バードウォッチング｜リアクション

バードウォッチング

「のんびり辺りをお散歩しながら野鳥さんの姿を探してみましょう。ね、フェリチタ」

　綺麗な青い小鳥に話しかけながら歩くのは花風ももだ。
　彼女は本日、最近珍しい鳥が見れると噂の場所に来ていた。噂では、九夜山の登山道入口、耳福池、寝子温泉辺りで見れるそうだが、ももはゆっくりと散歩するのに良さそうだと耳福池の辺りを選んでいた。

　耳福池を歩いているとももと同じ目的だと思わしき人達とすれ違ったりするが、彼らと違い彼女はカメラも何も持っていない。
　何故なら、あくまでも鳥の姿を見たいだけであり、それだけでももは嬉しいのからだ。

　ももの肩にいるフェリチタが何かに反応する。それに気づいて、ももがそちらを見るとスズメが二羽ほど木に止まっていた。

「あ、スズメさんですね、フェリチタ」

　ももの言葉に反応したかのように二羽して頭を捻る。
　普段の生活の中でフェリチタはももの言葉を理解しているかのように行動するのだが、果たしてこの二羽も同じなのだろうか？　もものその疑問の答えが出る事はないのだが。

「私に鳥さんと会話出来る力があれば空を飛ぶ際の心地や目にした世界のお話を聞かせて頂くこともできたでしょうか。そう思うと少し残念です」

　そう呟くももの視界にはまた別の飛んでいる鳥の姿が入る。
　人間は自らの身体だけで空を飛ぶ事は出来ない。だから、せめてその話くらいは聞いてみたいとももは思うのだった。

　それにしても普段に比べて鳥の数自体多いとももは感じていた。辺りを見渡せば今まで見た事のない鳥の姿も見る事が出来る。

　もしかしたら今のこの島の環境は鳥に取って良い環境なのだろうか？　だから、こうして集まってきているのだろうか？

「私にとってはとても過ごし易いところですけど、この島が鳥さんにとっても優しい場所であったら嬉しいですね」

　見慣れた鳥、見慣れない鳥。どちらに構わず鳥の姿が見える度にももは嬉しそうに笑顔を輝かせるのであった。

「あぁ、沢山鳥さん達の姿が見れて良かったですけど、流石に少し疲れましたね。フェリチタ、そろそろお昼ご飯にしましょう」

　色々な鳥の姿を見る事が出来た為か、ももは彼女が思っていたよりもずっと長い時間歩き回っていた。
　噂通りに確かに珍しい鳥も集まって来ているようだったが、その理由まではももには解らない。
　正確に言えば、ももからすればそれ自体はそこまで気にするような事ではなかったのだ。

「今日のお弁当はサンドイッチです。フェリチタは小鳥さん用のご飯と果物をどうぞ。あ、小鳥さん用のご飯は多めに持ってきていますから野鳥さん達が近くにきてくれたら意地悪せず分けてあげて下さいね」

　その言葉を聞いたフェリチタの囀りはまるで解った解った、という風に言っているように聞こえた。

「あ……」

　自らのお弁当であるサンドイッチをももが食べていると、一羽の鳥が飛んで近づいてきた。

「もしかして、ナナイロツバメさん？」

　そのももの呟きが聞こえたのか彼女の方を一瞥したかと思うと、フェリチタ用に置いていたご飯を少し食べるとサッと飛び立ってしまう。
　どこかへ飛び去る前に、まるでご馳走様とでも言うかのように一周ぐるりと回るナナイロツバメ。

「行っちゃいましたね、フェリチタ」

　確かナナイロツバメは姿を見たら幸せになれるとかいう噂があった筈だと思い出す。

「でも、あれだけ綺麗な鳥さんを見れたのですからそれだけで幸せですよね」

　ふふ、と笑ってももは残りのサンドイッチを頬張るのであった。

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