キミガダイスキ｜リアクション

キミガダイスキ

■確認する絆
　小山内海が胸を高鳴らせながら大好きな人達の姿を待つ。
（胸がドキドキしすぎて、おかしくなっちゃいそう……）
　そう思い、潤んできた海の瞳の中に、大好きな人が海に向かい寄ってくるのが見えた。

（小山内さん……！）
　橘千歳もまた、千歳に気付いた海の姿を見つけると、嬉しさが込み上がるのを自覚していた。
　彼女は愛らしいサイドテールの髪を揺らしながら千歳へと歩みを進める。
「小山内さん」
　手の届く範囲に収まった海の姿に、千歳は大きく手を広げ、包み込むように海を抱きしめた。
（……っ！？）
　一瞬、驚きはしたものの……海は密着した千歳の背中に腕を回し、柔らかに抱きしめ返した。
「出会ってくれてありがとう、小山内さん……」
　千歳が、真剣な眼差しで、だが優しさも込めて海へと想いを伝えれば。海は頬を染め、千歳を見上げ、幸福そうな表情を見せた。
『……わたしも。ありがとう』
　抱き合ったまま、スケッチブックは使わずに。
　ゆっくりと海は千歳へと感謝の言葉を唇で表した。
　千歳はその言葉を確認し大きく頷くと、海を更に愛しそうに抱く。
　二人はお互いに視線を合わせ……はにかみ合うのだった。

　千歳と海は待ち合わせ場所が見渡せるベンチへと腰かけた。
　尚も、二人は腕を絡ませている。
「あ、刀君」
　千歳が御剣刀の姿を見つけ声を上げれば、二人はスクッと立ち上がる。
　全力で走ってくる刀の姿を認める二人。
　こっちだよ、と海が手を振れば
「海！　千歳！」
　二人の姿を認め、刀は海と千歳の元へと駆け寄り、そしてそのままの勢いで２人の身体をがっしりと捕えた。
　驚きの表情を見せる海と、少し恥ずかしそうな千歳の表情。
（……嬉しい）
　海が千歳と刀へ回した腕に力を込めれば。
（さすがにちょっと恥ずかしさもあるけれど……）
　まぁ、いいわよね。そう思いながら笑みを浮かべる千歳。
（今は、とても満たされているから）
　喜びと嬉しさに溢れる幸福な胸の内を堪能するように、千歳はそっと瞳を閉じた。
　刀は、そんな二人の少女の柔らかさを両手いっぱいに受け止め、その温もりと優しさを十分に堪していた。
　しばし三人のハグを堪能し……刀はハッと我に返ったようにパッと腕を離した。
「あ、えーっと、これはアレだ、二人の事ばかり考えてたら、無性にこうしたくなったんだよ！」
　先程まで海と抱き合ってた千歳、刀も同じ気持ちだったことにむしろ喜びを感じる程で。
　慌てる刀に穏やかな笑みを返した。
「大丈夫、その気持ち、わかるわ」
　海もサラサラとスケッチブックにペンを走らせる。
【ありがとう。うれしいよ】
「抱きしめる力、強すぎなかったか？」
「確かに強かったけれど……問題ないわ」
　申し訳なさそうな表情を見せる刀であったが、千歳も海も幸せそうな表情を見せていることに刀は胸を撫で下ろし。
「じゃあ、気を取り直してデートを始めようか？」
【デート？】
　思わず海がスケッチブックに速記する。
　普通ならば、デートと言うのはカップルで行うものを指すだろう。だけれど。
「……三人で、デートだよ。うん」
　三人が、他の二人を想い合う気持ちはどれも情熱的で、どれも心からの愛と言えよう。
「……そうね。刀君、小山内さん。デートしましょ」
　千歳がやや頬を赤らめながら頷けば。
【それじゃ、いこっか】
　海がその言葉を見せた後、ペラリとそのスケッチブックのページをめくり、ペンを動かした。
【大好きな、刀、ちとせ！】
　初めて二人を呼び捨てすることに少しだけドキドキしながら海がページを見せると、千歳も刀も嬉しそうな笑みを見せるのだった。

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