いっしょにスイーツ・タイム♪｜リアクション

いっしょにスイーツ・タイム♪

破：袖振り合うも……？

「写真なら、この珊瑚ちゃんにお任せなのだわっ！」
　と胸を張るのは海月珊瑚。写真の『魅せ方』を趣味で学んだ強みなのだそうな。そんな彼女は１人……ではなく、少年の縫ぐるみと一緒、である。
　ドリンクにミルクティーを注文した珊瑚は、ショーケースを見ながら色々と考える。どれもこれも可愛くて、美味しそうで目移りしてしまうのだ。けれども、彼女はその中から１つをチョイスすると、顔をほころばせた。
「まずは定番のショートケーキなのだわ」
　と選んだのはガトーフレーズである。真っ白いクリームの上に映える、真っ赤なイチゴがとても美味しそうで、甘酸っぱい香りが鼻をくすぐる。
　テーブルに運ばれたガトーフレーズの近くにハンドメイドのアクセサリーを丁寧な手つきで添え、角度を調節。
（うん、いい感じなのだわ。やっぱり、ケーキを目立たせる為にシンプルな物を選んで正解なのだわ）
　頷いてスマートフォンを取り出し、光なども考慮したうえで撮影すれば素敵な１枚が一発で撮れる。これにはホールスタッフも思わず見入り、顔を綻ばせた。
「なかなかお上手ですね」
「そ、それほどでもないのだわ」
　少し頬を赤くする珊瑚。彼女はスタッフが立ち去ったのを確認すると、鞄から男の子の姿をした縫いぐるみを取り出す。彼女の大好きな『氷上のプリンスセブン』の人気キャラクター、ハヅキ君である。彼女は少しだけ瞳を細め、嬉しそうにハヅキ君を添えた。
「えへへ～♪　ハヅキ君と甘いケーキ……最高なのだわっ！　まるでハヅキ君が小人になって、お菓子の国に迷い込んでしまったみたいなのだわ……♪」
　脳裏に広がるのは、お菓子の国を旅するハヅキ君の姿。しばし夢の世界を漂っていた珊瑚だが、よだれに気づき、ふと我に帰る。恥ずかしくなった珊瑚は、ケーキを味わおうとフォークを手にした。

　口に運ぶと、甘い香りが鼻腔を通り抜ける。濃厚なのに後味がさっぱりしていて食べやすい。その上、イチゴの酸味がくどくしすぎないようにしているようだった。
（スポンジもふわふわ……。口の中が、幸せ……♪）
　見た目も可愛くて、味も美味しい。そんなガトーフレーズに珊瑚はご満悦である。
「じゃあ、次はアワユキをお願いします、なのだわ！」
　メニューを開いて店員さんに注文し、うきうきとケーキを待つ珊瑚。
（次のケーキはどんな感じなのかしら？　撮影にはあのアクセサリーを使おうかしら……？）
　なんて考えながら『アワユキ』の到着を待つのだった。

　『アワユキ』は、しっとりとしたレアチーズケーキ。その名前のように口解けが雪のようにソフトであった。
　写真にはあえて赤い花を添えて目立たせ、銀のアクセサリーで飾り付け。そして遊び心に兎のマスコット。
（これはこれで見栄えのいい１枚がとれたのだわ）
　珊瑚も納得の１枚ができたらしく、幸せそうに微笑む。ちらり、とハヅキ君をみると……そんな彼女の笑顔にほだされたかのように、柔らかい笑顔を浮かべているように見えた。