【星幽塔】そしてまた『日常』へ｜リアクション

【星幽塔】そしてまた『日常』へ

【epilogue(3)】

　同じ頃、城下町の１２支団のアジトでも、一仕事を終えた後の打ち上げが始まろうとしていた。
「今回も無事に終わった祝だ。好きに騒げ」
　団長のティクス・ソルの一声で、アジトは飲めや歌えの大騒ぎになる。
　幹部クラスから下っ端の構成員が一同に集まっての宴に、もはや盗賊団のアジトっぽさなど微塵もない。
「よし、これで肉料理は完成だ。おお、お前等、思いっきり食えよ！」
　料理の腕に覚えのあるコル・ティグリスが自慢の料理を振る舞えば、アジト全体から「おおっ！！」と喜びの声が上がる。
「やっぱりコル兄さんの料理うめー！　お、スハイル、せっかくだから踊ってくれよ」
「いいでしょう。では、一つ宴のために、一曲舞わせてもらいましょう」
　イダス・アグリオスが手拍子ではやしたてれば、それにあわせてスハイルが華麗に舞う。
　本当に一仕事終えた後の一杯は格別だ。
「うん。やっぱり１２支団はこうじゃないとな。おっと、あと一つ忘れてた」
　と、ティクスが言えば、すっと全員の視線が彼に集まる。
「それではもう一度、今日の仕事の成功と、影を倒した変わらない日常に――乾杯」
「「「「かんぱい！」」」」
　その日、そのアジトでは朝まで騒がしい男達の声がなりやむことがなかったという。

　＊　＊　＊

　同じ頃、『Zwei Stern』ではクレメル・トロムリッツとクラーラ・トロムリッツが新商品の開発に挑戦していた。
「……出来たわ、クレメル」
「うん。よくできてるじゃないか」
　クラーラが作ったアクセサリの出来に、クレメルは満足げに頷く。
　が、どこかクラーラはまだ不安げに、
「ねぇ、クレメル。お客さん、喜んでくれるかしら？」
　などとクレメルに問う。
「もちろんさ。クラーラが一生懸命につくったんだ。喜ばないはずがないだろう？」
　間髪入れずに答えてやると、クラーラはようやく安堵したように微笑んでくれた。
「ありがとう。じゃあ今日はもう寝るね。おやすみなさい。クレメル」
「ああ、おやすみ。クラーラ」
　こうして、『Zwei Stern』の夜も更けていく。
　翌日から、店にはクラーラが作った、アラビア風のアクセサリが新商品として並ぶことになる。

　＊　＊　＊

　やはり同じ頃、ブラック・リキッド亭では、鎌八まもる、響タルト、ミミ・アハユルの三人がささやかな宴の席をもうけていた。
「だからね！　『塔』の中にもＢＬはあったんだよ！」
　タルトは、まもるとミミがとってきた蟹の身をおいしく頂きつつ、パシーンと机を叩いてそう力説した。
「おーけー、にゃんこたん。にゃんこたんのＢＬへの熱い思いはよーくわかったから、今日はその話はその辺にしないか？　それよりも、もっと楽しい話をしようＺＥ。そうたとえばポニーテールとかポニーテールとか」
　まもるは、タルトの腐オーラにあてられてややゲッソリしつつ、そう話を方向転換させようとする。
「あ、ポニーテールといえばさ。ララナ、第三階層で私のポニテの匂いを嗅ごうとしたんだよ」
　ミミがそう言うと、タルトは平然とした表情で、
「え？　ムッシュくんの場合、それくらい平常運転だよね？」
「「ファッ……！？」」
　と言ってのけて、二人を驚かせた。
　ＢＬへの海よりも深い愛で、いつもより少し寛容になっている、そんな本日のタルトなのであった。

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