【遠足】テーマパークから愛を込めて！？｜リアクション

【遠足】テーマパークから愛を込めて！？

　――ドリーム・トレインに乗って

　お節介なマスコット猫に半ば無理やりドリーム・トレインに乗せられた立花あきねは、
「……はぁ」
　と、車内で小さくため息を零した。
　嬉々として窓の外を眺めている１人とその彼にじとっとした眼差しを投げているもう１人。
　その２人の様子を見るともなく眺めていたら、
「ねえ、さっきマスコット猫を泣かしてた子でしょ？」
　と、不意に隣の方から声を掛けられた。
　ぱっと顔を上げて、反射的にビシバシと反論するあきね。
「泣かせてないわよ！　あの猫が勝手に泣いただけ！」
「あはは、ごめんごめん。何か話のきっかけがないかな～って」
「きっかけ？」
「外、見ないと勿体ないのになって思っちゃったから。園内を見回すにはドリーム・トレインが一番なんだよ」
　言って、少女――雨崎楓香は、行動を共にしている島崎嘉織だけでなくあきねにも聞こえるように、
「あたし達が乗り込んだのがにくきゅーストリートでしょ？」
「で、ほら、あそこのお城があるのがメルヘンニャンド」
「あのトロッコの山がガンマンズニャンドで、大きな秘密基地みたいなのがスペースニャンドね」
「そんで、あっちがネイチャーランド！」
　なんて、あきねが口を挟む余地のない滑らかさで、淀みなく解説する。
　窓の外を見遣りながら静かに楓香の言葉に耳を傾けていた嘉織が、ふと、声を零した。
「成る程。うん、僕はネイチャーニャンドの雰囲気が好きだな」
「よし、じゃああたし達はネイチャーニャンドで降りよう！　あなたは？」
　楓香に水を向けられて、ついつられて外を見ていたあきねも、ぼそぼそと口を開く。
「……このままじゃ１周しちゃうから、あたしもそこで降りる。比較的静かそうだし」
「じゃあ、一緒に来たらいいんじゃない？　僕は５組の島崎。君は？」
「……立花あきね。１組」
「あっ、あたしは雨崎楓香ね。４組の。よろしくね、あきねちゃん」
「まあその……よろしく」
　俯きがちに小さく応じたあきねの頭に、楓香がひょいと何かを装着させる。
「え？　何？」
「あたしとお揃いのハッピィのカチューシャ！　予備だから貸してあげるね～」
「悪くないね。２人とも、似合ってると思うよ」
「でしょでしょ？　これ、可愛いもん～」
　そんなことを話しているうちに、「ほんとだ、マジ可愛いじゃん」と、ひょいと声が降った。
　声の主は、同じくトレインに乗っていたらしい三宅ゆりだ。
「あたしも同じの買っちゃおうかな～」
「うんうん、おすすめだよ～」
　カチューシャ談義は、ゆりが先にトレインを降りるまで続いたとか。

　トレインに乗り込んだその瞬間から、食い入るようにして窓の外を眺めているのはロベルト・エメリヤノフ。
「いやあ、ニャンド中を回れるアトラクション、やっぱり乗らないわけにはいかないよね！」
「……ニャンド中の美少年を観察しようとしてる人が何言ってるんですか」
　ロベルトの『監視役』たる来島アカリは、先からずっとじとーっとした目をしているのだが、
「あっ、美少年発見！　ああっ、待って、じっくり眺めたいのに！　トレイン止まって！」
　という調子で、ロベルトは美少年に夢中である。
「無茶言わないで下さい。あと、あんまりデレデレしないで下さいよ？」
　むすりとなって一応言ってみるが、ロベルトは既ににっこりほくほくしている。
　と、美少年ウォッチングに夢中になっていたロベルトが、ふと、
「貸切じゃない遊園地……あの子も連れてこられればよかったね」
　なんて零すものだから、『あの子』の顔を思い浮かべたアカリは、
「……そう、ですね」
　と、ちょっぴりヤキモチを焼いて、つんとして応えた。
　まあ、またの機会に、と続けたロベルトの眼差しは、相変わらず、窓の外に向けられている。

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