キミガダイスキ｜リアクション

キミガダイスキ

■抱擁の先に
　御剣刀にとって友人以上に大切な存在である、小山内海と橘千歳。
　今日は三人で遊びに行く計画を立てていた。
　
　旧市街で一人暮らしをする刀。
　今朝も寝子島神社で日課の剣の稽古で汗を流し、シャワーを浴び。
　海と千歳との待ち合わせに遅れないよう、手際よく支度を済ませた刀は、軽やかにシーサイドタウン駅に向かう。

（……なんだ？）
　突然嗅いだことのない、だが心地良い香りが刀の鼻腔をくすぐった。
（……あれ？）
　何かフシギ現象が起こるのか、と一瞬だけ刀の頭をよぎるものの、次の瞬間には大事な女性たちの姿が刀の脳内を満たしていた。
（今すぐにでも、二人に会いたい）
　小柄で愛らしい海の笑顔と、凛々しく愛らしい千歳のはにかんだ表情。
　そんな２人が、刀に好意を持って手を差し伸べてくれている姿が浮かんでくる。
　少しずつ、刀の歩く速度が速くなる。
（会いたい、早く。そして２人を抱きしめたい）
　差し伸べた手を掴むどころか、そのまま二人の身体を強く抱擁したい。
　そして……。
（そして、どうしたい？）
　抱きしめて、それで……。

　大きな疑問符を振り払うかのように、刀は全力で駆け出すのだった。