いきなり最終決戦！　寝子島滅亡できるかな｜リアクション

いきなり最終決戦！　寝子島滅亡できるかな

◆良きかな、魔法少女！

『花の香りに導かれ、何度も巡り合う……かはわかりませんけど、ロマンスにはミラクルがつきものですよねー！！』

　時間と空間が乱れているように錯覚する、荒れては浄化されを繰り返す寝子島。あちこちのモニターにゆかりの姿が映り、キンキン頭に響く声で面白半分の言葉を発していた。

『今度は三つのカメラで同時撮影！　バラバラだった魔法少女が集結しまーす！』

　別々の場所、その物陰に潜んだ黒服がそれぞれ魔法少女となる相手を撮っていた。ピリピリした不吉な空気の中横たわっている少女、佐藤瀬莉は画面の中でゆっくりと目を開ける。きょろきょろと首を振って状況を確認している瀬莉に、黒服が言う。

「君！　魔法少女になってくれ！」

　瀬莉の手に半ば強引に懐中時計を握らせ、黒服は退場した。その後、別方向からカンペを持ったスタッフが瀬莉に間接的説明を施す。

「えー？」
「……はあ！？」

　瀬莉が目覚めたのとは別の場所で、滝原レオンが黒服からブレスレットを渡された。其れと同時に、行われる説明。

「寝子島が侵略される！？」

　その内容は、レオンにとって衝撃的なものだった。黒服はカンペを持ちながら、うんうんと頷いている。

「しかも、その危機を回避するには、魔法少女になって戦うしかない！？」

　――くっ……魔法少女と聞くと数々のトラウマが……っ！
　またうんうんと頷いている黒服を前に、レオンの脳裏をかつての羞恥と含羞の記憶が過ぎていく。しかし、自らの愛する寝子島の危機を前にして、君しかいないと言われてブレスレットを渡されてしまった！　レオンは悶々と思い悩む。

「……しかも、いきなり最終決戦だなんて……」

　そしてはたまた別の場所。バイトに向かっていた塔ヶ崎璃亜は突然背後から殴られて、目が覚めると暗雲立ち込める中立っていたのだ。瀬莉、レオンと同じく説明を受けて変身ブレスレットを腕に装着した璃亜は、唐突に巻き込まれたこの事態に溜息を吐きながら、嘆きに陥った心を奮い立たせる。

「……いえ、嘆いていても仕方ありませんね」

　けれど。レオンも懊悩を振り払って、ブレスレットを見た。顔を上げて、壊されている寝子島という現実をはっきりと見る。そして……

「寝子島を救うためだ！　やるしかねえ！」

　レオンは腕を天高く掲げた。それと同時に、璃亜も腕を天へ。瀬莉もブレスレットの代わりに懐中時計をその暗雲立ち込める空へかざす。

「チェーンジ！」

　瀬莉が叫ぶ。

「変身！」

　璃亜が叫ぶ。

「Materialize！」

　そして、レオンが叫ぶ。