難攻不落、ＤＩＹ魔王城！｜リアクション

難攻不落、ＤＩＹ魔王城！

■ねこはせいぎ。いや、あくま！
　がしょーんがしょーんと音を立て、ベルトコンベアが進んでいく。
　一工程ずつできあがっていくにゃんこバッジやにゃんこフィギュア。それぞれが段ボール箱に梱包され、流れるようにトラックへ積み込まれていく。
　トラックのコンテナに描かれているのは毎度おなじみ――『エミナかんぱにー』。
「フッ、やっとたどり着いたぜ。犬派の存在を脅かすエミナかんぱにーの本拠地にな」
「腕が鳴るぜ」
「なりなりだぜ」
　犬耳をつけた勇者と、その左右を固めるマッスルコンビ、サムとジェイソン。
　彼らは『お客様受付はこちら』のゲートから丁寧に入っていった。

「それで……勇者が、どうしたの？」
　こちらエミナかんぱにーの社長室。『しゃちょー』と書かれたネコ型の……あの、あれ、役職書いて立てとく三角形のやつ？　をぱったんと立て直す恵御納夏朝。
「はい、アポ無しだけど社長に会わせろと。あとネコ商品の販売停止を求めています」
「おーぼーだ！」
　どすーんとデスクを叩くと、役職書いとくやつがぱたんと倒れて肩書きが『まおー』になった。
　むむむ、と唸りながらデスクの一点をにらむ夏朝。
　すると家臣（っていうか秘書）がそっと書類を差し出してきた。
　罠の発動承認に関わるなんかの書類一式である。
「魔王様、こことここに印鑑を」
「はい」
　夏朝は大きい印鑑（持ち手の先端が猫耳になってるやつ）を掴んで、勢いよく振り上げた。

「ククク、魔王め。我らを易々と中に入れるとはハァン！？」
　急なことで申し訳ないが、勇者と格闘家コンビはいきなり落とし穴におっこちた。
　細い通路を丁寧に縦並びに進んでいたので、綺麗に一人一本ずつおっこちた形である。
　途中に仕掛けられた特製ねこじゃらしが勇者一行を丁寧にくすぐり倒し、きゃっきゃいってる間に網ですくって別々の部屋へと放り込んだ。
「くっ、ここは……皆は一体どこへ」
　ぽぺんと床に投げ出された格闘家。彼が起き上がると、スポットライトによって一枚のプレートが照らし出された。
　『つよいあなたに　１たい１のけっとう　をうけてほしい』
「決闘だと！？」
　わーいけっとう、かくとうかけっとうだいすき！
　モチロン受けるぜとファイティングポーズをとると明かりが付いて部屋の全景が照らし出された。
　全景っていうか、たくさんの血統書付きのふわふわにゃんこたちが照らし出された。
「こ、これは……！？」
　もう一度プレートを見ると、文字と文字の間に新しい文字が浮かび上がる。
　『つよいあなたに　１たい１のけっとうしゅのおもてなし　をうけてほしい』
　思考すること一秒半。
「「さぎだー！」」

「と、いうわけで」
　ビジネススーツにふわふわのマントを羽織り、猫耳っぽい王冠を被り、ついでに先端がネコになった杖をついて現われたのがみんなお待ちかねの夏朝魔王さまである。
「おのれっ、罠にかけるとは……！」
「魔王なので」
　手人形（ハルくん）をぱくぱくさせると、表情をマジなかんじにした。
「魔王の真の力、みせてやろう」
「望むところだ。勇者の力を思い知らせて……や……る……？」
　剣を構える勇者……の周りににゃんこが集まっていた。
　うるうるした目で見上げるにゃんこたち。
　一斉に首をかしげるにゃんこたち。
「説明しよう！　魔王夏朝様はにゃんこの魅力を最大限に引き出す力があるのだ！」
「お、おのれー！」

　その後、勇者一行は猫派となり、本社限定販売のネコグッズをしこたま買ってほくほく顔で帰って行ったそうな。
　めでたしめでたし！

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