【星幽塔】そしてまた『日常』へ｜リアクション

【星幽塔】そしてまた『日常』へ

【第三階層(2)】物事はスペクタキュラーに

　それから程なくして、リア・トトから怪物退治の依頼を請けた鎌八まもるとミミ・アハユルが第三階層の地に足を踏み入れた。
「うーん。なんど観ても、THE 牧場って感じがするところだなー」
　と、まもるがもう何度も観た景色を見まわしながらのんびりとした口調で呟けば、
「ねぇ、ここにほんとに牧場なんて作れるの？」
　と、ミミが訊いてくる。
「ああ、そうさ。すでに土地も用意してある。が、資材が足りない。と、そこで、渡りに船とばかりの依頼がアストラルに張り出されていたのさ。怪物を倒して、家を取り壊し、畑を拡張したいんだと。怪物を倒せば廃屋解体で出た資材は好きに使っていいってことらしい☆」
　パチン、とウインクしてみせるまもるに、ミミはまだ少し疑わしそうな顔をしつつ、
「まあ、お弁当貰ったからには、手伝うことは手伝うけどさー。あ、見えたよ？」
　と、ミミが指差した先には、古い、何やらものものしい雰囲気の廃屋がある。
「ここがそうかー。思ったよりでけぇな。それじゃ早速始めようか。って、鍵かかってるな。ハワイ、開けれるか？」
「まっかして」
　髪に宿した盗人の力を使い、あっさりと鍵を開けるミミ。
「はい、開いたよ？あ、あとそこ、たぶん罠あるから踏まないでね」
　さらに盗人の力による直感力で、罠の場所を予測するミミ。
「さすがハワイだＺＥ☆　よし、じゃあ、そのまま先に行ってくれ」
「え？　なんで、私が先？　普通、ここは男の子のララナが先に行くところでしょ？」
「そりゃもちろんポニーテイルを堪能するため……って、オーケー、ハワイ、冗談だからそのファイアーソードを収めてくれっ……！」
　まもるの言葉に笑顔のまま怒ったミミが、ろっこん『ペレホヌアメア（火山の女神ペレ』を発動して腕から火柱を発生させて、慌ててまもるがそれを手で制する。木造の廃屋で、ミミのろっこんを発動することは文字通り自殺行為にほかならなかった。
「っていうか、髪の毛に欲情とか変態過ぎない！？　今度、匂いを嗅ごうとしたら絶交だからねっ！」
「あー、いい柱だなー。これをエイトサス牧場の大黒柱にしたいよなー、ハワイ」
　まもるは、ふいと視線を逸らすと、廃屋の大きな柱を撫でながらそんなことを言った。
「ちょっと話聞いてるの変態」
「は？　変態じゃねぇよ。そりゃ髪しばってるゴムのとこ匂いかぎてぇなとか思うけど食べたりはしねぇよ」
「あ、お宝だ！」
　どう考えても変態だったが、今度はミミが聞いてなかった。何やら宝箱のようなものを発見したのだった。
　と、そのとき、そんなミミに忍び寄るにょろにょろとした何かが。
「ハワイ、動くなＹＯ☆」
「え……？」
　言うが早いか、まもるは銃を抜き、ミミに迫る蛇を撃ち抜いた。
「わ、蛇だ～。助かったよ、ララナ」
「安心するのは早いぜ、ハワイ。どうやらおいでなすったようだ」
「……？」
　パチンとウインクしつつ、まもるが視線を流した先にいたのは――畑の階層には似つかわしくない、巨大な蟹の化け物だった――。