HAPPY BIRTHDAY TO WORLD｜リアクション

HAPPY BIRTHDAY TO WORLD

■おにのいるほし
　鬼の住む星、惑星カタナ。
　星を見守る神様、御剣刀にあやかって名付けられたその星には、あるルールがありました。

　惑星カタナは生命にとってきわめて過酷な環境にありました。
　水は少なく、活火山が多く、気温が常に高いため多くの生命は死に至ります。
　こんな環境ですから、地球のような環境で生まれた原始生物はおりませんでした。その代わりに、地層の中に生まれた細菌のようなものが、この惑星での生命として進化を遂げることになりました。
　この星で生命活動を行なうには、三つの条件を要しました。
　ひとつは熱に強いこと。例えば地球人類が立ち入ったなら、大気の温度だけで焼け死んでしまいます。細胞単位でそれに耐えうる生物であることが絶対条件でした。
　ふたつめは消化器官の強さと水分に頼らない生体です。温度変化によってすぐ膨張してしまう水は生体機能を維持するのに非常に邪魔でした。ただでさえこの星には水が少ないので、必然的に水分の少ない生物が進化のレールに乗りました。
　三つ目は、強いこと。
　これにはとてもふかいわけがありました。

「鬼の国、なんてどうだろうな。俺らしいかはさておいて、もし俺が星の生態系を望むなら……」
　刀はごうごうともえる星のはるか上空、大気の層よりも上に腕組みをして立っていた。
　手には日本刀。目には燃える星の光景が映っている。
「こんな過酷な星に生まれたんだ。それだけ強い生命が息づくはずだ」

　岩石のような皮膚を持ち、ごつごつとした高低差の激しい岩場を難なく、そして長く移動できる生物。
　惑星カタナで最も繁栄したのは、そんな生物でした。
　シルエットこそ人間に近いものの、その頑強さや巨大さは地球人類のそれとは比べものになりません。
　どうしても熱に弱い脳を守るべく、骨を外気にさらして定期的に廃熱する機関として『角』があり、水でも草でもなく岩を食べ栄養素とする性質をもつ。それらは鬼と呼ばれました。
　鬼は集団で種を存続させるという本能にならって、この過酷な大地に岩山のような居を構え、コミュニティを築きました。
　コミュニティにおける序列はきわめて単純に、暴力によって決められました。
　なぜならば、この星の生物はみな頑強であり、高度な暴力をもたない部族はたちまち他の生物に滅ぼされてしまうからです。
　地球におけるライオンの群れと同じ原理で、ピラミッドの頂点は決まっていました。
　こうした生態系が築かれ、維持されることおよそ数億年。
　惑星環境の変化によって熱への耐性をそれほど必要としなくなった彼らは、やがて兵器による文明を築くようになりました。
　火山から噴出する膨大なカロリーを栄養としていた彼らにとって、惑星の冷化は食料の不足を意味します。
　他の生物を殺し、その肉体を食らうことで飢えをしのぐ必要が生まれたのです。
　こうして彼らは、それまで食料としていた多くの鉱石を鋭く削り刀とし、硬度を高めた鉱物を棍棒とし、それらを上手に扱うことで他の生物を屠る力を獲得しました。
　しかしそれは、他を滅ぼす力にほかなりませんでした。

　星を戦争の炎が覆うまで、それほど時間はかかりませんでした。
　鬼はそれぞれのコミュニティどうしで覇権を争い、土地を奪いあい、食料を奪いあい、お互いを破壊するすべをたかめていきました。
　地球人類なら握るだけで炭と化してしまうような危険な鉱物も難なく扱える彼らですから、雷を放つ岩や炎を放つ岩を武器として、お互いを破壊しあいました。
　やがて。
　鬼たちは共和をはかりはじめました。
　ですがそれは戦争の終わりではありませんでした。
　他の星を攻め滅ぼすことで生き残りをはかるという、鬼たちらしい考えによる惑星外進出計画でした。

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