海神の庭にて｜リアクション

海神の庭にて

　対する修は、ウミコーギーのように、地上で亡くなった魂を呼ぶことを考えていた。

「ううん、みなさんは海神様ほどの力があるわけではないので、呼べるかはわかりませんけど」
「やってみるのは、良いと思います」

　と、ウミコーギーたちに頼りないながらも承諾を貰ったところで、修はペットたちの魂を思った。柴犬、レトリバー、チワワ、いや犬だけではない。インコや兎、猫なども呼び寄せよう。修はイメージした。みんなおいで。まるで動物園かサバンナのようだ、と微笑みながら、イメージを広げていく。目を開けた修の前には、その通りの、陸のいきものたちが、ずらりと並んでいた。

「俺も沢山ペットを飼っているんだ。もちろん、犬もいるよ」
「それはそれは」
「賑やかで楽しそうですね！」
「だから」

　ここで修は、声のトーンを落とす。

「彼等が旅立っても、ここで幸せに暮らせるなら、それはとてもとても……」

　ウミコーギーたちは顔を見合わせて、修の発言の真意を伺った。修の顔には、慈愛に満ちているような、悲しみを湛えているような、如何ともしがたい微笑が浮かんでいた。

「素敵だなって……」
「であれば、シューくん！！」

　湿っぽくなりかけた空気を、美咲紀が吹き飛ばした。

「ここをとても綺麗な場所にしましょう。天国みたいに！　天国みたいに！」

　美咲紀はまたぐっとこぶしを握り、

「海中ですが、花畑を作りましょう！」

　そうですね……と美咲紀は目を閉じ、その中に美しい花畑をイメージする。ここが想像次第の世界であるということを活かして、春の季節に合わない花――梅や椿なども咲き誇る園。桜や藤、グラジオラス、百合、薔薇など、春にもその花を咲かせ、人々を楽しませる花ももちろん入れる。

「陸上の花畑を海神様にも見せてあげたいのです」

　そう言って、美咲紀は目を開けた。そこには、四季折々の花々と、その間を飛び回る色鮮やかな蝶々の姿があった。潮の流れにその花弁を舞わせ、におう花はウミコーギーたちにとっても新鮮だったようで、彼らはそこに入ってはその美しさを大いに楽しんだ。

「うん、これなら海神様も」
「きっと僕たちを戻してくれるはず」

　ウミコーギーたちは、招いた人々と自らの想像力が作り上げた海の姿を見て、自らの父であり母でもある海神を思った。と同時に、海を楽しむ人々の意識が遠のいていく――

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