それいけ蚤の市！～欲しい物は何ですか？～｜リアクション

それいけ蚤の市！～欲しい物は何ですか？～

　蚤の市へと辿り着いた上下左右は、灰色の瞳をきゅぴーん！　と光らせる。
「やってきましたわ蚤の市！」
　ばばんっとドヤ顔で宣言。もしカメラがあるとしたら確実にカメラ目線な感じ。
　何せ左右は、『噂』を聞きつけてやってきた、いわばトレジャーハンターだ。
「そう、あの噂……魔法の品が紛れ込んでるだなんて！　ふふふ、私が必ずゲットして見せますわよ～」
　市の真ん中で、左右はきょろきょろと視線を巡らせた。
　うん、広い。そして、そこにズラリと並ぶ骨董品の、その数たるや。
「むむむ、こんなにたくさんの骨董品の中から探すのは骨が折れますわね……骨董品だけに」
　ちょっと難しい顔など作ってみせているが、そこはかとなーく余裕を感じるような。
　けれど、左右は格別真剣なのだ！　と、
「というかそもそも魔法の品の名前も形も知りませんわ！　くっ！　私とした事が！」
　ここにきて致命的な問題が発覚した。
　こうなったら！　と、左右はキッと前を向く。
「直感で何とかしますわ～！」
　かくして、左右お嬢様の大冒険（？）が幕を開けた――！
　辺りに眼差しを走らせながら、左右は勇ましく市を行く。
「ほーんとに色々ありますわね。何か面白いものは～……あら？」
　目に留まったのは、艶やかに磨き込まれたステッキ達だ。
　自身のステッキに付けた鈴をシャンシャンと鳴らして、左右はそちらへと足を向けた。
「まあまあ、ステッキもありますのね。……むっ！　このステッキは！？」
　左右が見出したのは、愛用のステッキにそっくりの品。
　持ち手がＵ字型か否かという点以外は、殆どお揃いのように見える。
「今私の持ってる杖と同じ雰囲気を感じますわね……なんだか無性に欲しくなってきましたわ！」
　これおいくらですの？　と、近くのスタッフへと声を投げる左右。
　５００円玉と引き換えに、左右はステッキを手に入れた！
「か、買ってしまいましたわ……うーんやはりこの手触り、私のととても似ていますわ」
　なら鈴も付けてあげませんとね！　とひとり頷いて、左右は顔を上げると、目線を転じさせる。
「この蚤の市なら、鈴も……」
　そんなこんなで、左右の買い物漫遊記はまだまだ続き――、
「大量ですわぁ～！」
　と、彼女の荷物は、いつの間にか増えに増えまくっていた。
「可愛いアクセサリーも面白い絵画もお洋服も……欲しいと思ったものはなんでもありますのね！」
　素晴らしい市ですわ！　と、灰色の双眸は感激にきらきらきら～。
　何か忘れている気がしないでもなかったが、左右は蚤の市を存分に満喫して帰路に着いた。

　――あぁっ！　忘れてましたわ！

　という叫びが寮の部屋に響いたのは、帰宅後、暫く経ってからのこと。
　そう、当初の目的、魔法の品探しの件である。
　なお、最初に買った杖は、後に、左右の愛用の杖の兄弟杖であることが判明したとか。