いっしょにスイーツ・タイム♪｜リアクション

いっしょにスイーツ・タイム♪

　可能な限り全種類のケーキを食べたいな、と考えた修はペース配分も考えつつ次のケーキに手を伸ばす。あとから注文した『ニューヨーク』……ベークドチーズケーキだ。
　チーズ独特の風味に鼻を擽られ、口に運べばこれまた濃厚な風味が舌を直撃する。だが、隠し味に使われたレモンピールが爽やかさを運んでくれる。
　あおいが迷っている姿を３人は「かわいいな」とほっこりした様子で見つめる。彼らは頷き合ってケーキにフォークを入れると少しずつあおいの皿に乗せる。あおいが「いいの？」と目を見開けば、笑顔で頷いた。

　歓談しながらスイーツを食べると、思いのほか入るもので。修は色々食しながら時折あおいたちともシェアしたりしていた。
「んん～♪　このベリーワルツには私が好きなクランベリーが入っていて嬉しいですっ！　」
　美咲紀が４種類のベリーを使ったタルト『ベリーワルツ』に舌鼓を打ちながら歓喜に震える。宝石を寄せ集めたような姿に、さくさくのタルト生地、ベリー系独特の酸味が美味しい一品で修もこれには満足していた。
　一口ずつ貰っていたあおいと綾花も、「おいしいね」と顔を見合わせ頷き合っている。
「ん？　なんか香ばしいパイの匂いがするのです！」
　ねこったーへの書き込みをしていた美咲紀が、厨房から漂う匂いに瞳を輝かせた。綾花とあおいもおしゃべりを止め、その香りに表情を綻ばせる。
「いい匂いね」
「実は、１つリクエストしていたんだ」
　あおいの呟きに頷き、修がそういった側から４人分のケーキが運ばれてきた。真っ赤で艶々としたイチゴが沢山乗ってちょっとリッチな雰囲気がする。漂う香ばしいパイ生地の香りとカスタードクリームの香りに、あおいは「美味しそう」と顔を綻ばせる。
「もしかして、ナポレオンパイ、ですか？」
　綾花が目を輝かせて問いかければ修は「ご明察」とにっこり微笑んだ。
　修のリクエストで作られたナポレオンパイを早速食べる事に。やはりさくさくした物はさくさくした内に食べたいものである。
「食べ方が難しそうなのです……」
「調べましたけど、……なんでもお皿に倒して、ナイフとフォークで切って食べるとか」
　美咲紀が少し眉根を寄せて呟く傍ら、綾花がスマートフォンで食べ方を検索する。
「確かそれで合っている筈。こんな感じかな？」
　修が丁寧な手つきでナポレオンパイを倒し、ナイフを入れて食べやすい大きさに切る。あとはフォークで掬って食べれば、カスタードクリームの柔らかな甘みとイチゴの甘酸っぱさが、生クリームの風味が鼻腔を抜けてパイ生地の香ばしさが混じっていく。
　咀嚼と共に広がるパイとカスタードのハーモニー。上品な気持ちにさせてくれる一品に、全員が言葉を失っていた。
「これ、すっごく美味しい……」
　漸く１口目を飲み込んだあおいがそう、口にする。
「これが、プロの味……なんですね」
　綾花の呟きに、修もこくり、と頷く。と、美咲紀がポニーテールを揺らして大興奮！
「はぅ～！　これはこれは是非これからも置いて欲しい一品です！　ちょっと高くてもがんばっちゃいますっ！」
　流石に修がリクエストして作ってもらったスイーツなのでねこったーへの投稿を見送った美咲紀。だが、３人娘の反応に修は手ごたえを感じていた。
（確かに、ナポレオンパイは手間隙がかかるケーキだ。パイ生地を作り上げる事は本当に重労働だと聞く。だが……）
　これが店に並ぶかはさておき、修は機会があればまたみんなでケーキを食べたいな、と思う。あおいも、綾花も、美咲紀も、本当に幸せそうにケーキを食べていた。その姿が、やっぱりほっこりするからだ。
（スイーツって、奥が深いな。本当に美味しいものは、人の心をこんなに解すのだから）
　修はそう思いながらナポレオンパイを口に運ぶのだった。

　わいわいとスイーツを堪能した４人。
　その後気になることといえば……、やはり体重である。現実は、厳しい。
「もちろん、運動するけどな」
　修はどこか遠い目で言うが、３人娘も思いは同じだろう。
「でも、今度はお客さんとして食べに行きたいですね。期間限定ですし、近いうちにでも」
　放課後か休日に、と付け加えて綾花はあおいに言う。けれども美咲紀と修も思いは同じなわけで……。
「みんなで一緒に食べに行きたいね」
　あおいがツインテールを揺らし、楽しげに言えば修も「そうだな」と相槌を打ち、美咲紀もまた賛成だとばかりに笑みを零した。

　ちなみに、後日運動に専念して電池が切れたように眠りこける修の姿が星が丘寮で発見されたとかいう噂である。

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