壁画通りを作ろう｜リアクション

壁画通りを作ろう

●落書きが消えた後は

　住民達と協力者の努力と頑張りにより、日が暮れる前に落書きはすべて消すことができた。
　とはいえ、完全に消えていない箇所も。そこには液が乾いたら、壁と同系色のペンキを塗って綺麗に。
「ふぅ……これで全部消せたかねぇ。この後、どんな壁画が描かれるか……楽しみだな！」
　慣れないペンキ塗りを終え、額の汗を拭いながら、どのようなものになるのか曖浜鴻は期待する。
「うん、綺麗になった。あとは壁画を作るだけだな。どんな絵が描かれるのか楽しみだ」
「そうだな」
　御剣刀と八神修はも、ここにどのような絵が描かれるのだろうか楽しみになった。
　体力が低めと自覚しているので休憩も挟みつつ頑張り、焦らず作業しようと心がけていた修だったが、高圧洗浄機で落書きを消す楽しさにそのことをつい忘れてしまった。
　そのため、終わった頃には体力が尽きかけ、地面にへたりこんでしまった。
　疲れ果てたが、やるべきことをやったという達成感を得られたので充実した気分に。
「私達も頑張ったんだから、絵を描く人達も頑張ってくれるわよ」
　名所を作ろうという人達だもの、良い出来になるわよ、と思う羽生碧南。

　壁は綺麗になったが、ペンキを乾かしている間に、また落書きされては困る。
　それは修だけでなく、落書きを消した協力者全員が思ったことだった。
「綺麗になったのはいいが、この後の対策等は考えてあるのか？」
　年長者の鴻が、代表して住民のひとりに尋ねた。
「ペンキが乾くまでは、住民や商業施設の人達が交代して見張りを行います」
　仕事や商売に支障をきたすので、１～２時間したら交代、ということが決まっているとか。
「壁画が完成したら、ここに街灯を設置する予定です。ライトアップすれば、少しは防犯になるでしょうし」
　シーサイドタウンの住民達は、今回の一件で自分達の街は自分で守るという意識が強まったようだ。
「そうですか。細かいことは、壁画が完成したら話し合いましょう」
　防犯意識は高いようなので、再犯を心配していた修は安心した。

「大きなキャンバスができたようだね。皆が驚くような絵を描いてみたいものだ」
　日傘をさして様子を見に来た桜月と一緒に、こっそり様子を見ていた旅鴉月詠は描き甲斐があるねと悪戯な笑みを浮かべる。
「私も、想いを壁に描けそうな気がしてきたよ」
　月も、自由に絵が描けそうだと期待する。
　邪魔をしては悪いね、とふたりは落書きを消している人達に見つからないよう、そっと去って行った。

　ペンキが乾くまでは壁画作り作業は一旦中断、という連絡は、修が月詠に。
　その後、月詠は他の皆に連絡し、作業ができるまで、絵を考えるように伝えた。
「連絡ありがとう。日焼けを避けるため、私は日の落ちる夕暮れ時に壁画を描きに行くよ」
　桜月は、他の皆にそう伝えておいてと頼んだ。
「わかった。頼まれたものだけど、キャットロードに行く前に持ってくる」
「悪いね」

　落書きを消す作業が終わったので、後は、壁に絵を描くだけ。
　どのような絵が完成するかはお楽しみ、ということで。