへんなじみ深いこととは思うが、十代後半の運動部員が消費するカロリーは常人の比ではない。
　ご飯をお茶碗三杯くらい普通に食べるし、『一日牛乳一パック』とか言って一リットルパックを一日で開けたりする。
　ダイエットがどうとか言う前に、入るカロリーの殆どが運動量によって消えていくのだ。
　結果として、脂肪がよく燃え丈夫な骨格とすらりとした筋肉だけがのこった例が、椎井莉鳥である。

「まだ日が長いわね……」
　鳥のなく夕方の空。莉鳥はまだ茜色にも遠い太陽に手を翳す。
　学校からの帰路。練習時間の長い陸上部は日が暮れる寸前まで練習をするものだが……。
　さておき、部活が終われば莉鳥とてひとりの人。
　空腹にやられたおなかをだましながら家にたどり着くと、家はいまだ真っ暗であった。
　そして思い出す。
　その日は、両親ともに不在だったのだ。
　父は出張に、母は祖母の見舞いに行ったという。
　家にあるもので適当に食べておいてというメールの文面を画面ごと閉じると、莉鳥はとりあえず汗を流すべく風呂場へと直行した。

　人は空腹のピークを過ぎるとそれを忘れるという。
　莉鳥も（運動量のわりに）食べないほうなので、お風呂から上がった頃にはそれほど急速な飢えは感じなかった。
　とはいえ、時間的にも何か食べておかないと落ち着かない。放って置いて明日へろへろになってもよろしくない。
　ということで、戸棚のブロック食（マタタビメイトという）で誤魔化したりせず、なにかしら作って食べることにした。

　料理。
　ざっくり作れる、無難な料理。
　となれば必然、火を通した主食となんか。
　つまるところはチャーハンである。
　冷凍ご飯を解凍し、同じく冷凍していたネギを入れて炒める。
　これだけだと寂しすぎるので卵と、あと鮭のフレークを入れてがーっとやる。
　作るのも一人なら食べるのも一人。何に気兼ねすることもなく、見栄えなんて後回しのざっくり料理だ。
　しかし赤青白と色がそろえばそれなりに見栄えがするもので、インスタントの中華スープと一緒に食卓に並べてみれば、なかなかいい具合の夕ご飯に仕上がった。
　さて、肝心のお味はと一口入れてみれば。

「……鮭が薄味だったわ」
　食卓塩を握りしめ親指で蓋を押し開く。
　かまわぬ。誰に気兼ねをするものか。

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