ラブ☆部活＆同好会～運動部の春～｜リアクション

ラブ☆部活＆同好会～運動部の春～

【陸上部(4)―ハンマー投げ―】

　宇佐見望月は、ハンマー投げの選手である。
「よーし、じゃあ新入部員は今から俺様の投げるフォームをよく見ていてくれな！」
　望月は金網を配置し、測量用のメジャーの使い方などの一通りの説明を終えると、お待ちかねの実演に入る。
（ハンマー投げは豪快で、見ていてわかりやすいかんな！　でも、それだけにやりがいもあるんだ！）
　いつもチャラめの望月も、ハンマー投げの選手として舞台に立つときには、その横顔がきりりと引き締まる。
「あ、見てるやつらはちゃんと金網の外にいてくれな。安全管理もハンマー投げの選手の大事な仕事の一つだからな！」
　望月は、はっと気づいたように、後輩達――特に未経験の子達にしっかりとそう伝える。
　ハンマー投げに限らず、砲丸投げ、やり投げ等、いわゆる投擲競技は事故の危険性がほかの競技よりも高い。
（だからこそ、俺達がしっかりと後輩に指導してやらないと。だよな、こーちゃん先生……！）
　望月の脳裏に過ぎったのは、熱血でありながら、生徒に寄りそい、思いやることを忘れない顧問の浅井幸太の姿だ。
「……よし、じゃあ行くか！」
　そして、望月は集中し、ハンマー投げに臨む。
　足を開いて、呼吸を整える。一息にハンマーを持ち上げて遠心力で空中にキープすると、さながらジャイアントスイングのように全身を使って鉄球をぶんまわす。
　そして――投げた。

「「「おおっ！」」」

　どよめく新入部員達。
　ハンマーは、狙いあやまたずに弧を描いて飛んで行き、いい感じの位置に着地する。
　測量の結果、自己ベストには届かなかったが、かなりの飛距離を出すことができていた。
「……と、まあこんな感じかな。じゃあ経験者は一人ずつ練習始めてくれー。未経験の子は今から俺様達がみっちりレッスンしてやるからなー」
「「「はい！！！」」」
　ほかの競技と同様に、ここの新入部員達も元気が良い。
（……ああ、なんか二年前を思い出しちゃうなー）
　不意に彼らと同じ新入部員だった頃を思い出し、同時に、寝子高の陸上部でいられる時間があと少しということに気づく。
（……っと。やべやべ。しんみりしちゃうなんて、俺様らしくないからなっ！）

「さあ、それじゃあ俺様達のハンマー投げを始めようぜ！」

　寂しさを持ち前の明るさで打ち消して、望月もまた部活動に精を出していく。