ラブ☆部活＆同好会～運動部の春～｜リアクション

ラブ☆部活＆同好会～運動部の春～

【探検部―探検家の心得―】

　寝子高部室棟。
　探検部の部室にて。
「いいか。みんな、よく聞いてくれ。探検はまず何よりも安全が大事だ」
　探検部の現副部長である龍目豪は、新入部員達に対し、探検の心得を語っていた。
「探検の心得については部長からも皆に話をしてもらおう」
　そこで、豪はぐるりと部室を見渡して部長がいないことに気づき、
「――と思ったが、部長は、学校を探検中だったな！」
　笑顔で、爽やかにそう言い放った。迷子、とはあえて言わないのが豪の優しさである。
　と、そんな彼の言葉に、部室の空気がざわっと揺れる。
「……学校を、探検……だと……？」
「……すげぇ、探検部の部長ともなると、どこでも探検ができるんだ！」
　ピュアな新入部員達の中で、部長の株が絶賛上昇中だった。
　このピュアさ、予想外である。
「と、というわけで、今日は副部長の俺が皆に探検の基本を説明していこうと思う。安心してくれ。副部長といっても、俺も元部長だ。探検のスキルなら現部長にだって負けないからな！」
　気を取り直し、豪が探検で鍛えた胸板をがつんと叩いてそう言うと、
「「「「押忍、副部長！！！」」」」
　と元気の良い声が帰ってくる。
（うん。今年の新入生は元気だな！）
　豪は満足して頷きつつ、さっそく説明を開始する。
「じゃあさっそく探検の基本、山登りについて説明しようと思う。まずは服装からだが――」
　豪は、ホワイトボードに基本的な登山向きの服装とその名称を板書しながら、山登りのイロハについて解説していく。
「とにかく山は天気が変わりやすい。麓と山頂で気温も全然違ったりする。だから、晴天でも雨具の準備は必須だ。それから脱ぎ着しやすい防寒具も忘れないで欲しい。自分で温度調節できるようにするのが大事なんだ」
　これまでの活動を思い返しながら、豪はそこで得た知識と経験を惜しげもなく後輩達に伝授していく。
「探検の目的はみんなが安全に帰ることにある。だから、天候や体調に不安があったり、危険を感じたりしたときは、潔く引き返す勇気も大切なんだぜ」
　特に、豪はこの部分を繰り返し、強調して伝えた。
「座学ばかりじゃ退屈か？　じゃあ今度は手を動かしてみよう」
　講義にメリハリをつけるために、そこで豪は部員達に登山用のロープの結び方やコンパスの使い方なども指導する。八の字結び（エイトノット）と言われる初心者向けの結び方からキングオブノットの愛称で知られるブーリン結びまで、用途・目的に応じて多種多様な結びがあることを説明していく。
「副部長、自分、もう脳みそが限界です！」
「焦らなくても、徐々に覚えていけばいいさ。体力だって、すぐにはつかないだろうが、日々の訓練で徐々についてくる。よし、それじゃあ今度はグループにわかれて地図を見ながら登山計画を立ててもらうオリエンテーリングをしてもらおうかな」
「この副部長スパルタ！？」
　悲鳴を上げる部員達に対し、豪は丁寧に懸命に指導を続けていくのだ。
「わからなくなったら、まわりの人を頼るのも大事だぞ。探検にはチームワークが必要不可欠だからな」
　それは豪が、部活のみならず、寝子高の去年一年のあれこれで学んできた大切なことのひとつだった。
　それらを、全部、彼らに伝えていきたい。
　ほかにも、まだまだ伝えたいことはある。冬山の恐ろしさとか。探検を終えたあとの達成感とか。
　それから――
「あと、家に帰るまでが探検だからな。皆で必ず無事に家に帰るように！　それじゃ次回はいよいよハイキングに行くからな。希望の行先があれば、明日までに俺か部長に伝えてくれ！」
「はい！　ありがとうございました！　副部長！」

　こうして、探検部の魂は後輩達へと受け継がれていくのだった。