スクール水着は世界を救うんだってばマジで！｜リアクション

スクール水着は世界を救うんだってばマジで！

【６】

「あーあ、なんか大変な状況みたいね」
　桃川圭花は心がカッサカサにささくれたような顔で空を舞うブラを見ていた。
　例にもれず、圭花もスク水姿。そりゃ彼女でなくとも心がささくれる。
「なんでこんなカッコで下着なんか追いかけなきゃならないのかしら……」
　不服感全開で、目的の回収物を眺めていると、風に吹かれてブラは寝子島警察署の敷地内に。
「あ……」
　はあ、とため息と吐いて、顔をしかめる。
「警察署って。男子だったら現行犯逮捕は間違いないとして、美少女でもこのカッコで駆け込むのは大変な場所に」
　となれば、仕方ない。
「とりあえず通報しよっと」
　水着から携帯を取り出して、110番。
「あーもしもし？　警察のひと？　あのね、今ブラが爆弾になっておたくんとこに入ってったんだけど」
『はい？　あなたね、どこに電話かけてるか、わかってる？　イタズラなら……』
「いや、ちょいちょいちょい。ちょい待ち！　切んないで！」
『はあ……警察も暇じゃないんですよ？』
「や、イタズラだったら逆にあり得ないでしょ。人を騙すのにこんな嘘つかないから。逆に圧倒的事実でしょこれは」
『はあ……？』
「だから今すぐみんなで避難して。大丈夫、スク水を着た私がブラに触ればみんな助かるから、って、あ？」
　電話の向こうからはツーツーと物悲しい音が。
「……切られちゃったわ」
　人が親切で伝えてあげたのに、まったく頭の固い人もいるものである。
「仕方ないわねー……行くわよ、もう」
　警察署に突入すべく移動を始めると、周りの視線が集まってきた気がする。
　いや、気のせいじゃなくて実際集まっていることに気がつくのにそう時間はかからなかった。
「こんなに人目を集めちゃってる……？　や、違うわ。キラキラしちゃってるんだ、私……」
　着ていることに気づいてから、最高の艶と手触りだったこのスク水。
　なんとなく、微細な水の飛沫を散らしてきらきら輝いているように圭花には思えた。
「あれ？　今、何かしようと思ってたんだけど……なんだっけ？」
　普段浴びることのない視線を楽しんでいると、ふと何かが圭花の上に落ちてきた。
　ひらりひらりと風に吹かれて、戻ってきたのはあのブラだった。
「……あ、忘れてた」