スクール水着は世界を救うんだってばマジで！｜リアクション

スクール水着は世界を救うんだってばマジで！

【８】

「だああーーー！！　なんで俺、神社になんて来たんだ！！」
　寝子島神社に来た刀は自分の犯した過ちに気づいて再び頭を抱えた。
　足の向くまま神社に来てしまったが、よくよく考えるとここは剣術の稽古で毎日通っている場所。
「明日からどうするんだよ！　使うけどさ！！」
　せっかく決めた覚悟が今にも揺らぎそうだった。
　隠せるものなら、この姿を隠したいところだが、どうにも上手くいかない。
「服を買おうとしたら、商店街の服屋は軒並み臨時休業だし、どうなってんだよ〜！！」
　しかも、今日はいつもより神社に人が多い。最悪だ。
　今のところはスク水に誰も気づいていないようだが、いつバレるかわかったものじゃない。
「さっさと回収しよう。うん、それしかない」
　そんな刀の目の前をひらひらと何かが横切った。
「って！？　ほんとにブラが浮いてる！？」
　空を舞うそれはどう見ても女子の胸をガードするそれ。
「つまり、あれが爆発するってわけか……。けど、あの高さ、俺なら届くな。そらっ！」
　と勢いよく女装……もとい、助走してブラに手を伸ばす。
　しかし、するりとブラは手をすり抜ける。
「しまった、しくじった……！　くそ、待ちやがれ！」
　再びブラに向かおうとしたその時、グサグサッと周りから視線が突き刺さった。
「あっ、これヤバい……」
「何かしら、あの子。スクール水着なんか着てるわよ、奥様」
「あら、ヤダ！　男の子じゃない！」
「変態だーーー！！　変態が出たぞ、みんなーー！！！」
「ち、違うーー！！」

「う、うわ、結構人がいる……」
　刀から遅れること数分。望春も神社にやってきた。
　予想以上に多い本日の参拝客に、思わず木の陰に身をひそめる。
「この中をスク水でうろうろするのは抵抗あるよ……。うーん……あ、そうだ」
　望春は持ち歩いている棒付きキャンディをほうばった。
　とその瞬間、彼の傍に少女が現れた。
　飴を舐めている間だけ、シキさんを召喚できるろっこん＜飴とムチ＞の力だ。
　本来、シキさんは鷹なのだが、ラムネ味の時は彼女を女の子に変身させることができる。
「シキさん、お願いがあるんだ！」
「…………」
　ふと、シキさんが怪訝な顔で自分を見ていることに気づいた。
「ああっ、スク水を見られている！？　ご、ごめんなさい俺の趣味じゃないんですっ！！」
　かくかくしかじか事情を説明すると、シキさんは露骨に嫌そうな顔を浮かべた。
「あ、あのー……探すのを手伝ってもらえますか？」
「…………」
　シキさんは喋らないが、頼みを聞いてくれたらしく、踵を返して歩いて行った。
「うう、あんなに嫌そうな顔しなくても……」
　一番嫌なのは自分なのに、と思っていると、シキさんが戻ってきた。
　望春の服の裾を掴み、空を指差す。
　そこにはひらひらと舞う一枚のブラが。
「あ、あれだ！」
　望春がブラに向かおうとしたその時だった。
「うおおおおおお！！　違うんだーー！！」
　そのブラを追いかけて、刀がこちらに走ってくるのが見えた。
「えっ、仲間？」
　しかし、刀の後ろには彼を指差す人たちの姿が。
　望春の姿を見つけると、今度は彼まで指差して、変態だと騒ぎ始めた。
「うえええ！！　見つかった！！」
「お、おい！　そこの！」
「えっ、俺！？」
　刀は望春を見つけると声をかけた。
「おまえも巻き込まれたクチだろ！　手ぇ貸してくれ！　早く世界を戻さないと……俺たちの社会的立場がヤバい！」
「う、うん！　それは俺もヤバい気がしてる！」
　ひらりひらりと追撃をかわすように飛ぶブラにふたりは飛びかかる。
「「そりゃあああああああああ！！！」」
　パシっとふたりの手がブラを掴んだその瞬間、世界が光に包まれた。

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