難攻不落、ＤＩＹ魔王城！｜リアクション

難攻不落、ＤＩＹ魔王城！

■アンデッドキャッスル
　墓場へ骨の列が来る。
　骨の足音を連れ、骨のスコップを担ぎ、骨の棺を引いて来る。
　墓場を掘り起こしては屍を引きずり出し、棺の列に加えてゆく。
　かくして骨の列は墓場を去り、残るは土と石のみ。
　彼らの帰る場所はただ一つ。
　骨の山、魔王・新田樹の作る冒涜の城である。

　華やかな、貴族めいた部屋の中。
「待っててね、今新しいアンデッドを作ってるんだー」
　五体の屍を継ぎ合わせた怪物を作成しながら、樹は手下のアンデッドに停止命令を出した。
　その場に硬直して止まるアンデッド。
　暫くしてから振り返る樹に、アンデッドはからからと喉を鳴らした。
　その意味を理解できるのは、アンデッドを作成した樹のみである。
　樹はしばし話を聞いてからはあと息をついた。
「勇者がまた来たんだ。しょうがないなあ。どれどれ……？」
　銀の皿に腐敗した血を満たすと、表面に城正面ゲートの風景が映り込んだ。
　端から順に指さし確認。
「勇者に、魔法使いに、格闘家かあ。じゃあ、あの子を使おっか」
　おいでと手招きすると、奥に安置された棺がひとりでに開いた。

「冒涜の城という割には、随分と綺麗な古城だな」
　魔法使いと格闘家は魔王の城を見上げ、深くため息をついた。
「本当に行くのか？」
「ああ。この城に挑んで破れた数々の勇者と、亡骸を持ち去られた我が妻に誓って……魔王を倒すと決めたのだ」
　光り輝く剣をとり、勇者は城へと歩き出した。

　勇者たちを待ち受けていたのは城が誇るアンデッドモンスターの群れである。
　それも臓物の代わりに爆弾を詰め込んだ人間や犬のアンデッドが次々に組み付き、自爆の限りを尽くすのだ。
「魔法使い、一気に倒せないのか！」
「爆炎の魔法は誘爆しかねん。ぐう、ぬかった……！」
　部屋ごとの爆発に巻き込まれる勇者一行。
　生き残ったのは格闘家と勇者のみだった。
　爆発によって底の抜けた部屋から落ちた二人は、巨大な甲冑騎士に遭遇した。
「二人がかりなら倒せるか？」
「俺が道を切り開く。勇者はその隙に――ぐぬ！？」
　殴りかかろうとした格闘家。しかし甲冑はあくまでフェイク。その中に潜んでいたゲル状の物体がまとわりつき、格闘家をたちまちのうちにとらえてしまった。
「いかん、ここは逃げろ！　魔王を倒せ！」

　仲間たちの犠牲を重ね、ついに魔王の間へと到達した勇者。
　そこで待っていたのは、ローブに身を包んだ樹だった。
「いらっしゃい。お仲間も待ってたよ」
　操り人形を立ち上げるかのように手を掲げると、棺が開いて魔法使いと格闘家が立ち上がった。否、彼らの死体を元に作ったアンデッドだ。
「おのれ……卑劣な……！」
「二人だけじゃ寂しい？　じゃあ、奥さんも呼んであげようねえ！」
　げらげらと笑いながら、樹は足を踏みならす。
　すると五体の屍を組み合わせた見るもおぞましい巨大アンデッドが壁を壊して現われる。
　その中央に埋まっているのは紛れもなく、勇者の妻……その亡骸であった。
「感動のごたいめーん」
　両手を広げて見せる樹。
　怒りに身を任せて襲いかかる勇者の前に、無数の強化アンデッドが立ち塞がった。

　こうしてまた、冒涜の城に新たな屍が加わった。
　魔王の遊戯が終わることはない。

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