踏破せよ！　寝子島ダンジョンズ｜リアクション

踏破せよ！　寝子島ダンジョンズ

【かいていダンジョン】

　こぽこぽこぽ。入江みつびの口からは泡がぷくりと漏れ出して、頭上の海面へ浮かんでいきました。
「大丈夫よー、ネッシー！　このみつびちゃんがバッチリ、あなたを守ってあげるから」
　きゅきゅっと嬉しそうに鳴いたのは、フタバスズキリュウの子どもです。みつびはネッシーと呼んでおりますけれど。
　気が付いたら、いきなり海底！
　けれど慌てないのがみつびちゃん。なぜだか息ができるのを確認したところ、あっという間に状況を受け入れてしまいました。
　ネッシーくんはどうやら、ママスズキリュウとはぐれてしまったようです。長い首を伸ばしてみつびにすりすり甘えているところを見ると、心細いのでしょう。
「ん。レイカン・ヤマカン・ダイロッカン！　ってね、みつびちゃんにはお見通しよー。ズバリ！　この海底洞窟を抜けた先に、あなたのママがいる！」
　ずび！　と指差した先には確かに、海の底でぽっかりと口を開けたダンジョンが、みつびを誘っております。こりゃもうもぐるしかない、と言わんばかりに。
「よーし、いくわよネッシー！」
　きゅるるっと声を上げたネッシーくんの鼻先をひと撫でして、みつびは海水を蹴り洞窟へと飛び込みます。

「わお。シャーク！」
　うねる海底洞窟をしばらく進んだところで、みつびは目を丸くしました。
　洞窟には先客、というよりも、先住民が住みついていたのです。
　恐ろしいホホジロザメに、人間みたいな手足がにょきっと生えた……なんてこったい、サメ人間です！
「分かったわ、そーいうこと。あいつらがママさんをさらったのね」
　レイカンヤマカンが冴えわたり、みつびはきゅぴんと悟りました。海底ダンジョンの奥には、囚われのママスズキリュウ。ネッシーくんを守りながらサメ人間を撃退し、ママリュウを解放するのがみつびのミッションであるようです。
　サメ人間たちは手に槍を持ち、モノホンのサメをペットみたいに従えています。サメ人間が指差すと、サメたちがわらわらみつびへ殺到します……大ピンチ！
「メスのサメ人間はいないみたいね……はっ！？　これって寝子島ダンジョンズじゃなくて、寝子島男ジョーズ！？」
　やかましいわー！
　なんつってセルフツッコミを入れつつ、みつびは必殺・かまぼこ三段蹴り！　海中でも衰えないその威力で、サメもサメ人間もかまぼこぼこぼこっとノックアウト！
「みつびちゃんを食べたいなら、もっとイイ男になってから出直してきてね☆　なーんてねっ」
　びしっとピースサインもキマって、みつびはネッシーくんといっしょに洞窟のさらなる奥を目指します。

　どこどこどこどこ……水の中に、奇妙な太鼓の音が鈍く響いています。
　海の底の洞窟だというのに、やけに明るいものが向こうに見えて、みつびが光のほうへずずいと進んでいきますと……。
「あっ！　見つけた、ママさん！」
　広い空間の真ん中には骨と石で作った檻があり、ネッシーくんよりひとまわり大きなフタバスズキリュウがとらわれています。ネッシーくんがそれを見て、きゅるると鳴きました。
　そして周りにはたくさんのサメ人間……ホホジロザメにアオザメイタチザメ、シュモクザメにヨシキリザメなどなど、数え切れないほどのサメ、サメ、サメ！
　水の中で燃える不思議なたいまつに照らし出された、それはサメ人間の巨大な宮殿でありました……！
「みつびちゃんにおまかせあれ！　すぐにママさんを助けてあげるからねー」
　それでもみつび、怯みません。不安そうに声を漏らしたネッシーくんへ、ぱっちんウィンク。
　しゅばっと突撃！
「かーまーぼーこー、三段蹴りぃーーーっ！！」
　おいしそーな獲物にさっそくかじりつこうとやってきたサメたちへ、目にも止まらぬ速さで蹴りを繰り出し、ノックアウト！　迫るホホジロザメの大顎や、サメ人間の槍にはするりと反転、華麗に身をかわす様は人魚のごとし！
　きゅ、きゅ♪　とヒレをぱたぱたして応援してくれるネッシーくんに笑顔で手を振り、ママネッシーとの再会のため、みつびは大奮闘！　サメの渦へ自ら飛び込み、ぼこぼこぼこっと蹴散らしていきました。

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