【身体測定】ドキドキ♂♀反転戦線、再び！｜リアクション

【身体測定】ドキドキ♂♀反転戦線、再び！

　さて、こちらでも、夏神零と冬樹闇が廊下で話をしてしていた。
　ふたりは一対の人形のようだった。よく似た赤いホオズキのような瞳。少年と少女の間のような可憐な雰囲気を持ち合わせているところもよく似ている。髪の色は、零が夏の風に流される巻雲の如き白とすれば、闇は空に垂れこめた真冬の雪雲の如き灰。制服は零が男子のもので、闇が女子のものとここでも対だが、ふたりともいわゆる男の娘である。
　零は夏神神社、闇は冬樹神社の主であり、ともに修業した仲でもあった。

　ふたりは高校生らしい何気ない会話を楽しんでいた。
「どうじゃ、新しいクラスは慣れたか？」
　零が尋ねれば、闇は微かな声で訥々と話す。これが闇の普段の話し方だ。
「クラスは……慣れた……。零……次……怪談ライブ……いつ？」
　零は職業柄（？）怖い話のレパートリーが多く、時折怪談ライブを行っている。
「それなら……」
　と次回の予定を話そうとしていたまさにそのときであった。
「うわああああああああああああ！！」
　弾丸のような女子が、二人の間を割るように突撃してきた。
　零も闇も咄嗟に避けようとしたのだが、半身ほど接触してしまう。
「うお、これは失礼」
　勢いあまって転倒しそうになるが受け身をとった零と、勢いあまって尻もちをついてしまう闇。
　零はぶつかってきた相手に対して、大丈夫か、と声を掛けようとしたが、弾丸女子はまさに真っ直ぐにしか進まない弾そのもので、顔を確認する間も無く走り去って行ってしまった。
「！？……び……びっくり……した」
　闇が珍しく目を見開いている。零もやれやれとため息をついた。
「……まるであれか……新手の当り屋のようじゃな……」
「あの人……確か……柔道部の……」
「知っておるのか？」
　こくり頷く。武芸に長けている存在として顔は覚えていた。
「たしか……播磨愛李子……って名前……先輩」
「ふむ。その愛李子殿は、いったい如何したというのか」
　零は困惑しつつ、尻もちをして倒れている闇に手を伸ばして起こそうとした。が、妙に体が重い。とくに上半身に動きづらさというか、違和感がある。
　有り体に言うと、胸が生えている！
　闇は零の姿を見て、
「れ……零……その恰好……」
　と指摘したが、すぐに自分の声の変化に驚き口元を押さえた。
「声……女の子みたい。放送部で……自分の声で放送とか……あるのに……どうしよう……」
　そういえば、去年、性転換の異変があったという噂を聞いたことがあった。まさか、今年もだろうか。
「……おお」
　零もまた自分の変化を見、闇の変化も見てとって、絶句した。
　零も闇も、かなりの巨乳少女になっている。零自身は過去にも幾度か性転換を体験している為かもはや驚かないが、それでも厄介といえば厄介だ。なにが厄介といって、その慣れない乳の重さである。
　それに。
「この格好はまずいでござるかな」
　もともと女子制服を着ていた闇はともかく、零は素肌の上にじかに上着を一枚はおり、前は開けておくスタイルだった。そのため、谷間は丸見え、ちょっと風でも吹けば少年誌的にも配慮がはいる画になってしまう。
　闇は恥じらって零の胸元からは視線を逸らした。
「零……うちより……服装……それまずい……」
「あぁ、確かに弓道部で使っているさらしもあるから応急措置で巻いておくか……」
「……うちも……さらし、少し……分けて……」
　女子制服の闇も流石にブラはない。揺れたりすると動きづらいし、なんだか変な感じがするのだ。
　気づけば、男子が目を見開いて、零と闇の胸元を交互に見ている。
「これ！　あまり拙者を見るな……っ」
　零は自分をエロい目で見る男子たちに次々「煩悩退散」の札を張りながら弓道部の部室に急いだ。
　部室のカギを閉め、協力し合って互いの胸にさらしを巻く。
「零……きつ……」
「がまんじゃ。揺れすぎては人を惑わす」
「……わかった」
　胸を締め付けられ苦しいが、これでなんとか、急を凌ぐことができるだろう。