プール掃除はどきどきがいっぱい？｜リアクション

プール掃除はどきどきがいっぱい？

「有留さんたちも参加していたのですね。よろしくおねがいします」
「うん、よろしく」
　時子がやんわり微笑み、有留も笑顔で頷く。ののこはののこで英二に「きゃほ～！」と手を振って滑りかけ、助けられていた。
「野々さん、プールは滑りやすいから気をつけてね」
「そうだね。部活でも注意されるんだったー」
　ののこが苦笑してそういい、英二は英二で彼女が転ばなくて良かった、とほっとする。
それと同時に、ののこの笑顔に英二はうっすらと頬を赤く染める。
（やっぱり、野々さんはかわいいな。２月や春先の時の服も似合っていたけど、この格好も……）
　と、思わずはしゃぐののこに見とれる英二。
「おーい、説明があるみたいだよ～」
　有留に肩を叩かれて我に返った英二は、「あ、うん……」と頷いた。
「なんか滑りやすそうですね。気を引き締めてお掃除しなくては……」
「そうだねー」
　一方、時子は穏やかにそういい、ののこが相槌を打つ。そんなこんなで４人はおしゃべりもそこそこに現れた職員の前に向かうのだった。

　集まった面々がTシャツだの水着だのという格好の中、璃亜は己と同じように制服姿の参加者を見つけた。紗雪幽である。
「ん？　俺の他にも制服での参加者っているんだな」
　幽もまた璃亜の姿に気づき、璃亜はぺこっ、と頭を下げた。実は着替えを忘れたとはいえない璃亜は「今日はよろしくお願いしますね」とやわらかい笑顔を向けた。
「寝子高生多いし、同じクラスの人もいるし、楽しく出来そう」
　幽がそう言って視線を向けた先には、彼と同じクラスの水上桜がいた。彼女も幽と璃亜に気づき、軽く会釈する。
「部活、休みだったんだ」
「うん。それに、アクセサリーの材料とか欲しいから色々物入りだったの」
　苦笑しながら話す桜。彼女は髪をアップに纏め、部活で使う競泳水着の上にＴシャツを着ていた。首にはタオルをかけており、実に動きやすそうだ。
（やはり、忘れたのは痛いですね……）
　璃亜は幽と桜が話している側で頭を押さえていた。桜だけではない。幽と璃亜以外は皆水着か体操服か、ラフなＴシャツ姿である。幽はそれほど気にしていないようだが、璃亜は忘れ物をした事を悔い、小さくため息を吐いたのだった。
＊・＊・＊

　参加者全員が集まったのを確認し、スポーツセンターの職員さんが今回の掃除について簡単に説明する。それが終わると早速掃除開始だ。

　最初は平和そうに見えたプール掃除。だが、徐々にどこかおかしい事に気がつく。そう……、プールの水がローションになっている事に。

　最初の被害者は、解理と朱蘭。真面目に掃除していただけなのに派手に滑ってシャツが透ける事態に。
「ってコレはおかしいだろうっ！！」
　思わず叫ぶ解理が必死に眼鏡を探してかけると……、ドコからともなく口笛が。その正体は幽である。
「だーっ！　気にするなー！」
「いや、早速いいもの見れたから。……じゃなくて、大丈夫っすか？」
　幽が助け起こそうと手を貸す。解理はどうにか立ち上がると、彼に礼を述べつつもこの状況でどう頑張ろうかと考える。
「怪我はないのか？」
「とりあえずはな」
　朱蘭に問われ、頷く解理だが、幽が即効で突っ込む。
「でも、Ｔシャツめっちゃ透けてるっすよ」
「うるさいっ！」
　彼の突っ込みに、解理は顔を真っ赤にして叫んだ。

　――だが、これは序の口なのである。
　　　まだまだなのである。

　この時、まさかあんな事になろうとは……誰も考えていなかっただろう。

このページにイラストを設定する