スクール水着は世界を救うんだってばマジで！｜リアクション

スクール水着は世界を救うんだってばマジで！

【４】

　一方その頃、キャットロードにある『萩屋』の前では。
　自分の置かれた状況を理解して、スク水状態の矢萩咲がわなわなと震えていた。
「何よ、ブラジャー爆弾の回収って、わけがわからないわ……！」
　どこからか聞こえたテオの言葉を信じるなら、つまりなんかそういうことだった。
「というか、この格好で外を歩けと！？　なんですか、痴女ですか？　破廉恥だわ！」
　嘆いていると、ふわふわと空を漂うブラジャーの姿が目に飛び込んできた。
「つまり、あれを回収しろってことね……ええい！　回収すればいいんでしょ！　回収すれば！」
　地面を蹴って、バシッとブラを捕まえる。
　華麗に着地を決めた咲。
　だが、顔を上げると通行人と七峯亨の視線が向けられていることに気づいた。
「えっ、り、亨君！？　どうしてここに！？」
「ああ、いや、ここで買い物する前に姐さんとこに顔出してこうと思って……」
　そう言いながら、気まずそうに咲を見る。
「ラフな普段着は似合うけど、流石にラフすぎるっつうかマニアックに振り切っちゃってないかい、姐さん」
「いやぁ！　見るな！　こんな咲の姿を！　いっそ殺せ！　こんな辱め受けるくらいなら……殺せ！」
　火が出そうなほど、一気に咲の顔が赤くなる。
「お、おい、落ち着けって！　どうどう！」
「うう、今すぐ殺せ！！」
　なんとかなだめ、事情を聞く亨。
　話を聞いて、我が身にスク水の呪いが降りかからなかったことに胸を撫で下ろす。
「そういう事情なら、仕方ねぇな。俺も手を貸すぜ」
「助かる……けど、状況を考えて行動してくれよ？」
　じろりと亨を見る。
「いやーしかし、見事なくびれに脚線美。張り出した谷間にこの真っ赤なお顔。凛々しく可愛く弄りがいがある、まさに姐さんだ」
「おい」
「ってコトでまた隙を見て、悪戯しますね♪」
　ニヤリと笑う彼に、咲の目の辺りが険しくなる。
「ぶん殴られたいのか？」
　そんな視線も亨には心地いい。
「ま、とにかくとっととブツを回収しちまいましょう」
　そう言いながら、羽織った緋の羽織を脱ぐ。
「ああ、気を使ってくれるのはありがたいが、咲はそれを羽織れない」
「ん？」
「何度も上に何か着ようとしたんだが、見えない力が働いてどうしても着れなかったんだ」
「ああ、寝子島だからなぁ。んじゃこうすりゃいいだろ」
　羽織を脇へ広げて衝立のように。咲の姿を周りから隠す。
「なるほど。亨君、気が利くじゃない」
「この絶景は出来れば独り占めしたいものだからねぇ。見えるにしても多少の彩は添えましょう」
「……あれ？　でもこれ普通に目立つわよね……はっ！　り、亨君！」
　薄笑いを浮かべる亨に気づき、ポカポカと殴る。
「ははは、痛いって、姐さん。悪戯するってちゃんと言ったろ？」
　涙目の咲を可愛らしく思いつつ、亨は顔を傾け、先へ進むことを促した。