海神の庭にて｜リアクション

海神の庭にて

「なるほど」

　ウミコーギーたちからおおよその事情を聞いたエリオット・Ｅ・シートンは、納得がいったのか強く頷いた。

「ぼくがここにいる理由ですけど、そういう事なんですね。だったら、ぼくも、手伝いますね」

　彼の言葉を聞いたウミコーギーたちは、エリオットの周りをぐるりぐるりとまわってじっくりと彼を観察すると、安心したように息を吐いた。

「たすかります」
「あ、ぼく、エリオット・Ｅ・シートンですよ。水族館でアシカとトドの担当なんですよ」
「えっと、ぼくたちは……」

　エリオットの挨拶に、ウミコーギーたちも挨拶を返そうとするが、名がないことに気付いて

「とてもありがたいです」
「すいぞくかんって、おさかないっぱいいますよね」
「そうですね。ためしに、何匹か作りましょうか」

　そう言ってエリオットは目を閉じ、思いつく限りの海の魚や貝、軟体類を思い浮かべた。エリオットがイメージするたび、ウミコーギーたちの周りに増える海洋生物。イワシ、カツオ、タラ、シジミ……地上で見ることが出来る大凡の種類がそろったところで、エリオットはふよふよと流れてくる、豊かなイメージで作られたいきものたちを一瞥して口を開く。

「もちろん、海には魚がいっぱい入ればなんてことはないと思いますね」

　後でなにか変わったものも作ってみようかと、エリオットはサンマを思い浮かべるが、しかしなんとも不思議なことに、エリオットがサンマを思い浮かべようとするとサンマさんが浮かんでしまい、ほんとうのサンマがなかなか出てこない。仕方がない、とエリオットはサンマさんをこの海に放流した。

「魚がいっぱいです。エリオットさんはどのおさかなが好きなんですか？」
「アシカやトド、アザラシなどは大好きですよ。イルカ、シャチ、スナメリ、ジュゴン、マナティもいいですね」
「アザラシはさっき見ました」
「おっきいですよね」

　ウミコーギーがきゃんきゃんと吠える。エリオットは、コーギーたちの前にイルカやシャチ、スナメリ、ジュゴンなどを創り出してから、アシカやトド、オットセイなどを創った。ウミコーギーは創られたそれらのいきものの周りを、面白そうに泳いでいる。エリオットは、その様子を見て口を開いた。

「いい感じですね。こんな感じに豊かな感じがいいですね」
「ゆたか」
「楽しい海になりそうです」
「曲芸が出来て頭のいい子たちですから、面白くなると思いますよ」

　それっ。エリオットが指示を送ると、アシカやトドがくるりとターンして、踊るように泳ぐ。その様子を見て、ウミコーギーたちは歓声を上げた。

「うん、いい調子です」

　――いい感じに豊かになりそうです。
　エリオットはそう確信して、観客たるウミコーギーを撫でた。