プール掃除はどきどきがいっぱい？｜リアクション

プール掃除はどきどきがいっぱい？

（……まぁ、そういう悩みがある人もいるわよね）
　莉鳥はそういうものかと思いながら手早く着替え……小さな悲鳴を聞いた。真後ろにいた塔ヶ崎璃亜が血の気が引いた顔でがっくりと項垂れていた。
「どうしたん？」
　その隣で着替えていた黒兎都が問いかけると、璃亜はしょんぼりとしたまま口を開いた。
「家に体操着と水着を忘れてしまって……」
「あや～、それはキツイねぇ……」
　都に慰められる璃亜ではあったが、無いものは無い。仕方なく彼女は学校の制服で参加する事に。一方都はばっちり黒い水着とパーカーを纏っている。
（日給はそれなりだったし、その分しっかり働いとくかのー）
　と気合十分である。その一方後にいる真白や冬華をちら見し、己の姿を見……「ウチ程度でお色気要因になれるか、甚だ疑問だけどのー」なんて呟いた。なぜか解らないが、そんなトラブルがあるような予感がしたのだ。
　そんなこんなで女子更衣室で着替えを終えた面々は、プールへと繰り出していく。莉鳥もまた「がんばろう」と呟き、その後に続いた。

　雅樹が男子更衣室に入ると、既に何人もの人たちが着替えを行っていた。そのなかにちらほらと寝子高の制服を着た者をみつけ、「考える事は皆同じかもなー」なんて思ったりする。

（今日のアルバイトもがんばろう）

　その１人である佐藤英二は、偶然見知った顔が隣にいて少しだけ目を見開いた。過去に共にアルバイトをした事がある梅戸有留もまた英二に気づき、にっこり笑った。
「そういえば前にも一緒にアルバイトしたね。それ以来？」
「確か、そうだったね。まぁ、今回は掃除だしそこまでは大変じゃないかもしれないね」
　有留の何気ない話に、英二も頷く。引越しの作業のように重い物を運ぶわけではないからだ。
　因みに英二が今回このアルバイトに来たのは、１年次に同じクラスだった野々ののこが参加する、というのを聞いたからだったりするが、秘するが花、である。
（一度もプール掃除はした事が無いな。勉強もかねて来て見たが……）
　少し離れた所に居た新田亮はラフな格好に着替えると救急箱とバスタオル数枚を取り出した。
「えっ？！　それ持ってきたの？」
　思わず声に出して問いかける雅樹に、亮は頷く。
「プール掃除だから滑りやすいと思ってな。温水とは言え季節的に濡れたら寒いだろうし（その上透けるし）。こっちはけが人が出たときの事も考えて、念のため準備しておいたんだ」
　亮の心配りを見て、思わず感心してしまう雅樹。話を聞いていたのか英二と有留も同じように頷いている。亮は「そうか？」と内心で首をかしげながらもちらり、と時計を見て頷いた。
「っと、そろそろ時間だ。お互いにがんばろう」
「そうだね」
　英二も頷き、４人で早速プールへと出て行くのだった。

　プールには既に何人もの希望者が集まっていた。そのうちの１人の明智さん（＝ほしびとのアケーチ・タッマーキ。寝子島なので翼無しモード）は楽しげに微笑んでいた。

（ふふっ、皆様が楽しくプールを使うためのお掃除です。心や色んな想いを込めて丁寧に行いませんとね！）

　と上機嫌。お金に困っている訳ではない明智さんだが、楽しそうなので参加する事を決めたらしい。白いTシャツと紫のハーフパンツというラフで極普通な格好なのだが……その下に関しては後ほど明かそう。

「地域の人たちの役にも立つし、体力づくりにもなる。がんばろう」
　やる気十分な八神修の言葉に、明智さんも「そうですね」と笑顔で頷く。修もまたラフなシャツと短パン、パーカーという格好。ただ足元はゴム底のスニーカーである。滑るのを防ぐのと、異物で足を怪我するのを防ぐためだ。
「こんにちは」
「やっほ～♪　今日のアルバイト、がんばろーね！」
　英二と有留に声をかける者がいた。御巫時子とののこである。時子は体操服、ののこは水着の上に体操服を着て参加するようで、それはそれでなんか可愛いな、と思ってしまう。

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