壁画通りを作ろう｜リアクション

壁画通りを作ろう

●もうひと踏ん張り、頑張ろう！

　たくさんあった落書きは、住民達と協力者達の頑張りで残りわずかになった。
「ふう……」
　けっこう体力を使ったな、と八神修は地面にへたり込んだ。
「肉体労働もたまにはいいだろ」
　剣術で鍛えているとはいえ、長時間の力仕事は疲れたと御剣刀もへたり込む。
「少し休憩したら、残りの落書きを消そうぜ。皆でやれば、夕方までに終わるだろう」
　早朝筋トレ、ランニングが日課な曖浜鴻はまだ体力に余裕があるが、寝子高生達の体力が心配に。
　体力がありそうな刀と羽生碧南も、休憩なしで作業していたのでかなり消耗しているようだった。
　住民達に疲れが見え始めたので、一休みしようと提案した。
　体力を温存しないと、まだ残っている落書きを消す作業に支障をきたす。
　鴻がそう言うまで休みなしで作業をしていたので、皆、汗だくだ。

「皆さん、ご苦労様です」
　落書き消しを中断し、汗拭きタオルとおしぼり、冷たい飲み物を買いに行っていた住民達が戻ってきた。
　ありがたい、と皆は流れ出る汗を拭いたり、飲み物で喉を潤したりと休憩後の作業に備える。
「だいぶ綺麗になってきたね。ご苦労様」
　壁に描く絵の構図を考えるため、スケッチブックと筆記用具を手にした旅鴉月詠は落書きが消える前の壁を見に来た。
「綺麗になったでしょ？　私達、頑張ったんだから！」
　ジャージの上を腰に結わえた後、タオルで汗を拭きながら言う碧南に「ご苦労様」と月詠は労う。
「旅鴉、何しに来たんだ？」
　修の質問に「絵を描くのはいいけれど、驚きがほしくてね。どこかに、インスピレーションが落ちていないか探しているんだ」と答えた。
　休憩前の落書きを消す作業を見ていたので、これはいける、と頭の中で構図を考える。
　月詠は壁に絵を描くのはもとより、このような依頼を受けたり、自ら名乗り出て、橋脚や路地裏等の落書きを消している。
　そんな彼女にとって、グラフィティならまだしも、センスのない落書きを見るのは耐えかねる。
　綺麗になった一部の壁を見て、こういうのは面白そうだと悪戯してみたい気分に。
「じゃあ、私はこれで。落書き消し、頑張って」
　邪魔をしては悪い、帰って壁画の構図を考えようと月詠はキャットロードの路地を去った。
　落書きが消え、乾いた壁が誰かのキャンバスになったりする。
　絵を描く人達の様子を眺めたり、感想を言ったりするのもいいだろう。
　冷たい飲み物を飲みながら、修はそんなことを考えていた。

　休憩である程度体力が回復したので、落書き消しを再開。
　碧南は残っている落書きに落とし液を染み込ませ、溶けだしてきたものを場所ごとにデッキブラシやタワシ、刷毛を使い分けて消していく。
「ゴシゴシ、ゴシゴシと力いっぱい消しまくってもまだ消えないなんて！」
　こういうものは一気に！　と別の落書きを消すのに高圧洗浄機を使っていた修から借りて水を噴射。
「みるみるうちに綺麗になっていくわね。とっても気持ちいいわ！」
「だろう？　体力を使うが、あっという間に落ちるのは気持ちいい」
　高圧洗浄機の威力に感心しつつ、快感……と修と碧南は交代で落書きを消していった。