ラブ☆部活＆同好会～運動部の春～｜リアクション

ラブ☆部活＆同好会～運動部の春～

【陸上部(2)―走り込み（ロード）―】

　短～長距離走は、もっともスタンダードな陸上競技種目の一つである。
　また走り込みは、短～長距離をメインとする選手のみならず、その他競技をメインとする選手にとっても重要なトレーニングである。
　何事も基礎体力は大事なのである。
　というわけで、
「センパーイ、新入生も来たしロード行きましょうなのだロード！」
　後木真央はここぞとばかりに中長距離パートの先輩達のまわりをグルグルまわり、ロードのアピールをした。
「旧市街ではネコ集会なのだ！　基礎体力がついて、おネコ様も拝める！　一石二鳥なのだ！」
　真央は部Ｔシャツにジャージといういつもの出で立ちだったが、やる気はいつも以上に満ち溢れていた。
（この合宿で新入生に滲み出るセンパイ魂を見せつけちゃうのだ、うふふふふ）
　新二年生である真央は後輩が出来たことで、先輩らしいところを見せたいらしい。で、そのためには街のネコスポットを紹介するのが一番と考えたのだ。
「よし、そうだな。じゃあ、体力づくりもかねて、今日は学校の外へロードへ出てもらおう。冴木、後木、楢木、七音は新入生のサポートをしてやれ」
　真央の提案をうけて、桐野正也が短～長距離のメンバー達を見まわしてそう指示を出す。
「はいなのだ！！」
「「「了解！」」」
　提案した真央はひときわ大きな声で、ほかのメンバーも快活に返事をして、彼らは一路、学校の外へと走り出した。

　垣根瞳は、背が高く、身体つきが細い（ただし胸はある）。
　また髪が地面に着くほど長いために、走るときはゴムやリボンで束ねないといけない。
（……でも……身体を動かすのは好きだから……）
　だから、去年、思い切ってこの陸上部に入って良かったと瞳は思っている。
　こうしてグラウンドや外を走っているとき、そこに自分の居場所を感じられるから。
「……あの、垣根先輩は走るの好きですか？」
「え……？」
　そのとき、ふいにそばを走っていた新入部員にそう声をかけられて、瞳は戸惑ってしまう。
　瞳は、見た目通りに喋りが達者な方ではない。
「……そう、ね。身体を動かすのは……好き……」
　それでも走っていると、陸上部の一人として行動していると、自然と言葉が漏れてきた。
「私も好きです！　私、陸上未経験だけど、三年間で大会とか出たいです！」
　その新入部員はとても元気だった。
　つられて瞳も微笑んでしまう。夢は大きい方がいい。
「……そう。なら……頑張らないとね……」
　そんなふうに後輩達とコミュニケーションを取りながら、瞳はペースを乱さずに自分の走りを続けていた。

　一方で、
「ふぉぉ、センパイとして負けられない闘いナウなのだ～！」
　真央は、初っ端から飛ばして、校外の道を勢いよく走っていた。
　先輩としていいところを見せたい真央は、誰よりも早くおネコ様スポットへ辿り着く必要があったのだ。
「ほら、みんな見てほしいのだ！　あそこで、たくさんのおネコ様達が集会をしているのだ！」
「あ、ほんとだ！」
「カワイイ！」
「白いのに、黒いのに、三毛もいる！」
　後輩達が喜んでくれると真央も嬉しい。
「よし！　じゃあ次はあっちのおネコ様スポットへレッツゴーなのだ！」
　あまりに嬉し過ぎて、真央の背中は後輩を置いてけぼりにどんどん小さくなっていく。
「おー、あのアホ毛先輩はえー」
「俺らももっとペース上げた方がいいのか？」
　と、新入生達がそんな真央の背中を見て、負けじとペースを上げようとする。
「あー、待て待て」
　そこに制止をかけたのが、三年で長距離を専門とする冴木竜司だった。
「先はまだ長いんだ。あんま最初っから飛ばさねぇ方がいい。ペース配分は守れよ」
「「はっ、はいっ！」」
　的確なアドバイスをされて、新入生達が姿勢を正す。
（あの、先輩、なんかすげーな）
（おー。面倒もよさそだしな）
　竜司の株がここに来て急上昇している。
　しかし、

「はっ……！　おーい！　待ってくれよ、そこの幼女！　そんな道の真ん中を歩いてちゃ危ないぜ！」

　次の瞬間、言ってるそばから幼女に向かって猛ダッシュを始める姿を見て、一瞬にして元通りになる安定の竜司の株価なのだった。