海神の庭にて｜リアクション

海神の庭にて

　夢か現か、不可思議な1週間を終えた皆は寝子島では1日も経っていないことに気付き、ある者は首を傾げ、ある者は慣れているのか、何事もなく日常へと戻っていった。日常の海にはあのコーギーたちはなく、海神様の声も響かない。どこか遠くの出来事のように思えたそれを、ある者は美しい思い出として、ある者は楽しかった夢として心の中に留める。

　月詠もこの思い出を長く長く残そうと努める一人だった。彼女は元の世界に戻ってからその筆をとり、カンバスのなかに未だ鮮やかに残る海中の思い出を描きだした。澄んだ水の青の中に、彼女らがあの世界で創り出した、美しい景色――それは珊瑚礁や花畑だとか、日本家屋など――が映え、ちいさな足をぱたぱたと動かして泳ぐコーギーたちはそこで楽しそうに遊んでいる。そのコーギーの頭には、透明なガラスでできた、まあるい、金魚鉢を思わせるデザインのヘルメットが被さっていた。

　彼らが床についた夜、その夢の中。微睡に揺蕩う意識が夢の中で醒めると、彼らの目の前に爽やかな海の景色と、コーギーの群れが見える。小さな手足をぱたぱたと動かして、小さな口を大きく開いて、コーギーたちは鳴いた。

「みなさん、本当に本当にありがとうございました！」
「海神様、とっても喜んでました」

　コーギーたちが人間であれば、その顔には満面の笑みが浮かんでいそうなコーギーたちの言葉に、皆ほっと胸をなでおろす。ぽかぽかと明るい雰囲気を身に纏ったまま、コーギーたちは口々に喜びと感謝を述べ、暫し経ってはっと思い出したように付け加えた。

「皆さんに海神様からお礼があるみたいです」
「近いうちにご招待するそうですので」
「その時は僕たちも海神様について行きます」

　お礼とはどういう事だろう。あの時に一度も姿を見せなかった海神様とやらの姿を想像して、何が贈られるのか、招待とはどういうことなのか訊く者が居た。コーギーたちは各々顔を見合わせて、ぷるぷると首を横に振る。

「それはその時までのお楽しみみたいです」
「僕たちもよく知らないのです。海神様はきまぐれだから」

　お役に立てなくてごめんなさいとでも言いたげな項垂れた姿を見せた後、コーギーたちはどこかから響いたうなりにぴくりと跳ねた。

「あっ、もう時間です。じゃあ皆さん、また会いましょう！」

　くぅーん。ひとつ大きな鳴き声を上げて、コーギーたちは海のあちらこちらへ散り散りに泳いで行った。それを見ていると、夢のなかにあった意識が徐々に溶けていき、現実へと浮かんでいく。

　目覚めたばかりの視界に入ったのは、白く眩い光と自分の寝室。そして、残響しているコーギーの鳴き声だった。

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あとがき

担当マスター：六原紀伊
ファンレターはマスターページから！

参加してくださった皆様、読んでくださった皆様、ありがとうございました。
参加者の皆様のおかげで、コーギーに課された宿題は無事終わりました！
出来上がった海を見て海神も満足のようです。

海神のお礼は近々公開予定のガイドにて。よかったら知り合いの方もご一緒に参加ください。
新規の方も歓迎します。

それでは皆様、またお会いしましょう。

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